天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(上)

第五話

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 この日天明道の会員達が天明道の会長の京道幸久に召集され、天明道が所有するビルの会場に集まっていた。
 しかし突然の呼び出しだったので集まった人数は半分以下だった。
 そこには秋人と竜樹、そして朱兼が来ていた。

「あれ、お芙紗さんは?」

 朱兼が来ているのに妹の芙紗が来ていない事に秋人は気になった。

「ああ、あの子は気紛れな子だからな。
面倒だと言って来ぬ」

「ははっ、相変わらずお芙紗さんらしい」

 そう秋人は苦笑した。

「しかし、突然の召集とは一体……」

「まぁおそらくは………」

「……?」

 朱兼は何と無く今回召集された意味を察していた。
 そしてこの大広間に京道が入ってくる。

「今日突然の召集に応えてくれたこと感謝する。
早速だが、最近山で天狗共が争っているらしい。
それにより山が荒らされ、天狗や他の妖が人里に下りて人に手を出すようになっている」

 京道によると、例の天狗の縄張り争いで妖が人の生活圏に入り、悪さをするようになったと言う。
 更に天狗は人の子供を拐い、喰ってしまう事件も出てきた。

「こうなっては仕方がない。
天狗らを殲滅せよ!!」

 最早天狗達の事情など関係無い。
 兎に角暴れる天狗は皆駆逐するよう京道は天明道の会員らに指示をした。

「以上だ」

 それだけ伝えると、京道はこの会場から早々に出ていった。

「やはりか………」

「朱兼さん?」

「最近山が騒がしいと言っただろう?
あれは天狗の縄張り争いのせいだ。
遂に天明道も動かざるを得なくなったか……
これは相当マズい事になったの」

 天狗、その中でも大天狗と言えば妖の中でもトップクラスの妖力を持った存在だ。
 そんなものを複数人倒さなければならないと言うことは、勿論天明道の人間にもかなりの被害が生じるだろう。
 一体何人が犠牲になることやら……

「秋人よ、お前は戦えるか?」

「………それは私の身を案じてか、それとも天狗に情があるかと仰りたいのか」

「愚問じゃの。
お前は人の側に居るのだから例え身内とて手を掛ける覚悟はある筈」

 そもそもいくら父が天狗だからと言って秋人自身、天狗側に居た事などないので、情など元々毛程も持ち合わせてなどいない事は朱兼も知っている。

 だから心配なのは大天狗相手にどれ程やれるか。
 下手したらこの戦いで命を落とす事も考えられる。
 そうなって今、一番頭に浮かぶのは真尋の顔だった。
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