鳩でメイドなギルド受付嬢がアレな件

田鶴

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第1章 ギルド受付嬢はキューピッド

第1話 ギルド受付嬢は看板鳩

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「ポッポッポー」

 わたしは鳩でメイドなギルド受付嬢タオベちゃん。

 この街の冒険ギルドの看板鳩、じゃなくて看板娘なの。

 月光のようにキラキラ光る銀髪に緑色のメッシュが入っていて『とっても綺麗』っていつも褒められる。

 んん? ちょっと、そこのアナタ! 今なんて言った?! ドブネズミ色なんてあたくしの辞書にはありませんことよ!

 オッホン、とにかく銀髪の鳩の頭にボンキュッボンなワガママボディで殿方の目をいつも釘付けにしてますのよ!

 でもそれだけじゃないんざます。あたくしは、毎日、ギルドで色々な人達を観察してるざます。

「人達」って言っても、この世界には鳥や爬虫類も入れた獣人族とホモサピエンスの人族もいて、本当にいろんな姿形してるんざます。

 今日の見世物、もといお客さんは、ハムスター獣人男性ハムくんとゴリラ獣人女性の綺羅綺羅きらきら瑚莉ごり走死走愛そうしそうあいちゃん。

 彼女はフルネームで呼ばれると、キングコ〇グ級に暴れるので、わたしもみんなも綺羅綺羅ちゃんって呼んでる。いったいどんな頭してたらこんな名前をつける親がいるんだか。顔を見てみたいわね。

 ハムくんは、ギルドに入って来るなり、手鏡で自分の顔をあれでもか、これでもかってチェックしながら髪の毛を梳かしている。チェックが終わったら、いつもみたいに耳を真っ赤にしてわたしのところへ来るはずよ。

 でも彼ったら、私の言葉をいつまで経っても理解できないの。『ポッポッポ』と『クックック』から派生するバリエーションしかないのに。

 ああ、ほらほら、来たわよ。後ろからドスドスとゴリラな綺羅綺羅ちゃんもついてきている。

「おい、ついてくるな、このメスゴリラ!」

「で、でも……クエストにはわたしが必要でしょ?」

「そんなわけないだろ! 俺はおとこだ!」

 ハムくんはふんぞり返って綺羅綺羅ちゃんに怒鳴った。でもハムスターだから全然怖くない。むしろかわいいわ。

 でも綺羅綺羅ちゃんがでっかい身体をかがめてしゅんとしちゃってかわいそう。

 その隙にハムくんは、わたしに言い寄ってきた。ぴょんぴょん跳ねてなんとかカウンター越しにわたしの顔を見ようとして必死でなんだかかわいい。

「よ、よう、タオベちゃん、今日もかわいいね」

「ポッポッポ」

 もちろんよ! この美貌を見て!

 ハムくんは、ちっちゃなおててをすり合わせて上目遣いでわたしを見つめた。

 くっ! かわいい! 略して『くっかわ』!

 でも命のほうが大事! やめて、やめてぇ!

 綺羅綺羅ちゃんが後ろからわたしを殺しそうな勢いで睨んでる! ハムくんだって一応冒険者を名乗ってるのに、あの殺気に気が付かないの?!

「おっかしいなぁ。どうして俺のイケメンパワーが効かないんだろ」

「クックックー」

 ハムくんにイケメンパワーなんてないわよ。くっかわパワーならあるけどね。

 ハムくんはカウンターの上によじ登ってわたしの手を握った。そうは言っても、彼は小さいからわたしの手の上にちっちゃい手をのせてるだけだけど、綺羅綺羅ちゃんがわたしを刺殺しそうな視線で睨んでる!

 ひぃぃぃ、怖いぃぃ~

「ポポポポー!」

 やめて! わたし、まだ死にたくない!

「俺みたいなイケメンがフリーなのが奇跡じゃない? 急がないと後悔するよ」

 ハムくんは、バチンとつぶらな瞳でウィンクしてきた。

「ククククー!」

 後悔しません! ゴリラにひねりつぶされたくないもん!

