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縄張り争い(上)
第四話
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兎に角なるべく天狗に遭遇しないよう気を付けないといけないと利音は指摘する。
「妖に人の道理は通じない」
利音のその言葉に目の前に妖がいるのによく言えるなと真尋は思う。
緋葉をチラリと見ると、彼は申し訳なさそうに目を伏せる。
「返す言葉もない。
妖は人とは違う理で生きている故、自分達の理で動いている」
「……じゃあ緋葉の理は何?」
利音がそう問うと緋葉は一度目を瞑り、目を開けると真っ直ぐに利音の目を見て答える。
「心だ」
「心?」
「そうだ。
心が通じ合えば妖も人も関係は無い。
私は私が信じた心に従う」
利音は緋葉を信じていない。
こうやって試すような質問を何度もする度、緋葉は丁寧に返す。
妖故に妖の性質をよく理解しているので、利音の疑り深さも当然の事だと思っている。
そしてその都度少しでも自分が決して二人を傷付けるつもりがないと安心出来るよう説明している。
けれどあまりに疑うので、彼を拾った真尋はあまり気分は良くない。
「利音さん、あんま緋葉を苛めないで下さいよ?」
「真尋殿、どうか利音殿を許してやって下さい。
私も妖と言うものをそれ程信じているわけでは無い故、利音殿の気持ちがよく分かる」
「でも、緋葉は違うでしょ?」
「さぁ?どうでしょう……」
こんな生真面目で忠義を尽くすような彼が裏切る筈がないと思っているので、自らを信用に値するかと問うような緋葉に真尋は戸惑う。
「申し訳無い。
少し意地悪なことを申した。
ただ真尋殿はお優しく、純粋な方だ。
あまり他人を信じすぎると付け入られる。
そうやって貴方が傷付くのは見たくない」
「緋葉………」
こうやって甘言で騙してくる妖もいると緋葉はまた惑わすような事を言ってくるので、もう誰も信じないと真尋が言うと、緋葉はクスりと笑う。
普段厳つい鳥の顔なのに柔らかな表情で笑うので少しドキリとした。
そして利音は横でこうやって絆されて行くんだなと冷めた目で真尋を見つめるのだった。
「妖に人の道理は通じない」
利音のその言葉に目の前に妖がいるのによく言えるなと真尋は思う。
緋葉をチラリと見ると、彼は申し訳なさそうに目を伏せる。
「返す言葉もない。
妖は人とは違う理で生きている故、自分達の理で動いている」
「……じゃあ緋葉の理は何?」
利音がそう問うと緋葉は一度目を瞑り、目を開けると真っ直ぐに利音の目を見て答える。
「心だ」
「心?」
「そうだ。
心が通じ合えば妖も人も関係は無い。
私は私が信じた心に従う」
利音は緋葉を信じていない。
こうやって試すような質問を何度もする度、緋葉は丁寧に返す。
妖故に妖の性質をよく理解しているので、利音の疑り深さも当然の事だと思っている。
そしてその都度少しでも自分が決して二人を傷付けるつもりがないと安心出来るよう説明している。
けれどあまりに疑うので、彼を拾った真尋はあまり気分は良くない。
「利音さん、あんま緋葉を苛めないで下さいよ?」
「真尋殿、どうか利音殿を許してやって下さい。
私も妖と言うものをそれ程信じているわけでは無い故、利音殿の気持ちがよく分かる」
「でも、緋葉は違うでしょ?」
「さぁ?どうでしょう……」
こんな生真面目で忠義を尽くすような彼が裏切る筈がないと思っているので、自らを信用に値するかと問うような緋葉に真尋は戸惑う。
「申し訳無い。
少し意地悪なことを申した。
ただ真尋殿はお優しく、純粋な方だ。
あまり他人を信じすぎると付け入られる。
そうやって貴方が傷付くのは見たくない」
「緋葉………」
こうやって甘言で騙してくる妖もいると緋葉はまた惑わすような事を言ってくるので、もう誰も信じないと真尋が言うと、緋葉はクスりと笑う。
普段厳つい鳥の顔なのに柔らかな表情で笑うので少しドキリとした。
そして利音は横でこうやって絆されて行くんだなと冷めた目で真尋を見つめるのだった。
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