6 / 50
事体の把握
しおりを挟むそういうことか、そういうことかぁ!
あまりの出来事に意識が飛びかけた僕ではあったが、主人の暴挙に申し訳なさそうに平謝りする使用人頭のミーアに自室へと案内され、今にも泣きそうなステラに優しく手を握られて漸く頭が回り始めた。
使用人のハンスとステラの気づかわしげな表情が辛い。僕は立ち上がり心に溢れ出て来た怒りを静める為に、堅い床へ靴のヒールが折れるくらいに足を振り下ろし勢いよく地団駄を踏んだ。
床が凹み少々の犠牲になったが、これがシャシュカじゃなくて僕でよかったな!彼女なら自分が侮辱されたや否や剣を抜き決闘を迫っていただろう。剣で勝てなかったらきっと拳での勝負にまで持ち込み屋敷は半壊していたのは間違いない。僕の落ち着きと冷静さに全人類とグラデウスは感謝をしてしかるべきである。
しかし心を静め落ち着いて考えてみると、少しこの婚約に納得が行った気がする。
年の差のある婚約に、使用人の制限。唯の口約束ではなく結婚する日まで婚約者を自分の屋敷に住ませることにした理由。
女嫌いであるからこそ適齢の令嬢に迫られないように、幼い婚約者という隠れ蓑を用意した。そしてそのことに気が付いた妹は、僕が身代わりになってもお飾りの婚約であれば絶対に入れ替わりがバレないだろうという確信を持ち、長年の夢であった騎士になるために僕の代わりに騎士学校へ行くことを思いついたのだ。
妹にもグラデウスにも利用された僕哀れ過ぎない?というか女嫌いということは男の僕はどうなるんだ、まさか貞操の危機じゃないだろうな。
彼がショタ趣味でないことを祈るばかりだ。
「坊ちゃま、これから私たちどうすればいいのでしょう、グラデウス様のあの態度、何か理由がおありなのは分かりますが、この仕打ちはあんまりではありませんか。坊ちゃまが帰りたいと思うのでしたら。私たちは荷物を纏める準備は出来ておりますよ。」
「そうですって。長い間人形の様に過ごせってことでしょう?あんな奴の為に坊ちゃんの貴重な時間をくれてやる必要は無いですよ。」
さっさと帰ろうと提案してくる二人を宥めつつ僕は考える。今更実家に帰ったところで両親に事の顛末は話せるわけが無いし。(両親は遠出をしていた為このことは知らない)騎士学校に行ってしまった妹を説得するため追いかけるのも、家に連れ帰るのも骨が折れる。勢いの付いた妹は猛獣だ。多大なる犠牲を払い、両親を宥め、妹に負けたという事実と向き合うのは正直な所とてもしんどい。実家に帰ったところで使用人たちからは気の毒そうに迎えられるだけなのであれば、ここで同情を買っているのと何も変わらないのでは無いだろうか。
何処にも行き場が無いのであれば、ここで一から信頼を築いていくしかない。彼の女嫌いの理由を知り少しでも歩み寄って貰わなければ、将来的に困るのはシャシュカの方だ。無事学校を卒業したとして、彼女が王族の騎士になれるかと言えば凄く難しいと思う。
国の騎士団の訓練は凄く厳しいと聞く、シャシュカも確かに強いがそれは女性としてはということだ。これは決して差別とかではなく。男女の生まれ持った差という意味でである、そして女性らしさが出てきてしまえば今の様に入れ替わってなど居られない、僕だって今は貧弱だけど、成人までにはムキムキマッチョを目指す予定だ、そうしたらもう女装は無理なのだから。無事再び入れ替わり大団円を迎える為にも僕はこの屋敷で、自分が出来ることを見つけようと思うのだ。
申し訳ないけれど、おとなしい令嬢なんてやってられないので、彼の言う通り自分の好きにやらせて貰うけど。
僕はハハハと笑う。これしきの事で嘆くと思ったら大間違いだ。
誇り高い騎士の血筋の僕を舐めた発言、いつかあの美丈夫に謝らせてやらないとね。
0
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる