吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

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「あ痛てて、んーやっぱソファで一晩寝るのは良くないな」

バキボキと小気味良い音を鳴らしながら伸びをする。現在時刻は午前7時過ぎ。普段ならこんな時間に目が覚める事はないんだが、慣れない場所で睡眠をとったせいか眠りが浅かったようだ。

「腹……減ったな……」

何か腹に入れようと台所に足を向ける、がやめた。璃亜の方針でうちのキッチンにはインスタントの類は無い。冷蔵庫を漁れば幾らか食材はあるだろうが、料理スキルが自他共に認める程壊滅的な俺が何かつくろうとすれば、ご近所さんを巻き込んでの異臭騒ぎになりかねない。

というわけで。

「璃亜ー、腹減ったー朝飯つくっ――――ッ!?」

ズバーン!! と、寝室の扉を遠慮無く開く。

そこで、俺の目に飛び込んできた景色は…………肌色一色だった。

「へ? あれ? 探偵さん、って、あれー!?」(中)

「あ、アンタはッ! 性懲りも無く……ッ!」(貧)

「あの……えと……ふぇ!?」(小)

「所長、おはようございます。……ですが、女性の寝室をノックも無しに開けるのは関心しませんね(大)

あー、これはまた何ともベタな。

……つーか、何で全員そうタイミング悪く(ある意味良く?)絶賛下着姿な訳? あと璃亜、いくら一番付き合いが長いからって対応に余裕がありすぎだろ、着替え覗かれた女の子の反応がそれでいいのか。……いや、別に怒られたい訳じゃないけどさ。ちなみに、一番大きいのは璃亜だった。何が、とは言わないけど。

「あー、すまん。普段そっちで寝てるし、起きるのも俺が一番遅かったもんだからお前らの着替えタイムに直撃するなんて考えてなかったわ」

「な・ん・でッ!! 女の子四人の着替えタイムに突撃しといてそんな平然としてんのよッ!!」

氷柱が顔を朱に染めながら、野球ボールサイズの氷弾をポンポン飛ばしてきた。

うおっ! 危ねっ!! 思いっきり頭かすめていきやがった!? ようし、そっちがその気なら、この喧嘩買ってやる! ――――とは言え俺も大人だ、大人には大人のやり方というものがあるってことを教えてやるぜ!

「わー! わかったわかった! 私、天柳相一は氷柱サンの発展途上国ボディに浅ましくも欲情してしまいましたァ!!

数秒間の沈黙があり、そして。

「ば、バぶァ!? ばっ、アンタっ、よよよ欲じょ、って、へ? ええええぇぇ!?」

はっはっはー! 氷柱の奴め見事に取り乱しておるわ。

「所長、朝食をご用意しますから少し待ってて下さい。……あと、氷柱さんをからかうのも程々にしてあげてくださいね」

ふん、それはあいつの態度次第だな! 

「あのー、探偵さん? 悪い事言わないから素直に謝ったほうがいいんじゃないかなーと、私は思うんですけど」

「私も……そう、思い……ます」

二人の言う事が気になったわけではないが、氷柱に意識を向けてみる。

そこには、

「ふ、うふふ。ふへ、へへへ、うふふふ」

虚ろな目をした雪女が。これは、ちょっとやりすぎたかな。今のこいつの耳に届くかわからんが一応謝っておこう。

「あーそのなんだ、悪かった。うん」

「…………が、…………だって?」

「へ?」

「アタシのどこが、発展途上だってぇぇええええええええ!?」

ピキピキパッキーン! と、寝室が一瞬で巨大な冷凍庫と化す。一足先に避難を終えていた詩織と千里が自業自得だ、と言いたげな顔でこちら見ながら、

「じゃあ、私達こっちにいるんで朝食の用意ができたら呼びますねー」

ああ、扉一枚隔てた向こうが天国に見える。

「あー、温かいコーヒーも淹れといて、と璃亜に伝えておいてください」

「了解しました。…………それでは探偵さん、グッドラック!」

パタン、と俺の希望を断つように寝室の扉が閉められた。

詩織ちゃんよ、ビシッと敬礼かましてくれるのいいんだが、左手の敬礼って死者にやるもんだとか聞いた事あるんだけど、……わざとじゃないよね?

「さあ相一、今日という今日は覚悟しなさいよね」

「はは、……お手柔らかにお願いします」

直後、キッチンにいる璃亜にまで聞こえるような愉快な悲鳴が響き渡った。
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