天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(上)

第十二話

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「さて、まずはこの呪詛を形代に移す」

 栗郷が立ち上がり、この部屋の棚から何やら取り出した。

「形代……?」
    
 真尋が首を傾げると栗郷が人形ヒトガタに型どられた紙をテーブルに置いた。

「これに宗像が受けた呪詛を移す。
でないとずっと大蝦蟇に狙われ続けるし、痛みもまた出てくる」

 それをこの形代に取り敢えず肩代わりしてもらい、利音が動けるようにする。
 すると利音はテーブルに置いた自身の腕を退かし、引っ込める。

「ねぇ、これまさか金取るんじゃないよね?」

 妖関連を生業とする栗郷家。
 それに彼の性格から言って流石に無償で請け負うように思えない。
 今はただのしがない骨董屋で、更に真尋と言うバイトまで雇ってこんなことにお金を払う余裕なんて無い。

「悪いけど俺は金を払うつもりはない」

「………じゃあ貸しだな。
その内何らかの形で返してくれればいいさ」

 栗郷はニッと笑った。
 家を出たとはいえ、利音は宗像家の跡取りの筈。
 その宗像家に恩を売れば後々効いてくるだろうと思った。
 そんな思惑の彼に利音はピクリと片目を震わせるが、すぐに冷静になってこう言った。

「じゃあ良い物あげる」

「あ?」

「ここには無いけどうちの蔵に眠ってる呪具をあげるよ。
きっと気に入ると思うよ」

「呪具……?」

 先程とは打って変わって立場が逆転したように互いの表情が入れ替わる。
 そして利音はここの神社に入るにあたって妖にとって居心地が悪くなるので、自分の中に避難させていたネコを影から呼び出した。

「この子に持たせてる奴ね、小刀があるんだけど……」

 以前椿を斬った際に用いた鬼神が作ったと言われる小刀をネコに持たせているポーチから取り出した。

「これを作ったとされる鬼神がもう1振、刀を作ったんだ」

 利音が持つ小刀の製作者である鬼神が作ったとされる刀が家の蔵に収蔵されている。
 利音のコレクションの内の一つを彼に提示する。

 そんな物貰って嬉しいだろうかと真尋は思う。
 正直刀なんて貰っても持て余すと言うか、邪魔になるだけな気がするが、栗郷は違ったようで目の色が変わる。

「………その小刀見せてみろ」

「え?」

 予想外に興味を示した栗郷に真尋は驚く。

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