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第141話 黙祷
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ほどなく遺体安置室へ赴きすぐさま僕たちの視界に入ってきたのは、パイプベッドに横たわり白い布をを顔面に覆い被された被害者夫婦の二体の遺体であった。
普通に考えて当たり前だけれど、室内は静かなもので音楽など流れておらず、シーンと静まり返る室内には「ジジジ」という電気音が微かに聴こえるくらいである。
横たわる遺体の頭部側に置かれた僅かな煙と共に独特な香りを放出する線香。そのお陰か室内にはこれといって嫌な匂いは漂っていなかった。
僕たちは遺体の横に三人並んで、しめ合わせたかのように手を合わせ黙祷す...
目を開いた僕は、遺体を前にして若干は気が引けたのだが、時間的余裕が無いため早速遺体を調べさせてもらうことにした。
「淀鴛さん、遺体を覆っている白い布をめくっても構いませんか?」
「そのためにここまで来たんだ。もちろん構わないさ...ただ、丁寧に頼むよ...」
言われなくてもそんなことは百も承知なのだけれど、職業柄、彼も念のために言っただけのことだろうから、気にせず始めよう。
僕は壁の横にポツンと置いてある移動式の棚の天板から、ゴム製の手袋を一組掴み取り両手に装着した。
と、ここでふと思い立って助手の未桜に声をかける。
「未桜、外傷の深い遺体を見ることになるが大丈夫か?」
普通に考えて当たり前だけれど、室内は静かなもので音楽など流れておらず、シーンと静まり返る室内には「ジジジ」という電気音が微かに聴こえるくらいである。
横たわる遺体の頭部側に置かれた僅かな煙と共に独特な香りを放出する線香。そのお陰か室内にはこれといって嫌な匂いは漂っていなかった。
僕たちは遺体の横に三人並んで、しめ合わせたかのように手を合わせ黙祷す...
目を開いた僕は、遺体を前にして若干は気が引けたのだが、時間的余裕が無いため早速遺体を調べさせてもらうことにした。
「淀鴛さん、遺体を覆っている白い布をめくっても構いませんか?」
「そのためにここまで来たんだ。もちろん構わないさ...ただ、丁寧に頼むよ...」
言われなくてもそんなことは百も承知なのだけれど、職業柄、彼も念のために言っただけのことだろうから、気にせず始めよう。
僕は壁の横にポツンと置いてある移動式の棚の天板から、ゴム製の手袋を一組掴み取り両手に装着した。
と、ここでふと思い立って助手の未桜に声をかける。
「未桜、外傷の深い遺体を見ることになるが大丈夫か?」
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