天狗と骨董屋

吉良鳥一

文字の大きさ
上 下
19 / 169
緋色の罪

第三話

しおりを挟む
 利音がハチミツを買いに行っている間、仕方ないので真尋が一人店番をする羽目になった。

 どうせ店を開けても客は多く無いのでゆったりとネコと戯れていると、ネコがはっと何かに反応し、ウーッと唸り始めた。

「ネコ?」

 ネコの見つめる先を見ると一人の若い女性が店先にいるのが見えた。

 茶髪の長い髪の彼女は今時の若者と言ったような派手な格好で、とても客とは思えなかった。
 どう考えてもこの古っぽい店には不釣り合いだ。

 いや、意外と骨董品が好きなのかもしれない、見た目で判断していけないと真尋は固定観念を改める。

 すると彼女の方から声を掛けてきた。

「あの、すみません。
こちらにこれくらいの勾玉の水晶はありませんか?」

 指で大きさを伝えてくる。

「勾玉……?」

「ええ、先日祖父の遺品を整理したくてリサイクルショップに引き取って貰ったのですが、やっぱり手元に残しておきたくて数日後にそのショップに行ったけど、もう無くて……」

 女性曰く、その勾玉の形の水晶を売ったが、取り戻したいとリサイクルショップに行くが、既に専門店へと売り渡してしまったと言う。

 その専門店を教えて欲しいと言うが、プライバシーの関係で教えられないと言われたそうだ。
 
「ですので色々お店を見て探しているのですが……」

「そうだったんですか……」

 事情は分かったが、ここにそんな物あっただろうか……?
 働き出してから大分ここの品を把握出来てきたが、まだ全ての品を把握しているわけではない。
 次々価値の分からない物が増えるので、把握しきれないと言うのが正しいか……

「すみません、今店長が出先でして……
多分もうすぐ帰って来ると思いますので少々お待ち頂けますか?」

 こんな時に限って留守なんてタイミングが悪すぎる。
 最早嫌がらせとしか思えない。

しおりを挟む

処理中です...