女装令嬢奮闘記

小鳥 あめ

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魔術師のお弟子さん ②

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 「もう!これは一体どういうことですの!」


 物が散乱する部屋の一室で、僕はあらん限りの悲鳴を上げていた。 


 事の起こりは僕が朝の鍛錬を終え、朝食を取った後、グラデウスに「わたくし今日から魔術修行に行きますわ。」と告げた所から始まっていた気がする。


 グラデウスはフォークを置き、口元をナプキンで丁寧に拭いてから「ジャノメの所に行くのならば、食料を持っておいた方が良い。あと、服装も動きやすいドレスが望ましいな。朝来ている物でいいだろう、アイツは他人の服装には無頓着だから、特に咎める事も無い。もし、教本などを買うのであれば後で俺が金を出そう。」と一気に告げた。


 普段の寡黙さが嘘の様な、流暢さでさすがの僕も口を挟む暇が無かった。友人の事は即ご存じであられる。いや?別になんとも思ってませんけど。


 シェフから焼き立てのパンと、籠の入ったとれたて新鮮な野菜、それと調味料まで貰って僕は教会へと出かけることになった。


 あれ、僕何しに行くんだっけ?


 庭師のアルからは、教会に飾れよと言われて花まで貰ったが、なんだか修行に行くんじゃなくて、お使いと言うか差し入れしに行くだけのお仕事みたいになっている様な。


 町の傍までは馬車で行くので、ハンスに荷物を持ってもらい屋敷を出ようとすると、何故かグラデウスが見送りに来ていた。


 あれ、いつもは忙しいからと書斎を出たがらないのに珍しい。そういえば昨日、ハンスさんが秘密ですよと言って「ご主人様は、お嬢様がピクニックに行くと突然屋敷を出た時とても驚いて、私が帰って来た時なんて、シャシュカは何処の山に行ったんだ?と何度も聞いて来たんですよ。」


こっそり教えてくれたっけ、目には目をじゃないけれど、反省を促すには同じ思いをさせてやるのはかなり効果ががるようだ。


 使用人と屋敷の主人が見守る中、僕は教会へと出かけた。


 はずだったのだが、約束の時間に教会に行っても扉は開いて居たが誰も居らず。懺悔室には鍵が掛かっており、僕はすでに困り果てていた。


 ジャノメの行動パターンを知っているのはグラデウスだけなので、何処にいるのかを聞きに屋敷に戻っても良いんだけど何だか悔しいな。


 そう思って、教会の祭壇の前で唸っていると、教会の周りを見回っていたハンスが「お嬢外にも、魔術師さんはいませんでしたよ。」といって、
「しょうがないのでこれ使いましょう。」懐から鍵の様な物を取り出した。


「もし、ジャノメが教会に居なかったら家に行ってみろと、グラデウス様が言ってたんです。」


 なんですと!


 ってか、何故それを僕に言わないんだグラデウスよ。


「だって坊ちゃん、時間守れない人間大嫌いじゃないですか、グラデウス様はもしかしたら師匠の自覚があるジャノメは、時間道理来るかもしれない、でも寝坊もあり得るから万が一にって、俺に渡したんですよ。だって態々初日から師匠の印象を最悪にする必要ないですし。」


 確かに、そういわれると弱い。


 僕遅刻する奴駄目なんだよなぁ、でも何となくあの師匠なら遅刻しそう、うん、もうそこに期待は掛けないでおこう。


 魔術さえ教えてくれたら我慢するぞ!


 と、思っていた時期も僕にはありましたが、正直これは無いと思うんだよね。


 教会から少し離れた所に建てられた、平屋の質素な家。名の知れた魔術師が住むには小さすぎる家の扉を叩き、起きないことにため息を付いて、グラデウスから借りた鍵でドアを恐る恐る開けてみると。


 床一面に散らばる服、散らかしたパンくず。洗われていない食器に、積み上げられすぎて雪崩になった本の山。


 そこはまさにごみ屋敷であった。



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