天狗と骨董屋

河童の手のミイラ(上)

第四話

｢ちょっと待って……
利音さん!!｣

　慌てて追ってきた真尋は利音を呼び止めた。

｢帰れって言った筈だけど？｣

｢いやでも……｣

｢君がいても邪魔なだけ。
それにこれは俺の問題なんだから君には関係ない……｣

　突き放すように言われムッとする。

｢関係ないは無くないですか!?
確かに俺は何の役にも立たないかもしれないですけど、利音さんの力になりたいって思うのはダメな事ですか？
少しくらい俺だって何かしたいです｣

　真剣な眼差しで見つめるその純粋な目を直視出来ず顔を反らした。
　彼は今まで接したことの無いタイプなので面白くはあるが、同時にこう言った純粋無垢な所は少々苦手だ。
　荒みきったこの性格には重いと感じた。

｢勝手にしなよ。
言っとくけど俺は君の面倒なんて見れないから｣

｢分かってますよ｣

　突き放しても着いてくるんだろうなと諦め、好きにさせることにした。

｢ところでどこ行こうとしてたんですか？
なんか当てでもあるとか？｣

｢いや……
でもまぁ俺に呪いを掛けたやつは俺に恨みがあるみたいだけど……
ネコ、お前あの河童の手についた臭い分かるか？｣

　あの河童の手を利音に渡すよう寺に持ってきた男の臭いで追えるのではと考えた。
　この状況に真尋はなんだか既視感を覚えた。
　先日の悪鬼の少女の件の時のようだと思った。

　するとネコが突如として唸り声を上げた。

｢ネコ……？｣

　何か見つけたのかと身構えると突然利音の左腕が激しく痛みだし、その場に膝をつく。

｢くっ…ああっ……｣

｢利音さん!?
どうしたんですか…!?｣

　何が起こったのか分からない真尋は狼狽える。
　彼のこんな姿を見たことがないので余計に不安を覚える。
　相変わらずネコは警戒を続けるので真尋は錫杖を出し、臨戦態勢に入る。

　緊張が頂点に達した時、辺りに黒い霧のようなものが立ち込めドス黒い妖気が襲ってくると思ったら空から巨大なものが降ってきて、下敷きになりそうなところを巨大化したネコが盾になり、互いが弾き飛ばされる。