天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(下)

第五話

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 「どうしようか……」

  悩む秋人の手には可愛らしい兎のぬいぐるみが握られていた。
 悪鬼の手掛かりを見つけたかもしれないと竜樹からの連絡に秋人はもうすぐ合流予定だったのだが、想定外の出来事が起こった。

 竜樹の所へ向かう道中不穏な気配を纏った男性に目が行った。
 その男性は虚ろな目をしており、手にしている兎のぬいぐるみが妖気を放っていたのだ。

 急いではいたが、どうも気になってしまい声を掛けた。

「あの、具合が悪そうですが大丈夫ですか?」

 そう気遣うように声を掛けると、男性の虚ろだった目に生気が戻ったように光を取り戻した。

「……っ!!
あれ、俺……」

 まるで何かに操られていたかのように我に返った男性は自分の手元を見て顔面蒼白になる。

「うわああっ!!」

 悲鳴と共に持っていたぬいぐるみを地面に放り投げ、尻餅を付くように後ろに倒れる。

「なんでまたっ……!!」

 怯える男性に秋人は落ち着かせようと声を掛ける。

「大丈夫ですから、落ち着いて。
一体何があったんです?」

「手放した筈なのに……
兄貴の野郎本当に寺に持ってたのかよ!!」

 ぬいぐるみを見て叫ぶ男性。
 秋人はそのぬいぐるみを手に持つと男性は触らない方がいいと秋人へ忠告してきた。

「信じられねぇと思うけどそれ呪われてる。
手放しても戻って来やがるし、やべぇ雰囲気がすんだよ」

 そう話す男性は冗談を言っているようには見えない。
 それに秋人にもこれがただのぬいぐるみではない事は妖気から見て取れる。
 この男性はその妖気を感じ取っていることから霊感があるようだ。

「ええ、そうですね。
私にも分かりますよ」

「……っ!!」

 そう言うと男性は少しだけ強張った顔が解れた。
  秋人が理解者であることに安堵したのだろう。

「実は私はこう言ったものを祓う立場でして……」

「……霊媒師?」

「まぁ、その類いですね」

 そう伝えると男性は助けてくれと秋人の縋って来た。
 
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