天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(上)

第七話

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 利音が部屋に戻ると既に真尋が部屋にいた。
 
「あ、お帰りなさい」

 広縁ひろえんにある円い小さめのテーブルを挟むようにある二つの椅子の片方に座り寛ぐ真尋の向かい側の椅子に利音は座る。
 真尋はこの旅館の周辺を散策して、妖が多くてどうしても写真に写り込むと愚痴を溢した。

「ま、しょうがないんじゃない?
稀有な場所ってことで楽しめばいい」

 そうごもっともな事を言われ押し黙る。
 そうなんだけどと頭では分かっているが、折角の大自然なのにとモヤモヤする。

「そう言えば緋葉は大丈夫かな?」

「さぁ………?」

 妖と言えば家にもいたなと真尋はふと思い出す。
 そんな家では緋葉は人の姿になり、店番をしていた。

「…………」

「ネコちゃん今日も可愛いね」

 店の前では若い女性二人に撫でられるネコがいて、それを店の奥から緋葉が見ていた。
 利音が万が一と緋葉に見張りとしてネコを家に置いてきた。
 何かあれば契約者の利音にしか分からないテレパシーのようなものを発してくる筈だ。

「あれ、今日はいつもの人いないんですか?」

「て言うか新しい人?」

 ネコを撫でていた女性がそう聞いてくる。
 たまにここへ来てネコと戯れたりイケメン会いたさに来る彼女達は、目的の利音の姿が見当たらない上に、見慣れない従業員かいるので不思議に思った。

「はい、ここの主人は現在家を数日空けております。
私はその間店番を頼まれた次第であります」

「へぇ、そうなんだ」

 二人の女性は緋葉に関心を持ったようで、ネコを撫でていた手を止めて店の中へ入ってきた。
 そして店内の商品を見ながら、これ可愛いと目がパッチリで可愛らしい招き猫を手に取ってみたりしながら緋葉にも話し掛けて来た。

「お兄さんカッコいいね。
いつからいるの?」

「私はつい先日から………」

「バイト?ずっといるの?」

「いえ、その………」

 若い今時の女性と話すことなど無い為、彼女達とどのように接したらいいか分からず戸惑いを見せる。
 それに時折同じ日本語を話している筈なのに理解出来ない単語が出てくるので、そのジェネレーションギャップに変な冷や汗をかきながら店番をしていたことを真尋達は知る由もない。
 
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