天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(上)

第十二話

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 秋人さんは?秋人さんは何処だ?

 真尋は戦闘が行われる最中さなか、周りを見渡して秋人の妖気を頼りに彼を探す。

「真尋!!」

 利音が呼ぶがその声は一切届かない。
 目をこらして周囲を見渡していると、建物の屋上で血塗れで横たわる人物を見付けた。

「秋人さん?」

 少し距離が離れているので、ここからでは誰なのかははっきり見えないが、よく知るあの妖気は間違える筈もない。
 あれは紛れもない、秋人だ。

「秋人さん!!」

 大きな声で叫ぶ真尋の声を秋人の耳に微かに届いた。
 しかし真尋がいるとは気付かない秋人は、ここに来て走馬灯を見る様に幻聴が聞こえたのかと思った。
 閉じていた目を開いて目だけを周囲に向けて、走馬灯でも何でもいいから真尋の姿がもう一度だけ見たいと願う。

「……ま……ろ………?」
 
 だがそこに映ったのは、秋人の命を狙って空から向かってくる複数の烏天狗達の姿だった。
 しかし今の秋人に逃げる力は残されておらず、為す術もない。

「秋人さん!!」

 殺られると秋人は目を閉じたその瞬間、突然熱さを感じたかと思えば、烏天狗達の悲鳴が耳をつんざく。

「秋人さん……」

 名を呼ぶその声は、ここにいる筈がないと半信半疑だった秋人を確信に変える。
 だが、少々血を流しすぎたようで、誰かが傍にやって来た気配を感じる中、意識が遠退いていった。

「秋人さん、秋人さん!!」

 秋人に襲いかかる烏天狗を炎で撃退した真尋は意識の無くなった秋人の傍へ駆け付けた。
 血だらけで、最早何処を怪我しているのかすら分からない彼を早く治療してあげなければと思うが、烏天狗はまたどんどん集まってくる。

「半端者風情がまた増えたか」

「殺せ殺せ!!」

 烏天狗達は攻撃された事で殺せと息巻いている。

「真尋君!!」

 真尋の存在に気付いた竜樹だが、他の天狗と応戦中で助けに行く事もままならない。
 更には朱兼と芙紗も大天狗の相手で精一杯。
 それでも真尋は秋人を置いて逃げるなんて考えは無かった。

「全く、世話の焼ける………」

 すると真尋と大勢の天狗の間に利音が立ちはだかった。

「利音さん………」


 
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