「まぁ、いいや。明日また頑張るよ」

「クックック!」

 頑張らなくていい!

「ねえ、どうしてクックックとかポッポッポしか言わないの? 俺のこと、もしかして避けてる?」

「ポッポッポー!」

 大当たりー! わたしだって命が惜しいのよ!

「はぁ……明日になれば、ちゃんと人語話してくれるかな?」

「クックック!」

 失礼ね! 私は鳩な人語を話してるわよ! その証拠にヘンタイなギルド長だって綺羅綺羅ちゃんだってわたしの言うことを理解してるわよ!

「分かった。今日はタオベちゃんを諦める。その代わり、俺にぴったりなクエストない?」

「クククックックー」

 難しいわね。だってハムスターよ? わたしもちっちゃいけど、ハムくんはもっとちっちゃくて非力。

 でもマッスルトレーニングしてるっていつも言っていて、ありもしない腕の力こぶを見せようとするの。そんなことしても、腕相撲でわたしにすら勝ったことないんだけどね。

 言っとくけど、わたしの好みは強引でワイルドなたくましいイケメン野獣よ! わたしよりおチビちゃんや、ヒョロガリ男、ビヤ樽みたいなお腹のチビデブには用はありません!

 ああ、素敵な野獣イケメンがわたしに猛アタックしてきて……ダメ、イケナイわ、こんなところで押し倒すなんて……ああん……

「ポポポポ。クックック? クククク……」

 ダメよ、ここギルドなのよ。え、それでも我慢できないって? うふん、私もよ……

「タオベちゃん、聞いてる?」

 一瞬、妄想で気が遠くなってしまった。イケナイ、イケナイ、勤務中だった。

 目の前にいるのは、野獣イケメンじゃなくて、相変わらずちっちゃなハムくんだった。

「ねえ、俺にぴったりなクエストちょうだい」

「ブワハハッハッハ!」

 ラクダ獣人のラクさんが臭いつばを飛ばしながら、大笑いした。

 しまった! つば防止用のマスクとゴーグルをしてなかった!

「あるわけないだろ。ゴリラの助けがなきゃ、オマエはお掃除クエストぐらいしかやれないだろ。それだって窓ふきは無理……ウワーッ!」

 ラクさんがゴリラ、じゃなかった綺羅綺羅ちゃんにぶっ飛ばされて臭いつばをまき散らしながら壁に激突した。

 まずい、ラクさんのつばを早く拭き取らないとギルドの受付じゅうが臭くなる!

「クククク! クククク!」

「……心配ありがとう。俺なら大丈夫だよ」

 わたしが慌ててバケツと雑巾を持ってラクさんのところに駆けつけたら、ラクさんがよだれを手で拭いながらバチンとウィンクしてわたしに手を伸ばした。

「クククー、ポポポッポ~」

 ぎょえー、よだれ付きの手で触らないでぇ~

 もうどうしようもないから、バケツの水をラクさんの頭からぶっかけて雑巾を頭の上にのせた。

「うわー、タオベちゃん、何すんだよ! ひどい!」

 ラクさんは、おめめばっちりでまつ毛がバチバチな男性なんだけど、話すときに必ず臭いつばを飛ばすから迷惑してるの。だから彼と話すときはいつもマスクとゴーグルをしてるんだけど、今回は不意打ちだった。

 せっかくのかわいいメイド服も台無し! でも幸いなことにメイド服本体は無事だった。

 え? 表紙絵の鳩は裸エプロンだって?! それは作者の技量不足でわたしはちゃんとメイド服を着ているのよ!

 オッホン、とにかくわたしは、ラクさんのつばがついたエプロンを着替えて気を取り直して受付に戻った。

「今日もあのクエストある?」

 ハムくんがラクさんと口喧嘩している隙に、綺羅綺羅ちゃんがでっかい身体をかがめて耳打ちしてきた。
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