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片割れは傍らに在り(下)
第十一話
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少女は悪鬼と利音の間に立ちはだかった。
「お願いします。
少しだけこの子とお話しさせて下さい。
そしたら私はこの子を連れて黄泉へと還ります」
「さえちゃん……?」
少女は悪鬼の方に向き直り彼女の肩を両手で掴む。
「かよちゃんもういいよ。
もうこれ以上かよちゃんが誰かを傷付けたり、かよちゃんが傷付くのは見たくない。
私も一緒に逝くから、もう、還ろう」
そう説得された悪鬼は涙を流して両手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
「どうして?
かよちゃんは悔しくないの?
理不尽な目にあって……
離ればなれにされて……」
泣きじゃくる悪鬼に少女は慰めるように背中を擦る。
その様子に何が何だか分からない真尋が語りかけた。
「あの……
貴女たちは……」
すると少女が真尋を真っ直ぐ見つめ深くお辞儀をし、自分たちの事を話し始めた。
「私たちは見て分かるかと思いますが、双子です。
私は妹の佐恵子。
そして彼女が姉の香世子。
ずっと仲の良い姉妹でした」
彼女たちは双子の姉妹で、これは40年以上も前の話だ。
仲の良いこの姉妹は、両親に買って貰った二つの兎のぬいぐるみを大層気に入っており、とても大事にしていた。
いつも二人でぬいぐるみを傍に置きながらあそんでいたが、それは突然だった。
「え、どうして……」
両親の離婚だ。
姉の香世子は父に、妹の佐恵子は母に引き取られ二人は離ればなれになった。
いつも一緒だった二人は寂しくて寂しくて仕方がなくて、唯一の拠り所は大事にしていた兎のぬいぐるみだけだった。
更に姉、香世子を孤独にしたのは父の再婚だった。
相手の女性は香世子にはあまりいい感情を持っておらず、更には弟も生まれ、居場所を失ったように思えた。
妹、佐恵子とはたまに手紙のやり取りをすることで心を保っていた。
大人になったら一緒に暮らそうねと約束し、その日を待ちわびるように毎日を過ごしていた。
だがその希望は一つの電話によって打ち砕かれた。
「さえちゃんが亡くなった……?」
妹、佐恵子が亡くなったと聞かされたのだ。
「お願いします。
少しだけこの子とお話しさせて下さい。
そしたら私はこの子を連れて黄泉へと還ります」
「さえちゃん……?」
少女は悪鬼の方に向き直り彼女の肩を両手で掴む。
「かよちゃんもういいよ。
もうこれ以上かよちゃんが誰かを傷付けたり、かよちゃんが傷付くのは見たくない。
私も一緒に逝くから、もう、還ろう」
そう説得された悪鬼は涙を流して両手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
「どうして?
かよちゃんは悔しくないの?
理不尽な目にあって……
離ればなれにされて……」
泣きじゃくる悪鬼に少女は慰めるように背中を擦る。
その様子に何が何だか分からない真尋が語りかけた。
「あの……
貴女たちは……」
すると少女が真尋を真っ直ぐ見つめ深くお辞儀をし、自分たちの事を話し始めた。
「私たちは見て分かるかと思いますが、双子です。
私は妹の佐恵子。
そして彼女が姉の香世子。
ずっと仲の良い姉妹でした」
彼女たちは双子の姉妹で、これは40年以上も前の話だ。
仲の良いこの姉妹は、両親に買って貰った二つの兎のぬいぐるみを大層気に入っており、とても大事にしていた。
いつも二人でぬいぐるみを傍に置きながらあそんでいたが、それは突然だった。
「え、どうして……」
両親の離婚だ。
姉の香世子は父に、妹の佐恵子は母に引き取られ二人は離ればなれになった。
いつも一緒だった二人は寂しくて寂しくて仕方がなくて、唯一の拠り所は大事にしていた兎のぬいぐるみだけだった。
更に姉、香世子を孤独にしたのは父の再婚だった。
相手の女性は香世子にはあまりいい感情を持っておらず、更には弟も生まれ、居場所を失ったように思えた。
妹、佐恵子とはたまに手紙のやり取りをすることで心を保っていた。
大人になったら一緒に暮らそうねと約束し、その日を待ちわびるように毎日を過ごしていた。
だがその希望は一つの電話によって打ち砕かれた。
「さえちゃんが亡くなった……?」
妹、佐恵子が亡くなったと聞かされたのだ。
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