天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(上)

第六話

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 真尋は移動して旅館の裏の方に来ると、そこには綺麗な日本庭園があり、池には鯉がいたり、カエルの姿もある。
 それと同時にそれらに混じって河童が池から顔だけ出してユラユラと寛いでいるのが見える。
 特に人に危害を及ぼすような悪いものでは無さそうだが、こうも妖が身近に居すぎるのは妙な気分になる。

 それも河童だけではない。
 名前の分からないような妖も目を凝らすとその辺に存在するのだ。

 基本妖は人とは一定の距離を保つと言うイメージなので、人が住むすぐそこに当たり前のようにいるので少しビックリする。

「面白いっちゃ面白いけど……」

 少々鬱陶しく感じるのは自分だけだろうか?

 真尋が外を散策している頃利音は旅館のオーナーに連れられ、旅館のスタッフしか入れないとある部屋へやって来た。
 そこには数多くの骨董品がずらり。

「ここは私のコレクションを置いている所でね。
妻や他の従業員には不評でどうせ偽物だから捨てろとまで言われるんですよ。
ここは本物だと証明して、ギャフンと言わせたくて……
あ、これなんかどうです?
の有名な伊藤若冲の掛け軸!!
これは本物の筈だ」

 オーナーは自信を持って利音の前に出す。
 鶏の絵が描かれたその掛け軸をじっくり見て、う~んと声を出す。

「絵はね、本物っちゃ本物だけど、コピーだね。
複製品、レプリカ。
それを如何にも本物っぽく加工してあると言うか……」

 意図的に作られた偽物。
 それを騙されて購入してしまったと知ったオーナーは膝から崩れ落ちた。

「ああ……母ちゃんに怒られる………
どうにか本物として振る舞うしかない」

 切実な心からの声は残念ながらオーナーの後ろにいつの間にか立っていた旅館のスタッフの女性にしっかりと聞かれていた。

「バレた時がどうなるか分かっていないようね」

「ひゃっ……!!か、母ちゃん……」

 その着物を着た女性は利音に顔を向けると笑顔で会釈した。

「お客様、ごめんなさいね。
うちの主人がご迷惑をお掛けして……」

「いえ……」
 
 こんな所で油を売って、挙げ句客を連れ回していることに憤慨している女将は利音には満面の笑みで対応しながら、夫であるオーナーには般若のような顔を向け、オーナーは意気消沈である。
 
 そんな感じでお開きとなったが、ふと何処からか妖の気配を感じた。
 まぁここは沢山の妖が人に混じって暮らしているようなので大して気にはしなかった。
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