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本編 テレザとアドルフとステファン

15.ギャンブル仲間の家

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伯爵夫人の屋敷から追い出されたその日のうちに、アドルフはギャンブル仲間のロナルドの屋敷に向かった。実のところを言えば、彼の仕事や苗字など、アドルフは肝心なことを何も知らなかったが、王都で気安く家に泊めてくれそうな独身男はカジノで知り合ったロナルドぐらいしか知らなかった。

「あー、もう伯爵夫人の家から追い出されたのか?」

「いや、ちょっと奉仕がもう辛くなって、出てきたんだ」

「正直に言えよ。ババアに勃たなくなって追い出されたんだろ?」

「これでも頑張ったんだぜ」

「お前の大事なムスコ君、夫人に酷使されたんだな。ハハハハ!大丈夫か?」

「笑いごとじゃないぜ。・・・でもここで休暇とらせてもらったら、大丈夫さ」

「お前は本職の男娼じゃないんだから、無理ないよ。それにもう性欲ありふれて困る歳でもないしな」

「ああ、とにかくあの夫人のことはもう思い出したくないから、その話は止めてくれ」

ロベルトの屋敷でアドルフは何もしなくてよかったから、多少狭くても居心地は夫人の屋敷に比べ物にならなかった。それどころか、ロベルトは時々娼館やカジノにも連れていってくれた。だが、その日々も数ヶ月後にはまもなく終わろうとしていた。

「なぁ、アドルフ、お前このままでいいのか?一旗揚げたくないか?」

「そりゃあ、親父がいた頃のように羽振りよくしたいよ」

「そうだろう?俺だって気ままな独身って言ったって、いつまでも野郎と2人暮らしなんて御免だよ」

「何かいい話あるのか?」

ラムベルク男爵家の領地には銀鉱山がある。ロナルドはそれに目をつけて、二重帳簿で出荷を意図的に少なくして差分を裏取引で売ると言うのだ。売り先はあるのかとアドルフが心配すると、そのあてはあると言う話だった。

「そりゃいい案だが、実務は一切テレザと執事に任せているんだよ」

「これからお前が領地に帰って心を入れ替えましたってことにすればいいさ」

「それでテレザ達が信じたらちょっとチョロすぎないか?」

「まあ、鉱山の実務を任せてもらえるまで1年ぐらいかかるかもな。でもお前の家の財政は火の車だから、領地に帰って実務に専念するって割と信じてもらえるかもよ」

「それもそうかもな。やってみるよ。あー、でも領地にはいい女がいないんだよな」

「お前の奥さん、いい女だろ?」

「いや、もうババアだよ」

「ハハハ、酷い奴だな。お前だって十分ジジイなのに」

「失礼だな、俺はこれから男盛りさ。男と女は違うんだよ」

アドルフは、自分のことは棚に上げて妻のことをこき下ろし、自分の実態を把握できていないダメな夫の典型であった。
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