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第2章 傀儡の王太子妃
46.決意
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パトリツィアは半幽閉状態のルイトポルトと週1回の閨はおろか、顔を見る事すらしばらくできていなかった。だが、その日はこっそりルイトポルトが秘密の通路を使って王太子夫妻の寝室に来るとアントンに言われ、ハラハラドキドキしながらルイトポルトを待っていた。王宮の秘密の通路の全貌も宰相ベネディクトが把握したかった事の1つだが、パトリツィアは知らぬ存ぜぬを通していた。
「兄様……解放してさしあげます。でもその前に思い出をもらうのを許して……」
パトリツィアは、愛するルイトポルトが王太子としての責任と自分への愛情に挟まれて悩んでいるのをこれ以上見ていられなかった。でも身を引く前に1度でもいいから身も心も彼の妻になりたい。結婚から2年、閨でパトリツィアは愛撫されているだけでいつも気を失い、ルイトポルトは宰相の手前、パトリツィアを最後まで抱いた体を装っているが、パトリツィアもアントンに言われてやっとそれに気付いた。
パトリツィアが物思いにふけっていると、隠し扉が開いてルイトポルトがやって来た。
「折り入って君に話があるんだ。ワインでも飲みながらって言いたいところだけど、真面目な話だから果実水でも飲みながら話そう」
ルイトポルトは、果実水の入った瓶とグラスをソファの前のテーブルに置き、寝台の上に座っていたパトリツィアをソファに招いた。ルイトポルトは酒に強いが、酔いやすいパトリツィアが話を聞く前に寝入ってしまうのを恐れ、酒を避けた。
ルイトポルトは果実水をグラスに注ぎ、彼女が一口目を飲んで一息つくのを待って口を開いた。
「君も君の父――宰相がしていることには気付いているだろう? 彼は父上に代わって叔父上を新しい傀儡の王にしようとしている。父上を殺したのも君の父だろう」
「え、まさか、そんな!?」
「父上も母上も長年、君の父の言うがまま、横暴を許し、放蕩の限りを尽くしてきた。僕はそれを是正しようと努力してきたので、彼は僕を国王にさせたくないようだ。このままでは我が国は困窮し、諸外国につけいられて攻め込まれるかもしれない。父上が亡き今、私が即位し、君の父を断罪する」
ルイトポルトはここまで一気に言って恐る恐るパトリツィアの反応を見た。ルイトポルトは知らないが、アントンにも予告された以上、パトリツィアはそれを覚悟していた。
「仕方ありません。父は欲をかき過ぎました。罪人の娘が王妃でいる訳にはいきませんから、離縁して下さいませ」
「君とは離縁しない。君の父上に情報が洩れるかもしれないのに、先にこの話をしたのは、君を信じているからだ」
「そんな訳には参りません。有力貴族も一般国民も納得しないでしょう」
「だから君を離宮に幽閉する。でも幽閉と言っても私はこっそり会いに来るから安心してくれ」
アントンはやはり独断でパトリツィアを逃がそうとしているのだとパトリツィアは気付いた。
「ルイ兄様が会いに来ているのが広まったら、兄様の立場が悪くなります。やっぱり離縁しましょう」
「離縁したら君はまたあの家の者になり、僕は君を守れなくなる。君の父はやり過ぎた。処刑する以外に宰相反対派を納得させられないだろう」
「それではラファエルはどうなるのですか?! あの子はまだ幼いんです。害になるはずありません」
「夫人とガブリエレ嬢は処刑まではされない。だがラファエルは嫡男だ。彼が宰相派の旗印になるのは避けたい」
「そ、そんな!」
「でもラファエルを助けられる方法はなくもない」
「本当に?」
パトリツィアはルイトポルトに向き合って懇願するように両手を合わせた。ルイトポルトはその手を自分の手で包み、じっとパトリツィアを見つめた。
「ああ。彼が去勢して神の道に入るのなら、有力貴族を何とか説得できるだろう。だから僕を信じてついてきて」
「きょ、去勢ですか?! そんな……亡くなった母にラファエルのことを頼まれたのに、身体にわざと傷をつけるようなことになったら天国の母に顔向けできません」
