天狗と骨董屋

片割れは傍らに在り(上)

第十二話

　妖気の居場所が定まっていないとは一体どう言う事なのか……
 
｢利音さん……｣

｢ん～………
ネコ、取り敢えず気配を感じた一番近い所に連れて行け｣

　そう命令するとネコは早速走り出した。
　その後を二人は追う。
　ネコが一直線に向かった先は茂みの中だった。

｢ちょ、嘘っ……
ここ行くの!?｣

　草木が生い茂る場所に入って行くので真尋は立ち止まってしまう。
　だが利音は躊躇無くネコの後を追い入っていくので、最悪と思いながらも仕方なく続く。 

　茂みに入っていくと鬱蒼としていて、枝や鋭い葉が肌に刺さってきて痛い。
　だがこう言う人が立ち入らない薄暗い場所にはそう言うものが集まりやすいので、この先にある可能性は高い。

　漸く鬱蒼とした場所から抜けると、そこには廃屋が現れた。
　最早何の建物かも分からないが、コンクリートが至るところで崩れているので相当前から無人だったことが伺える。
　しかもここは嫌な気配が漂っている。

｢ぬいぐるみ探しがとんでもない事に巻き込まれたかもね｣

　そう呟く利音にマジっすかと真尋はげんなりする。
　建物の中に入ると、外観に違わず中も相当ボロボロだ。
　奥へ奥へ進んでいくと、異臭がしてきて思わず服で鼻を覆ってしまう。
　漸く広い場所へ抜けたと思ったその時、目の前の光景に驚愕した。

｢………っ!?｣

　そこには人の遺体が二体が倒れていた。

 ｢これはっ……｣

　目を逸らしてしまうほどの惨状に真尋は恐ろしくなる。
　反対に利音は一瞬眉間に皺を寄せるが、すぐに遺体に近付き冷静に観察する。

｢胸を貫かれてる……
マズいな……
一旦出……!?｣

　一旦出ようと言う前に何かに気づいた。
　後ろを振り返るとそこには、白いワンピースを着た少女が探していた兎のぬいぐるみを抱いていた。

　しまった、出遅れたと利音は額から冷や汗を垂らす。