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20.誘拐未遂
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知らない道を突き進む馬車にゾフィーは恐怖を覚え、御者台との間にある窓を叩き、叫んだ。
「どういうことですか! この道は違うでしょう?!」
妊娠していなければ、最悪の場合馬車から飛び降りることも考えなくもなかったが、腹の子のことを考えるとそれはできなかった。その代わりにゾフィーは、御者に向かって叫び、窓を叩き続けた。御者はマントのフードをかぶっていて姿形がよくわからなかったが、いつものロプコヴィッツ侯爵家の御者ではないように見えた。
ゾフィーがパニックになっているのに気づいた御者は馬車を停め、素早く降りてドアを開け、転がり出ようとするゾフィーを抱きとめた。
「ゾフィー、落ち着いて。僕です、ヨナスです」
「なぜ貴方が?! うちの御者はどうしたの?」
「心配しないでください。彼には侯爵家のタウンハウスに帰ってもらいました。ここでは目立つので、詳しいことは目的地でお話します。貴女に危害は絶対に加えませんので、僕を信じてここは靜かに馬車に乗っていただけませんか? そうでないと貴女の身に危険があります」
ゾフィーはヨナスの真剣な表情を見て、信じるしか今は選択肢がないと思い、おとなしく馬車に乗り続けることにした。
教会から馬車に乗って2時間も経っただろうか、馬車は深い森の中に入り、まもなく蔦が絡まった小さな館の前で停まった。館の中は、長いこと誰も住んでいなかった様子だったが、手入れはされているようで、家具は古めかしかったものの、家の中は清潔が保たれていた。
ヨナスは客間らしき部屋にゾフィーを案内し、カモミールティーを淹れた。
「ゾフィー様、驚かせて申し訳ありません。ラムベルク男爵が教会で御者を入れ替えて貴女を誘拐させようとしていました。それを逆手にとってコーブルク公爵家は、貴女が誘拐されたと見せかけてここに匿うことにしました。結婚式まで後2週間、安全のためにここに閉じこもっていてください」
ゾフィーの頭の中は疑問でいっぱいになり、混乱した。
「ここは、コーブルク公爵家の秘密の別荘です。公爵家から信用のおける護衛と使用人もゾフィー様のために派遣されて来ています。医師も常駐させますので、ご安心ください」
「でもなぜ貴方がこんなことを?」
「実は、私が閨を教えるのは仮の姿で、本業はコーブルク公爵家の影なのです」
ラムベルク男爵アドルフと正妻の息子2人が、ロプコヴィッツ侯爵家の御者を偽者に入れ替えてゾフィーを誘拐し、腹の中の子ともども亡き者とする計画をコーブルク公爵家は掴んだのだ。それは、男娼を装って男爵家に出入りしているヨナスと、愛人として男爵を懐柔している公爵家の女性諜報員タニアの手柄だった。
それを聞いたゾフィーは、恐ろしい可能性に気付いて心臓に冷たい刃が突き付けられているような気がした。
「ラムベルク男爵家ってコーブルク公爵家の分家ですよね? それでは、ラルフ様にも危険がありませんか?!」
「実行犯は捕まえましたが、男爵家と繋がっている直接証拠はまだ見つかっていません。でも主犯の男爵を捕まえられるのも時間の問題でしょう。それまではラルフ様を私が護衛します。こう見えても私は剣の腕もたつのです」
それを聞いてほっとした自分の気持ちにゾフィーは気づいて戸惑った。
「結婚式までここにいろという話ですけど、結婚するかどうか、私はまだラルフ様に返事をしていないのです」
「ラルフ様のことを心配されてましたよね。それが答えかと思いますが」
ゾフィーは自分でも気付いていなかった気持ちを指摘され、戸惑いながら頬を赤らめた。
「どういうことですか! この道は違うでしょう?!」
妊娠していなければ、最悪の場合馬車から飛び降りることも考えなくもなかったが、腹の子のことを考えるとそれはできなかった。その代わりにゾフィーは、御者に向かって叫び、窓を叩き続けた。御者はマントのフードをかぶっていて姿形がよくわからなかったが、いつものロプコヴィッツ侯爵家の御者ではないように見えた。
ゾフィーがパニックになっているのに気づいた御者は馬車を停め、素早く降りてドアを開け、転がり出ようとするゾフィーを抱きとめた。
「ゾフィー、落ち着いて。僕です、ヨナスです」
「なぜ貴方が?! うちの御者はどうしたの?」
「心配しないでください。彼には侯爵家のタウンハウスに帰ってもらいました。ここでは目立つので、詳しいことは目的地でお話します。貴女に危害は絶対に加えませんので、僕を信じてここは靜かに馬車に乗っていただけませんか? そうでないと貴女の身に危険があります」
ゾフィーはヨナスの真剣な表情を見て、信じるしか今は選択肢がないと思い、おとなしく馬車に乗り続けることにした。
教会から馬車に乗って2時間も経っただろうか、馬車は深い森の中に入り、まもなく蔦が絡まった小さな館の前で停まった。館の中は、長いこと誰も住んでいなかった様子だったが、手入れはされているようで、家具は古めかしかったものの、家の中は清潔が保たれていた。
ヨナスは客間らしき部屋にゾフィーを案内し、カモミールティーを淹れた。
「ゾフィー様、驚かせて申し訳ありません。ラムベルク男爵が教会で御者を入れ替えて貴女を誘拐させようとしていました。それを逆手にとってコーブルク公爵家は、貴女が誘拐されたと見せかけてここに匿うことにしました。結婚式まで後2週間、安全のためにここに閉じこもっていてください」
ゾフィーの頭の中は疑問でいっぱいになり、混乱した。
「ここは、コーブルク公爵家の秘密の別荘です。公爵家から信用のおける護衛と使用人もゾフィー様のために派遣されて来ています。医師も常駐させますので、ご安心ください」
「でもなぜ貴方がこんなことを?」
「実は、私が閨を教えるのは仮の姿で、本業はコーブルク公爵家の影なのです」
ラムベルク男爵アドルフと正妻の息子2人が、ロプコヴィッツ侯爵家の御者を偽者に入れ替えてゾフィーを誘拐し、腹の中の子ともども亡き者とする計画をコーブルク公爵家は掴んだのだ。それは、男娼を装って男爵家に出入りしているヨナスと、愛人として男爵を懐柔している公爵家の女性諜報員タニアの手柄だった。
それを聞いたゾフィーは、恐ろしい可能性に気付いて心臓に冷たい刃が突き付けられているような気がした。
「ラムベルク男爵家ってコーブルク公爵家の分家ですよね? それでは、ラルフ様にも危険がありませんか?!」
「実行犯は捕まえましたが、男爵家と繋がっている直接証拠はまだ見つかっていません。でも主犯の男爵を捕まえられるのも時間の問題でしょう。それまではラルフ様を私が護衛します。こう見えても私は剣の腕もたつのです」
それを聞いてほっとした自分の気持ちにゾフィーは気づいて戸惑った。
「結婚式までここにいろという話ですけど、結婚するかどうか、私はまだラルフ様に返事をしていないのです」
「ラルフ様のことを心配されてましたよね。それが答えかと思いますが」
ゾフィーは自分でも気付いていなかった気持ちを指摘され、戸惑いながら頬を赤らめた。
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