天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(上)

第四話

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 辺鄙な場所にあるせいか、客は少ない。
 しかし現在温泉に人がいないため真尋と利音がこの絶景が見られる温泉を独占状態だ。

「あ~最高」

 温泉に浸かり、外を眺める真尋。
 綺麗な景色が一望出来るが、時折妖が山を浮遊していたりとてつもなく大きなダイダラボッチが景色を遮ったりと、少々いや、だいぶ邪魔である。
 だとしても大半の人があれらは視えないのでここで旅館を営業する事が出来ているのだが、視える立場からしたら少々騒がしい。

「ゆっくり出来るのか出来ないのか……」

 面白い場所ではあるが気は休まらないと利音は愚痴を溢す。

 身体が十分に温まり、他に客が来た所で温泉から上がり、旅館が用意してくれた浴衣を着て廊下に出る。
 すると隣の女湯から出てきた若い女性二人組が興味深い事を話しているのが聞こえた。

「ねぇほんとにいるのかな?」

「さぁ?でもSNSで見たって人いたもん」

「まぁ見れたらラッキーって感じ?
座敷わらし」

 彼女達から聞こえた座敷わらしと言う単語。
 それを聞いて利音は、ああだからかと納得するように呟いた。

「座敷わらしがいるからここの旅館悪い気はしなかったのかって」

「ああ成る程……」

 視た者に幸運や富をもたらすと言う座敷わらし。
 それが住み着いているから空気が澄んでるのだと理解した。

「けど………」

 それとは違う何かもここにいると利音は感じていたが、それが何かは分からない。

 部屋へ戻る途中、利音は飾られた大皿を見つけ、マジマジと見入る。
 骨董好きとしては気になってしまう。

「伊万里焼、好きなのかな」

 確かここのオーナーが骨董好きで、先程も伊万里焼の花瓶もあった。
 この大皿も伊万里焼である。

「お客さん、興味あるの?」

 突然利音に声を掛けて来た中年の小太りの男性。

「え~っと……」

「ああ、すまないね。
私はこの旅館のオーナーをやってます」

「ああ、あの……」

 仲居さんが言っていた骨董好きのオーナーはこの人かと思った。

「お客さんが伊万里焼って言ったのを聞いてね、よく知ってるなぁって。
これはね、江戸時代に作られた古伊万里なんだ」

 古伊万里。
 それを聞いて利音は眉間に皺を寄せる。
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