「顔向けできないようなことをしたのは君の父だ。僕だって赤ん坊の時から知っているラファエルを傷つけたくないのは山々だ。だけどこれ以外にラファエルの命が助かる見込みはない。これだって苦渋の選択なんだ。理解してくれ」
パトリツィアはルイトポルトからもアントンと同じ事を言われ、見るからに落胆し、憔悴した。
「兄様……解放してさしあげます。でもその前に思い出をもらうのを許して……」
パトリツィアは、愛するルイトポルトが王太子としての責任と自分への愛情に挟まれて悩んでいるのをこれ以上見ていられなかった。でも身を引く前に1度でもいいから身も心も彼の妻になりたい。結婚から2年、閨でパトリツィアは愛撫されているだけでいつも気を失い、ルイトポルトは宰相の手前、パトリツィアを最後まで抱いた体を装っているが、パトリツィアもアントンに言われてやっとそれに気付いた。
パトリツィアが物思いにふけっていると、隠し扉が開いてルイトポルトがやって来た。
「折り入って君に話があるんだ。ワインでも飲みながらって言いたいところだけど、真面目な話だから果実水でも飲みながら話そう」
ルイトポルトは、果実水の入った瓶とグラスをソファの前のテーブルに置き、寝台の上に座っていたパトリツィアをソファに招いた。ルイトポルトは酒に強いが、酔いやすいパトリツィアが話を聞く前に寝入ってしまうのを恐れ、酒を避けた。
ルイトポルトは果実水をグラスに注ぎ、彼女が一口目を飲んで一息つくのを待って口を開いた。
「君も君の父――宰相がしていることには気付いているだろう? 彼は父上に代わって叔父上を新しい傀儡の王にしようとしている。父上を殺したのも君の父だろう」
「え、まさか、そんな!?」
「父上も母上も長年、君の父の言うがまま、横暴を許し、放蕩の限りを尽くしてきた。僕はそれを是正しようと努力してきたので、彼は僕を国王にさせたくないようだ。このままでは我が国は困窮し、諸外国につけいられて攻め込まれるかもしれない。父上が亡き今、私が即位し、君の父を断罪する」
ルイトポルトはここまで一気に言って恐る恐るパトリツィアの反応を見た。ルイトポルトは知らないが、アントンにも予告された以上、パトリツィアはそれを覚悟していた。
「仕方ありません。父は欲をかき過ぎました。罪人の娘が王妃でいる訳にはいきませんから、離縁して下さいませ」
「君とは離縁しない。君の父上に情報が洩れるかもしれないのに、先にこの話をしたのは、君を信じているからだ」
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「だから君を離宮に幽閉する。でも幽閉と言っても私はこっそり会いに来るから安心してくれ」
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「ルイ兄様が会いに来ているのが広まったら、兄様の立場が悪くなります。やっぱり離縁しましょう」
「離縁したら君はまたあの家の者になり、僕は君を守れなくなる。君の父はやり過ぎた。処刑する以外に宰相反対派を納得させられないだろう」
「それではラファエルはどうなるのですか?! あの子はまだ幼いんです。害になるはずありません」
「夫人とガブリエレ嬢は処刑まではされない。だがラファエルは嫡男だ。彼が宰相派の旗印になるのは避けたい」
「そ、そんな!」
「でもラファエルを助けられる方法はなくもない」
「本当に?」
パトリツィアはルイトポルトに向き合って懇願するように両手を合わせた。ルイトポルトはその手を自分の手で包み、じっとパトリツィアを見つめた。
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「きょ、去勢ですか?! そんな……亡くなった母にラファエルのことを頼まれたのに、身体にわざと傷をつけるようなことになったら天国の母に顔向けできません」
「顔向けできないようなことをしたのは君の父だ。僕だって赤ん坊の時から知っているラファエルを傷つけたくないのは山々だ。だけどこれ以外にラファエルの命が助かる見込みはない。これだって苦渋の選択なんだ。理解してくれ」
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