一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第87話 星空

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 森を抜け平坦で整った道に差し掛かった時には、辺りはすっかり暗くなり、完全なる夜の様相を呈していた。

「一輪、上を見てみて、すっごく綺麗な星空になってるよぉ♪」

 ついさっきまで、乙女の恥じらいなど何処ぞに捨てて来たのではなかろうか?などと思わせるほど「お腹が減った」を何度も繰り返し悪態をついていた彼女は、星空を眺め始めた途端、まるでゾンビが人間に戻ったかの如く生気と正気に溢れていた。

 無様な助手の姿なぞは、バッサリハッキリと言って余り気持ちの良いものではない。

 取り敢えずは人間に戻れた事を心の中でひっそりと祝ってやろう...

「しょ...コホン、本当だな。都会で眺める星空の何倍も美しい...」

「...ハハハ、本当、だよねぇ。都会の空には悪いけれど、それ、わたしも思っちゃった♪」

 これはお世辞などではなく、いつの間にか雨雲のすっかり無くなっていた井伊影村の夜空は、儚げだがキラキラと輝く星々に彩られ満天の星空と化していた。

 僕と未桜は走る足を徒歩に切り替え、自然の織りなすプラネタリウムな世界を楽しみつつ、ようやくもって民宿「むらやど」まで辿り着いたのだった。

 未桜が民宿の玄関を勢い良く開け、中で待っているであろう民宿の主に呼びかける。

「ただいま戻りましたぁ!荒木咲一輪とその可愛い助手でありま~す♪」

 余計なことは言わんでいい...
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