天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第四話

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 森の中は黒い霧に覆われたように暗く、ピリピリとした空間は結界が張られている為だろう。
 そんな異様な雰囲気が漂う森の中に見事な和風の城が聳え立っている。

 その城の中では物々しい空気を放つ大天狗達が怒気を含め声を荒らげていた。

「祓い屋如きがこの俺に傷を入れやがって!!」

「一体何人殺られた!?」

 無様に逃げるしかなかった彼らのプライドはズタズタ。
 最早天狗同士で争っている場合ではないと、皮肉にも天明道が奇襲を仕掛けていたせいで結束することとなってしまった。

「天明道の本部に乗り込んで、我らの力を思い知らせてやろうぞ!!」

 血気盛んな彼らを尻目に、窓際に座る男が一人。
 目立つ深紅の美しい長い髪だが、外側の髪は短く遊ばせていて、次に目が行くのは眉目秀麗なその顔立ちだろう。
 長い睫毛がまた美しさを引き立てている。

 彼は他の大天狗とは少し距離を置き、話を聞いていたが、誰にも分からぬように鼻で笑った。

「何処まで行っても愚かだね。
人も、妖も………」

 小声で呟くねっとりとした色気のあるその声は面倒臭そうに窓の外を見つめる。
 すると、輪に入ってこない彼を見つけた大天狗の風楽が男の傍に寄ってくる。

「おい六華りっか
貴様も話しに加わらぬか」

 呼ばれた深紅の髪の男、六華は微笑を浮かべて窓の外から風楽へ目線を移す。

「俺が話しに加わらなくとも結論は出たじゃないか。
天明道本部へ乗り込むんだろう?
いいじゃないか」

 適当な反応に風楽は同族が殺られたと言うのに何故そんな冷静でいられると詰め寄る。

「何故………?では聞くが、つい最近まで殺し合っていた仲なのに、同族と言うだけで何故結託出来る?
俺は仲間だと言われていつの間にか後ろから討たれる事態は御免だね」

「…………」

 的を射た彼の発言に風楽は押し黙る。
 それは他の大天狗も同じだった。
 皆が黙ってしまって六華は苦笑し、それから窓際から立ち上がって大天狗達の間を掻き分けて歩き出す。

「ほら何してる?
本部へ乗り込むのだろう?」

 後ろから討たれるのは御免だと言った割にいの一番に先頭に立つ六華の真意が図れず大天狗達は困惑していた。
 元々何を考えているのか分からない彼。
 それでも天明道に乗り込むと決めたからには彼に続いた。
 
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