天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(上)

第六話

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「じゃーん、座敷わらしのキーホルダーのお土産」

「ありがとう、可愛いね」

「いいなぁ、座敷わらしの出る旅館かぁ」

 この日真尋は大学の食堂で友人のポニーテールで眼鏡の女性、花田優美とこちらも眼鏡を掛けた男性の三村直樹に先日の旅行の土産を渡した。

 妖怪が好きなこの二人は、座敷わらしの話をすると興味津々に羨ましそうに聞いていた。
 
 食堂なので食事をしながら話しているとそこに栗郷が現れた。

「居た。おい高住、ちょっといいか?」

「え、栗郷さん?」

 彼に学校で話し掛けられる事はなかったので少々戸惑う真尋を、いいから来いと、まだ食事の最中なのにも関わらず、腕を引っ張って何処かへ連れていく。

 栗郷は真尋の連絡先を知らないので真尋の妖気を辿って真尋を見付けたようだ。

「何なんですか?」

 人気ひとけの無い場所に連れてこられたが、何やら深刻そうな顔をする。

「天明道で天狗を殲滅しろと命令が出た。
多分大勢の血が流れ、お前らも巻き込まれるかもしれねぇ」

「天狗を殲滅………?」

 先日天明道が下した指示は、全天明道の会員にメールで通知された。
 これは天明道の者でなくとも巻き込まれる可能性があるため、栗郷は忠告しに来たのだ。

「しかも相手は大天狗。
それも一匹でなく何匹もだ。
それに加え大勢の大天狗の眷属まで………」

 これはもう天狗と天明道の戦争になると栗郷は言った。

「宗像にも伝えろ。
やべぇ事になる」

 彼の様子からただ事ではないとひしひしと伝わってくる。
 食堂に戻っても心ここに非ずと言った様子で友人の二人に心配されたが、何もないと誤魔化すのに精一杯。
 家に帰ると真っ先に栗郷の話を利音と緋葉に伝えた。

「まぁ、なるようにしかならないでしょ」

 利音は考えてもどうせ何も出来ないからと、考えることを放棄した。
 一方で緋葉は暗く、憂いた顔をする。

 そして翌日の早朝だった。
 夜が明けようかと言う頃、昨晩から家の屋根の上で周囲を観察する緋葉の姿がそこにある。
 屋根の下では真尋と利音が寝静まっている。

 緋葉は以前の棲家だった山の方角を見て何やら不穏な気配が漂ってくる事に気が付いた。
 そしてドーンと地響きがして、鳥達が一斉に声を上げて舞い上がった。
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