女装令嬢奮闘記

小鳥 あめ

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事体の把握

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 そういうことか、そういうことかぁ!

 あまりの出来事に意識が飛びかけた僕ではあったが、主人の暴挙に申し訳なさそうに平謝りする使用人頭のミーアに自室へと案内され、今にも泣きそうなステラに優しく手を握られて漸く頭が回り始めた。

 使用人のハンスとステラの気づかわしげな表情が辛い。僕は立ち上がり心に溢れ出て来た怒りを静める為に、堅い床へ靴のヒールが折れるくらいに足を振り下ろし勢いよく地団駄を踏んだ。

 床が凹み少々の犠牲になったが、これがシャシュカじゃなくて僕でよかったな!彼女なら自分が侮辱されたや否や剣を抜き決闘を迫っていただろう。剣で勝てなかったらきっと拳での勝負にまで持ち込み屋敷は半壊していたのは間違いない。僕の落ち着きと冷静さに全人類とグラデウスは感謝をしてしかるべきである。

 しかし心を静め落ち着いて考えてみると、少しこの婚約に納得が行った気がする。

 年の差のある婚約に、使用人の制限。唯の口約束ではなく結婚する日まで婚約者を自分の屋敷に住ませることにした理由。

 女嫌いであるからこそ適齢の令嬢に迫られないように、幼い婚約者という隠れ蓑を用意した。そしてそのことに気が付いた妹は、僕が身代わりになってもお飾りの婚約であれば絶対に入れ替わりがバレないだろうという確信を持ち、長年の夢であった騎士になるために僕の代わりに騎士学校へ行くことを思いついたのだ。

 妹にもグラデウスにも利用された僕哀れ過ぎない?というか女嫌いということは男の僕はどうなるんだ、まさか貞操の危機じゃないだろうな。
 
 彼がショタ趣味でないことを祈るばかりだ。

「坊ちゃま、これから私たちどうすればいいのでしょう、グラデウス様のあの態度、何か理由がおありなのは分かりますが、この仕打ちはあんまりではありませんか。坊ちゃまが帰りたいと思うのでしたら。私たちは荷物を纏める準備は出来ておりますよ。」

「そうですって。長い間人形の様に過ごせってことでしょう?あんな奴の為に坊ちゃんの貴重な時間をくれてやる必要は無いですよ。」

 さっさと帰ろうと提案してくる二人を宥めつつ僕は考える。今更実家に帰ったところで両親に事の顛末は話せるわけが無いし。(両親は遠出をしていた為このことは知らない)騎士学校に行ってしまった妹を説得するため追いかけるのも、家に連れ帰るのも骨が折れる。勢いの付いた妹は猛獣だ。多大なる犠牲を払い、両親を宥め、妹に負けたという事実と向き合うのは正直な所とてもしんどい。実家に帰ったところで使用人たちからは気の毒そうに迎えられるだけなのであれば、ここで同情を買っているのと何も変わらないのでは無いだろうか。
 
 何処にも行き場が無いのであれば、ここで一から信頼を築いていくしかない。彼の女嫌いの理由を知り少しでも歩み寄って貰わなければ、将来的に困るのはシャシュカの方だ。無事学校を卒業したとして、彼女が王族の騎士になれるかと言えば凄く難しいと思う。
 
 国の騎士団の訓練は凄く厳しいと聞く、シャシュカも確かに強いがそれは女性としてはということだ。これは決して差別とかではなく。男女の生まれ持った差という意味でである、そして女性らしさが出てきてしまえば今の様に入れ替わってなど居られない、僕だって今は貧弱だけど、成人までにはムキムキマッチョを目指す予定だ、そうしたらもう女装は無理なのだから。無事再び入れ替わり大団円を迎える為にも僕はこの屋敷で、自分が出来ることを見つけようと思うのだ。
 
 申し訳ないけれど、おとなしい令嬢なんてやってられないので、彼の言う通り自分の好きにやらせて貰うけど。

 僕はハハハと笑う。これしきの事で嘆くと思ったら大間違いだ。
 
 誇り高い騎士の血筋の僕を舐めた発言、いつかあの美丈夫に謝らせてやらないとね。

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