天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第十四話

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「はっ……はっ………」

「おい大丈夫か!?」

 風楽との戦闘でほぼほぼ体力を使い切り、相手からの攻撃を避けるだけで精一杯の秋人。
 遂には膝を着いてしまった。

 彼が戦えそうに無いのは栗郷も分かってはいるが一人では少々厳しい。
 かと言って誰かに加勢してもらうのも、彼らも他の天狗の相手で精一杯。

「中々手こずってるようだな」

「………!?」

 相手の天狗の後ろに現れたのは六華だ。
 
「あ?六華じゃねぇか……
これの何処が手こずってるように見えるんだ?」

 秋人は力尽き、栗郷もだいぶ体力を消耗していると言うのに六華の発言はおかしいと反論する。

 そして新たな天狗の出現に二人は絶望する。
 最早万事休すか………
 
 六華はニッと口角を上げ、その瞬間鮮血が舞い散った___

「なっ………!?」

 その場にいた者は皆目を見開いた。
 何故なら六華が秋人らが対峙していた大天狗の胸を彼の腕が貫いたのだから………

「りっ……か……!?
きさ…まっ……」

「全く、妖も人も愚かだと思わないかい?
この時代になっても学ばないものだよ」

 淡々とそう涼しい顔で話し、その貫いたその腕を引き抜いて、心の臓を抉り出した。
 そして心の臓を失った大天狗は地面に倒れ、消え去った。

 六華は血に染まった手に持つその心臓を口に運び喰らった。

「六華、貴様血迷ったか!?」

 この瞬間を目撃した大天狗ら、そして天明道にも激震が走り、場が凍り付いた。
 
「何故仲間を!?」
 
「仲間?
つい最近まで殺し合っていた相手をよく仲間と言える。
言っただろう?いつの間にか後ろから討たれる事態は御免だと。
お前達が寝首を掻かれる可能性があるとは考えなかったのか?」

 六華は嘲笑うようにそう吐き捨てる。

「だとしても何故天明道に肩を貸すような事を!?
奴らは我々を卑怯な手で襲ったのだぞ!?」

「俺は縄張り争いには参加していないし、彼らに襲われもしていない。
故に俺が復讐する理由もない」

 確かに六華は縄張り争いに参加せず、自分の縄張りの奥底に籠って何もしていなかったし、それ故に天明道にも目をつけられる事はなかったが、大天狗らは解せない事がある。
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