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魔術師のお弟子さん
しおりを挟む塔を降りて教会の扉まで戻ろうとすれば、ドアの前に誰かが立っていた。
長いブロンドの髪を風に靡かせ、紺色のローブを羽織った青年は間違いなく屋敷にいる筈のグラデウスだった。
「あらあら、グラデウスどうしたの?あたしの事が恋しくなっちゃった?」
ズカズカとジャノメは、楽し気にグラデウスに近寄ると、彼の頬に手を当て耳元で何かを囁いた、しかしジャノメが悪戯な笑みを浮かべ、唇が更に近づくと、グラデウスは後ろに下がり態と距離を取った。
「もう、昼だからな。婚約者を迎えに来た。」
「やだぁ、もう、イケずなんだから。まぁいいわ。今日は帰してあげる。美味しいご飯も貰ったしね。これで借りはチャラでいいわよ。じゃぁねぇシャシュカ、グラデウス、良い子でお家に帰るのよ。」
手を振りジャノメは教会の中に帰ってゆく。僕と言えば何故グラデウスが、迎えに来たのかが分からず混乱するばかりだ。
困った挙句に僕はこういった。
「グラデウス様、しっかりお昼はお召し上がりになりましたか?」
「……食べたな」
食べてないなこれ。
「ご飯を抜くのは感心しませんわ。」
「食べてはいる、サラダではあるが。」
「それは食べたとは言いません。思春期のお嬢様では無いのですから、しっかり食べて下さいませ。」
僕がそう注意すると、グラデウス様は秀麗な眉を下げ。
「一人では味がしないからな。」
と呟いた。
あれ、もしかして一人にさせちゃったから寂しかったのかな。この人は時折子供っぽくなるって分かって来たけど、これはかなり可愛い。
「では、屋敷に帰ったらグラデウス様はご飯を食べて下さい。その間わたくしはジャノメ様とのお話を致します。」
そういえばグラデウスはふんわりと笑ってくれた
馬車に乗り込み二人並んで座ると、大きなグラデウスの手が僕の手を包むように握ってくる。
「お前の手はいつも暖かいな。」
「そうでしょうか。」
僕は首を傾げる。子供体温だからかな。
「ああ、安心する温度だ。」
嬉しそうなグラデウスはとても綺麗で、僕の頬は赤くなる。もうこれだから色男は!すぐに惑わしてくる!
僕は首を振って、自身を落ち着かせ、グラデウスに相談を持ち掛けた。
「あの、明日から午前中は教会に来てほしいと、ジャノメ様に言われているのですが。」
「先ほど聞いた。弟子になるという件だろう?俺は反対などしない、君の好きにすればいい。」
「それは、わたくしのすることに興味が無いということですか?」
あまりにあっさりとした物言いをグラデウスがするので、僕がむっとして言い返せば、彼は驚いたように目を見張り。
済まない、無神経だったな。と慌てて謝って来た。
「俺は、君が強さを求めて止まない人物だということを、短い間の付き合いではあるが理解している。そんな君がアイツの弟子になりたいと思うのであれば、本気の覚悟があるのだろうということも、だから止めるのは無粋だと思ってしまっていた。」
しかし、君の意見も婚約者としてしっかり聞くべきだった。申し訳ない。
珍しく素直に目を見て謝って来たので、僕はふふふと笑って。
「やはり、グラデウス様は真面目な方ですわね。それにわたくしの事を理解しようとしてくれていた。それならば謝らなくても構いませんわ。でも、わたくしが求める強さは自分だけの為の物ではありません。グラデウス様も、使用人たちも、そしてわたくしの家族も守れるような、そんな強さを手に入れたいと思いまして、弟子になることを引き受けましたの。」
「そうか、君らしいな。ああみえて、ジャノメは素晴らしい魔術師だ、君はきっと思い描く自分を手に入れられるだろう。俺にはそれが眩しくて、羨ましくて。何故だろうか少しばかり嫉妬してしまうな。」
握られた手に力が籠る。この人は沢山の物を無くして、自分までも犠牲にしてここに来た。そんな優しく強い人。僕の隣では強がらなくていいんですよと、いつか胸を張って言えたらいい。彼が健康な体を取り戻し、いつか城に帰るとき、彼の役に立てたと心から喜べるそんな自分になれたらいいな。
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