天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(下)

第十二話

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 佐恵子が亡くなった……
 それは香世子にとって地獄へ突き落とされるような衝撃だった。

 佐恵子は母の実家で、祖父母と母と暮らしていたのだが、その日は家に誰もおらず一人で留守番をしていたのだと言う。
 冬の寒い季節、日が沈むのも早い。
 そんな日に事件は起こった。
 強盗が佐恵子の家に押し入ったのだ。
 
 強盗は家に佐恵子一人だけだと知って押し入り、殺害。
 金品を奪い取り逃げて行った。
 犯人は未だ捕まっていない………

「どうしてよ!!
また一緒に暮らそうって約束したのに……」

 香世子はショックと絶望のあまり、海へ身を投げた………

 しかし、肉体を失っても遺恨は残ったまま。
 彼女は成仏出来ずこの世に留まったままで、一番身近にあったぬいぐるみの中へ魂は入っていった。

 だが、ぬいぐるみに入ったのは彼女だけではなかった。
 器を持たぬ雑魚妖や浮遊霊までも負の感情に釣られてそのぬいぐるみへと入ってしまったのだ。

 香世子の家族は、体裁から香世子をただの水難事故と偽っていた。
 そして想いの詰まったぬいぐるみを処分した。
 しかしそれが香世子の怨念を強める元凶となり、ただのぬいぐるみは力を持ち、生前の香世子の姿を取り戻すと家族を皆殺しにしてしまう。

「私は水難事故なんかじゃないわ。
嘘なんかついて……
あなた達が私を殺したの。
当然の報いよ」

 香世子は悪鬼となった。
 それから佐恵子を探し始めた。
 彼女はまだこの世に存在すると感じたのだ。
 そんな彼女の前に現れた天明道の祓い屋。
 最悪の悪鬼と成り果てた香世子は一筋縄ではいかず、封印するだけで精一杯だった。
 そして今に至る___

「私は姉が心配で成仏出来ずにおりました。
姉が自殺したことも悪鬼となったことも双子だからか、何となく感じて、ずっとぬいぐるみの中から探していました」

 妹、佐恵子もまた、成仏出来ずに彷徨いながらぬいぐるみの中へ憑依し、ずっと探していたのだと言う。
 そして今漸く双子は再会出来た。
 
 けれどそれはお互いに思う再会ではなかった。
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