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泥棒猫参上 ⑥
しおりを挟むはぁはぁ、息を乱しながら僕は飛び起きた。
なんだあの夢!妙にリアルだったし、昨日の浮気相手は出て来たし、最悪だ。冷や汗が止まらない。
あれは唯の夢だと自分に言い聞かせてみるけれど、未だに胸のドキドキは収まらなかった。
奪うってなんだよ。
僕にそんなこと出来るわけが無い、気が小さくて臆病で、妹に比べたらなんの才能もない、少しだけ早く生まれただけの兄なのに。
ベッドに倒れ込むと、自分の無力さに吐き気がした。
もし、グラデウスがあの桃色巻き毛と恋仲だったら、決闘してでも別れさせて、妹の為に取り戻したい、もちろん本心から思っている。けれど恐らく相手は王宮付きの魔術師で、魔力を使いこなすことが出来ない僕には逆立ちしたって勝てやしないのだ。
そういえばグラデウスは女が嫌いって言っていた。それは本当は男が好きって意味で、もしかしたら、王宮にいる時からずっとあいつと付き合っていたのだろうか。
だとしたら、二人を引き離したのは僕ということになってしまう。
偽りの婚約者のみでなく、男色家の隠れ蓑にまでなりたくない。何処まで僕は言いように使われ無ければいけないんだ。
コンコンとノックの音がして、ドアからステラが顔を出す。
「坊ちゃま魘されておりましたよ。何処か具合でも悪いのですか?」
ステラは昨夜の出来事を何も聞かされていない、あのことを知ってるのは屋敷でも数人のみだ。辛い悔しいってステラに縋りたいけれど、唯でさえ彼女には心配を掛けている身だそんなこと出来る筈もない。
そしてこういう時に限って、ハンスはいないし、あいつサンドバック役回避しやがったな。あの護衛の勘の良さは半端が無い。
「朝ごはんは如何なさいますか?」
「身体は大丈夫だから食べに行くよ。」
朝ごはんと聞いただけでお腹が空いて来た、気持ちとは裏腹になんて正直な体だろう、これも気規則正しい生活の賜物に違いない。
朝ごはんを食べる為に、動きやすいフリルの少ないドレスに着替える。
なんか気が重いなぁと考えながら扉を開けて貰えば、中にはすでにグラデウスがいていつもの席に座り、のんびりと朝一の紅茶を飲んでいた。
お前どの面下げて!と一気に怒りのボルテージが上がりそうになったが。グラデウスがなんでもない顔をして「おはようシャシュカ」と挨拶してきたので。
「おはようございます。早いお帰りですね。」
嫌みたっぷりに返してやったが、グラデウスの表情は相変わらず涼しいままだった。
仕方が無いので僕も席に付き、シェフの作った美味しいご飯を頂くことにする。焼き立てのパンに、オムレツ、野菜の沢山入ったスープ、シンプルだけど美味しいいつものご飯だ。
すでに一突きはこの屋敷にいるので、この土地の味にも慣れてきた気がする。僕の所は濃い味の料理が多いけれど、ここの領地は薄味で、素材のうま味を引き出すような味付けが多い。
これも土地柄だなって思う。まぁ僕はどちらも好きだけど、食いしん坊には美味ければよしって感じ。
食事中は話をしないことになっているので、ゆっくりご飯を食べながらグラデウスを観察する。
疲れても居ないし、呪いが悪化している様子もない。むしろとても調子が良さそうで、昨夜はとても良い夜だったんですねー。と舌打ちの一つもしてやりたくなる。
浮気したのはあっちなのに、なんで僕ばかりがこんなに怒ったり悩まないといけないんだろ。
理不尽!
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