天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第十五話

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「ならば何故ここへ来た?
お前も乗り気であったろう」

 本部へ襲撃する前に六華は自らその先頭に立っていた。

「別に、俺はただここに用事があったから来ただけで一度も天明道を殺るなど言って無いが?」

 屁理屈にも聞こえる六華の言葉。
 しかしもうそんなことはどうでも良かった。
 天狗達の怒りは天明道から六華へ移る。

「六華の野郎!!
ぶっ殺してやるっ!!」

 殺気立つ大天狗らだが、六華は動じるどころか笑みすら浮かべた。

「ほう、この俺を殺せるとでも?」

 そう言うと赤黒い妖気が全身から溢れ出る。
 それだけでこの場にいる全員がその強大な力に戦いた。

 先程の大天狗の心臓を喰らった事でより強い力を手に入れ、更に彼の後ろには彼の沢山の眷属が控えている為、最早大天狗さえも迂闊に六華に手出しは出来なくなった。。
 彼らは天明道との戦いに参加しなかった為、他の大天狗の眷属のように天明道に殺されずに済んでいるので、その数も桁違い。

「六華様……」

 すると六華の傍に長い黒髪の美しい女天狗が少し後ろにやってくる。

「ご苦労、こう

 紅と呼ばれたその女天狗は軽く頭を下げると後ろに下がる。
 この眷属達を六華の命で率いて来たのが紅である。

「さぁ、どうする?」

 六華はそう挑発した。
 だが、六華に手を出そうとする者は誰もいなかった。

「ならばここから引け。
これ以上天明道との無用な諍いは不要。
あんまり溝が出来てもこちらとしてもメリットが無い」

 天明道と争う姿勢の無い彼に天狗達は戸惑いながらも、彼に逆らっては今は不利だと感じ、それを飲んだ。
 しかし天明道としてはここまでやられて、しかも天狗の言葉を信用することなど出来ない。

 するとそこへ京道が現れた。

「天明道諸君、引け。
我々としてもこれ以上血を流すのは得策ではない」

「会長………」

 この戦いはここで無理矢理手打ちにする事となり、終結した。

 六華はチラリと秋人を一瞥した後、ニッと笑う。
 そして大きな翼を羽ばたいてこの場から去って行った。

「希望とは絶望、絶望とは希望……
お前は今の世界をどう見る。
なぁ、貴眞きさね?」

 語り掛けるように呟く六華は懐かしむように空を見上げた。

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