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第75話 水平線
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「一、すまんけどちょっと座って待っとってくれんか」、祖父はそう言って船の狭いエンジンルームに入り故障箇所を探し始めた。
僕は一抹の不安を感じながら船の端に腰を下ろして夕陽を眺める。
上手くいけば長くなるであろう人生において、夕陽が沈んでいくのをゆっくり眺め続ける機会などそうそうあるものではない。船上で海の水平線に沈んでいく夕陽とくれば尚更だ。
辺りには海鳥の姿も見えなくなり、 船にあたる細波の音だけが耳を打つ。
最初はエンジンの修理に勤しむ祖父に子供ながら負い目を感じてはいたけれど、神々しいとも云える夕陽の沈む光景に没頭した僕は、いつしか祖父のことをすっかり忘れてただひたすら眺め続けた。
夕陽が海の水平線に全身を呑み込まれた頃、冷たくなった潮風がTシャツ一枚という薄着の肌を突き刺す。
僕が鳥肌の立った両腕を摩りながら腰を上げ、祖父の様子を見ようと立ち上がった瞬間、「ポッ!ポッ!ポッ!ポポポポポポ!」と音を立てて船のエンジンが息を吹き返した。
「やっとかかったぞ!真っ暗になる前にはよぉ帰らんとね」と、祖父が黒い油のついた顔を拭きつつ僕に言う。
「うん!お腹も減っちゃった」、エンジンが復活した安堵で急に空腹感を覚えた僕は苦笑いしてそう応えた。
祖父が海に沈めていた碇のロープを手繰り寄せるのを手伝い、ようやく僕達は港へ向かったのだけれど、暗くなった海上で予期せぬ「モノ」との遭遇が待ち構えていたのである...
僕は一抹の不安を感じながら船の端に腰を下ろして夕陽を眺める。
上手くいけば長くなるであろう人生において、夕陽が沈んでいくのをゆっくり眺め続ける機会などそうそうあるものではない。船上で海の水平線に沈んでいく夕陽とくれば尚更だ。
辺りには海鳥の姿も見えなくなり、 船にあたる細波の音だけが耳を打つ。
最初はエンジンの修理に勤しむ祖父に子供ながら負い目を感じてはいたけれど、神々しいとも云える夕陽の沈む光景に没頭した僕は、いつしか祖父のことをすっかり忘れてただひたすら眺め続けた。
夕陽が海の水平線に全身を呑み込まれた頃、冷たくなった潮風がTシャツ一枚という薄着の肌を突き刺す。
僕が鳥肌の立った両腕を摩りながら腰を上げ、祖父の様子を見ようと立ち上がった瞬間、「ポッ!ポッ!ポッ!ポポポポポポ!」と音を立てて船のエンジンが息を吹き返した。
「やっとかかったぞ!真っ暗になる前にはよぉ帰らんとね」と、祖父が黒い油のついた顔を拭きつつ僕に言う。
「うん!お腹も減っちゃった」、エンジンが復活した安堵で急に空腹感を覚えた僕は苦笑いしてそう応えた。
祖父が海に沈めていた碇のロープを手繰り寄せるのを手伝い、ようやく僕達は港へ向かったのだけれど、暗くなった海上で予期せぬ「モノ」との遭遇が待ち構えていたのである...
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