28 / 50
魔術師のお弟子さん ②
しおりを挟む「もう!これは一体どういうことですの!」
物が散乱する部屋の一室で、僕はあらん限りの悲鳴を上げていた。
事の起こりは僕が朝の鍛錬を終え、朝食を取った後、グラデウスに「わたくし今日から魔術修行に行きますわ。」と告げた所から始まっていた気がする。
グラデウスはフォークを置き、口元をナプキンで丁寧に拭いてから「ジャノメの所に行くのならば、食料を持っておいた方が良い。あと、服装も動きやすいドレスが望ましいな。朝来ている物でいいだろう、アイツは他人の服装には無頓着だから、特に咎める事も無い。もし、教本などを買うのであれば後で俺が金を出そう。」と一気に告げた。
普段の寡黙さが嘘の様な、流暢さでさすがの僕も口を挟む暇が無かった。友人の事は即ご存じであられる。いや?別になんとも思ってませんけど。
シェフから焼き立てのパンと、籠の入ったとれたて新鮮な野菜、それと調味料まで貰って僕は教会へと出かけることになった。
あれ、僕何しに行くんだっけ?
庭師のアルからは、教会に飾れよと言われて花まで貰ったが、なんだか修行に行くんじゃなくて、お使いと言うか差し入れしに行くだけのお仕事みたいになっている様な。
町の傍までは馬車で行くので、ハンスに荷物を持ってもらい屋敷を出ようとすると、何故かグラデウスが見送りに来ていた。
あれ、いつもは忙しいからと書斎を出たがらないのに珍しい。そういえば昨日、ハンスさんが秘密ですよと言って「ご主人様は、お嬢様がピクニックに行くと突然屋敷を出た時とても驚いて、私が帰って来た時なんて、シャシュカは何処の山に行ったんだ?と何度も聞いて来たんですよ。」
こっそり教えてくれたっけ、目には目をじゃないけれど、反省を促すには同じ思いをさせてやるのはかなり効果ががるようだ。
使用人と屋敷の主人が見守る中、僕は教会へと出かけた。
はずだったのだが、約束の時間に教会に行っても扉は開いて居たが誰も居らず。懺悔室には鍵が掛かっており、僕はすでに困り果てていた。
ジャノメの行動パターンを知っているのはグラデウスだけなので、何処にいるのかを聞きに屋敷に戻っても良いんだけど何だか悔しいな。
そう思って、教会の祭壇の前で唸っていると、教会の周りを見回っていたハンスが「お嬢外にも、魔術師さんはいませんでしたよ。」といって、
「しょうがないのでこれ使いましょう。」懐から鍵の様な物を取り出した。
「もし、ジャノメが教会に居なかったら家に行ってみろと、グラデウス様が言ってたんです。」
なんですと!
ってか、何故それを僕に言わないんだグラデウスよ。
「だって坊ちゃん、時間守れない人間大嫌いじゃないですか、グラデウス様はもしかしたら師匠の自覚があるジャノメは、時間道理来るかもしれない、でも寝坊もあり得るから万が一にって、俺に渡したんですよ。だって態々初日から師匠の印象を最悪にする必要ないですし。」
確かに、そういわれると弱い。
僕遅刻する奴駄目なんだよなぁ、でも何となくあの師匠なら遅刻しそう、うん、もうそこに期待は掛けないでおこう。
魔術さえ教えてくれたら我慢するぞ!
と、思っていた時期も僕にはありましたが、正直これは無いと思うんだよね。
教会から少し離れた所に建てられた、平屋の質素な家。名の知れた魔術師が住むには小さすぎる家の扉を叩き、起きないことにため息を付いて、グラデウスから借りた鍵でドアを恐る恐る開けてみると。
床一面に散らばる服、散らかしたパンくず。洗われていない食器に、積み上げられすぎて雪崩になった本の山。
そこはまさにごみ屋敷であった。
0
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる