あなたはずっと私の心の中にいる【R18】

田鶴

文字の大きさ
62 / 85

62.壊れた国王

しおりを挟む
ステファニーは、人物の寝室に運ばれてから1時間もしないうちに目が覚めた。

「・・・ん・・・?!」

「ステフィー!よかった!気付いたんだね!」

「・・・ここは?!」

「僕の寝室だよ」

ステファニーは、エドワードの寝室に寝かされていた。国王夫妻は、夫妻の寝室にそれぞれ繋がる自らの私室を持つ他、離れた場所にも各自の私室空間を持っている。ステファニーが寝かされているのは、後者だった。ステファニーはまだ気付いていなかったが、エドワードがステファニーに当てがおうとしていた2番目の部屋もその寝室のすぐ隣にあり、内扉で繋がっていた。

「どうしてですか?!私が国王陛下の寝室に入ることなど許されることではありません!」

「今は緊急事態だからいいんだよ」

「その緊急事態にさせたのは陛下ですよね?なぜこんな乱暴をさせたのですか?!」

「君が僕を置き去りにしようとしていたからだよ」

エドワードは、以前の澄みきった青い瞳と全く違う、どろりと濁った目でステファニーを見た。ステファニーは、自分の知らないエドワードの昏い目を見て怖くなった。

「へ、陛下を・・・お、お、置き去りなんて・・・おかしいです!私はあくまで『王妃の話し相手』として登城いたしました!」

「お願いだ!僕を独りにしないでくれ!君はやっと僕のそばに来てくれたのにもう僕を置き去りにしてしまうの?!君がいないと僕はもう生きていけない!」

エドワードは、寝台の上に乗ってステファニーに抱き着き泣き出した。そこには、ステファニーの知っている聡明なエドワードの姿はもうなかった。

「陛下、止めて下さい」

「お願いだ、エドって呼んで!怒っているの?君に危害を与えるつもりはなかったんだ。ごめんなさい・・・君が王宮を出て行く前にどうしても君と話したかったんだ」

「止めても無駄です。私は辞めます」

「お願いだ、ここにいてくれ。僕は君なしでは生きていけない!」

ステファニーはエドワードの腕の中から抜け出そうとしたが、彼はますます腕の力を強めてステファニーを逃さまいとした。

「へ、陛下っ!く、苦しいっ、です!」

「エドって呼んで?」

「エ、エドッ!く、苦しい!」

ようやくエドワードが腕の力を緩めたので、ステファニーはやっと一息つけた。それでもエドワードはステファニーを離すつもりはないようだった。

「陛下には王妃陛下がいらっしゃいます」

エドワードは腕の力をまた込めた。

「エ、エドッ!お、お願いっ!力を緩めて!」

「『陛下』って言ったらまた力を込めるよ?・・・ユージェニーは、王妃だけど、仕事上のパートナーというだけだ。僕の妻は君だけだ」

「私はへ・・・エドの妻ではありません。私は結婚していますし、子供も2人います」

「そんなことは僕達の愛の前ではどうにでもなるよ」

「いえ、エイダンは私の夫ですし、子供達はどうでもいい存在ではありません」

「その名前を言うのは止めて?また力を込めるよ」

どう言っても話が噛み合わないエドワードにステファニーは怖くなってきた。

「ごめんね、婚約破棄なんてしないで君を王宮に迎えればよかったんだ。父上や教会がうるさかったからそうするしかないと思ったけど、間違いだったよ。今からやり直そう?」

「無理です。もう婚約解消した時に私達の道は分かれたのです」

「では僕達の道をまた1つにしようじゃないか」

「一体どうやって?!無理なものは無理です!」

「それじゃあ無理でなくなったら、また僕と一緒になる気があるってこと?」

「ち、違・・・く、苦しいっ!離して!」

「ごめんね、君が愛おしすぎてついついぎゅうって抱きしめたくなっちゃうんだ」

エドワードに何を言っても、彼の都合のよいようにねじ曲がって答えが返ってきてステファニーはますます怖くなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

処理中です...