天狗と骨董屋

夏の日の思い出 番外編

第一話

　季節は夏へと移り変わる。
　空から降り注ぐ太陽の日差しが痛い程に皮膚に刺さり、蝉の鳴き声が余計に暑さを引き立てている。

　こんな暑い夏の日にはあの夏の思い出が甦ってくる。

　あれは真尋がまだ小学校5年の頃。
　夏休みが終わって二学期が始まって間も無くだった。
　まだまだ残暑が厳しいこの9月。
　秋人は子供の字で書かれた文章と絵が書かれた紙を見てはぁっと深く溜め息をついた。

　これより前の事。
　秋人は真尋の小学校の担任から話があると呼び出されたのだ。
　真尋が何かとんでもない事をやらかしてしまったのかと不安を抱く中、放課後の誰も居ない教室で担任の若い女性教師と向かい合って話を聞く。

｢真尋君、お家ではどんな様子ですか？｣

｢どんな……？
特に変わった様子は見受けられないですが………｣

　真尋は両親とは離れ叔父の家で暮らしている、と言う体ていなので、どう考えても普通の家庭ではなく、何らかの問題を抱えているのだろうと思われている。
　まぁそれも大きく外れてはいないので否定は出来ない。

　なのでこの担任の女性が真尋を心配しているのは分かるが、肝心なのはその心配がなんなのかと言うことだ。
　少なくとも家では特に問題を感じることはない。
　しかしそれは秋人の目で見るものであって、もしかしたら家で何かストレスを感じて学校でそれを発散させているのではと不安が膨らむ。

｢そうですか………｣

　すると担任は何やら紙を机に出した。

｢これなんですが………｣

｢はい………？｣

　見るとそれは真尋の字と絵が書かれた紙だ。
　見ると、そこには自由研究と言う文字と、地ばくれいの観察と言う文字が書かれていた。

｢これは………｣

｢真尋君が夏休みの宿題の自由研究で提出してきた物です。
地縛霊の観察………
真尋君、何か心に抱えたものがあるのではと心配で………｣

｢…………｣

　夏休みの宿題に関して秋人が口出しすることはなかったし、手伝う事もなかった。
　それは自主的に全て自分でやらなければ意味が無いと思っているので、ちゃんとやったかどうか聞くくらいでほぼノータッチだった。

　しかし、ざっくりと確認する必要はあったのかもしれないと後悔する。