天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(上)

第八話

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 その後真尋と利音はもう一度温泉に入って思う存分楽しみ、夜は豪華な夕食を頂く。

「おおぉぉ!!美味しそう!!」

 懐石料理が目の前に並べられ、早く食べたいと真尋は生唾を飲み込む。
 
「宗像様、先程は主人がご迷惑をお掛けしました。
お詫びと言っては何ですが、こちらの日本酒はサービス致します」

 事前に別料金の日本酒を頼んでいた利音。
 料理を運んできた先程の女将が日本酒のお代はいらないと言うので利音はいいんですか?と一言聞いて、有り難く頂く。

「それに主人の骨董品、宗像様が偽物とはっきり仰って頂けた事でわたくし共もスッキリ致しました。
今後は無駄遣いは減るでしょうし」 

 そう満面の笑みで言われこれで益々女将の尻に敷かれるんだろうなと思った。
 ともあれ、利音からしたら酒がタダになったのでラッキーだ。

「ではごゆっくり」

 女将が去った所で早速真尋は箸を持つが、どれから手を付けていいのか迷う。
 こう言うのには食べる順番などあるのだろうかと考えている横で利音はお吸い物から手を付ける。
 真尋はこれって食べる順番とかあるんですかと聞くと、そんなもん適当でいいんじゃない?と言うのでお刺身から食べる事にした。

「ん~美味しい。幸せ……」

 真尋が黙々と食べる横で利音は酒をチビチビと飲む。

「あ、お酌しましょうか?」

 まだ18歳の真尋は酒は飲めないが、普段一応お世話になっている雇い主へ少しでも媚びを売っとこうとお酌を申し出るが、自分で注ぐ方が楽と断られた。
 こう言う時こそコミュニケーションを大事にしたらいいのにと思うが、普段遠慮の無い二人がコミュニケーションがどうのと言うのは今更だろう。

「あ~食った食った………」

 全てを腹に収めた真尋は満足そうにその場に寝転がる。
 隣にいる利音もいつもより飲んだせいでだいぶ酔いが回ってきた。
 普段は嗜む程度をたまに飲むが、今日は折角の旅行と言うのと、サービスしてもらったのでとことん飲んでいた。

「腹一杯になったら眠くなった。
けど折角の温泉だからもうちょっとしてからまた入ってこうかなぁ………」

「お一人でどうぞ。
俺はもう寝る」

「え~もう寝るんですか!?勿体無い!!
まだ寝る時間じゃ無いでしょ!!」

 まだ寝るには早いが、酔っ払ってしまった利音はこのまま眠ってしまいたい。
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