天狗と骨董屋

縄張り争い(下)

第二話

｢ん………｣

　白い布団を掛けられ眠っていた秋人はゆっくりと目を覚ました。
　彼は暫くぼーっと白い天井を見つめると、ここは何処かと辺りを見渡す。
　腕には点滴の針が刺さっていて、部屋の雰囲気からここは病院だと認識した。

　するとドアがトントンとノックされ、スライド式の扉がガラリと音を立てて開くと、竜樹の姿が現れる。

｢あ、目が覚めたんスか｣

｢竜樹………｣

　秋人はゆっくり起き上がろうとすると、無理しないでと駆け寄ってくる。

｢竜樹、あの後一体………｣

　確か天狗と戦い、重傷を負って意識を失った。
　意識を失うその前にうっすらと記憶に真尋の声があるのが気になる。

｢その………｣

　竜樹は秋人が気を失った後の事を説明した。
　真尋が突然来て秋人を助けようとしたこと、利音が大天狗をギリギリまで追い詰めたこと、そしてその後に援軍がやって来て大天狗は逃げたこと。

｢その援軍の中に宗像一門の人が居て、彼らに見つかる前に利音君達は逃げました｣

　竜樹の説明を聞いていた秋人だが、途中から話が入ってこなかった。

｢真尋は何故彼処に居た？｣

｢………それは｣

　可愛いひ孫があんな危険な戦場に来ていた事が何よりも恐怖を感じた。
　それも竜樹の説明を聞くに、自分を助けようと飛び込んで来たようだったので、色々と彼自身から話を聞かなければと思った。

　そんな秋人の様子を見て竜樹はどう説明すればいいかと考えていると、再びドアのノックが鳴った。

｢はい………｣

　秋人が返事をすると朱兼と芙紗が入ってきた。

｢目が覚めたか……
気分はどうだ？｣

｢朱兼さん………
はい、問題ありません｣

　身体は多少あちこちに痛みを感じるが、大した痛みでは無いのですぐにでも戦場に戻ることは可能だと感じた。

｢ところで私はどれくらい眠っていましたか？｣

｢二日。お前の孫が心底心配しておったようだぞ。
なぁ？竜樹よ｣

　話を振られ竜樹は秋人に説明する。

｢真尋君から俺に電話やメッセージが何度も……
ここは天明道の病院っスから俺から来ない方がいいって言ったんで｣　

　そう、ここは天明道が経営する病院である。
　一般人も勿論利用可能だが、特に妖との戦いで負傷した者が運ばれる病院である。
　表では妖の存在は大っぴらに言えない為、妖に通じている医師がいるここがあるお陰で余計な説明も不要で、秋人のような半妖も安心して入院出来る。