天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(上)

第五話

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 低い唸り声を上げる巨大なそれの姿が顕になる。
 茶色い巨体のその形は蛙のように見える。

「大蝦蟇か……?」

 利音がそう呟く。
 まだ左腕の激しい痛みが治まらないようで冷や汗をかき、息遣いも荒い。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫なように見える?」

 正直この状態で戦うのは厳しい。
 この蛙の妖、大蝦蟇はかなり強力な妖気を放っている。
 真尋だけでは祓えるとは思えない。

 すると大蝦蟇は狙いを利音に定め、勢いよくジャンプする。

「利音さん!!」

 利音の真上に飛び上がる大蝦蟇にすぐさまネコが飛びかかり、利音のすぐ横に二匹とも叩き落される。
 しかし傷を負って崩れるネコに対し、大蝦蟇は無傷だ。
 そして再び利音に狙いを定める。

「焼き払え、炎舞」

 真尋が錫杖でタンッと地面を付くと炎が渦を巻き大蝦蟇を攻撃する。
 だが大蝦蟇は口から思いっきり水を吐き出し、真尋の炎は鎮火してしまう。

「あっ……」

「君バカなの?
どう考えたってあれ水属性でしょ!!」

「煩いですね。
立つことすら出来ない役立たずの癖に!!」

 痛みで身動き出来ない利音に悪態を付く。
 しかしこの大蝦蟇、左手が無い。
 それに大蝦蟇が近づいてきてから利音は左腕が強い痛みに襲われた。
 なにか関連性があるのだろうかと、真尋とネコが応戦している間に辺りを見渡した。

 すると遠くのビルの屋上に人影が見える。
 その人影の周りには何か禍々しい気配を感じた。

「あそこかっ!!ネコ来い!」

 利音はネコを呼ぶとその巨大化した背に乗る。

「真尋、お前もここから離れろ!!」

「え?」

「そいつと戦うなって言ってんの。
あそこに誰かいる。
そいつがあれを操っている可能性がある。」

 利音の指差す方にはたしかに誰かいる。

「じゃあそいつをとっ捕まえ__」

「いや、今は逃げる。
そいつがどんな奴か分からないのにこの状況じゃリスクが高い」

 利音が動けない以上、兎に角今は大蝦蟇から逃げるしかなさそうだ。
 そして利音の合図で真尋は羽扇で大蝦蟇に攻撃を仕掛け、それに対処している隙きに飛び立ち、ネコに乗った利音と逃げる。

 だが大蝦蟇はすぐに追ってくる。
 幸い、飛行するこちらよりもスピードは遅いので、飛んだまま攻撃を仕掛けて大蝦蟇を足止めしながら逃げた。


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