吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

文字の大きさ
23 / 72

平穏は静かに崩れ去る

しおりを挟む


時刻は午後4時。街のどこかで中原詩織がガラの悪い少年達に絡まれている時、落ちかけた夕日は街を赤く照らしていた。

「ただいまー」

買い出しに出ていた三人が事務所に帰ってきた。相一の両手は先ほど買ってきた、かき氷のシロップや日用品で塞がっているため氷柱に扉を開けてもらう。

「いやぁー、この時間でもまだまだあっついわねー。早く冬にならないかしら」

「……ただいまです」

三人の帰宅に、台所から璃亜が顔を出す。

「買い出しご苦労様です。祭の前に軽く食べられる物をと思い、素麺を用意しておきましたがすぐ食べられますか?」

「おっ、さんきゅー璃亜。丁度腹も減ってきたところだったし、ありがたくいただくよ」

秘書の気遣いに感謝しながら早めの夕食をとる一同。夏バテ一歩手前の身体にひんやりとした素麺が気持ちいい。

「そういえば、詩織ちゃんはまだ戻ってきてないのか」

サイドテールが特徴の女子高生がこの場に居ないことに気がつく。

「さっき連絡がありましたよ。事務所に着くのが祭開始直前になるかもしれないと、謝っていました」

「そっか。じゃあこっちは先に準備だけでもしておこう」

相一が残った素麺を手早く飲み込むと席を立った。

「璃亜ー買ってきたやつだけど、どこに置いとけばいいんだ?」

言われた通り荷物を動かしながら、ここに居ない少女の事を考える。普段なら真っ先に集まってみんなを急かす彼女が約束の時間ギリギリになるとは珍しい。

「まあ、そのうち来るだろ」

思考を中断し作業に戻る。当の少女は現在、街の建物の屋上を飛ぶように駆ける男の小脇に抱えられているのだが、相一はそんな事を知る由もない。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

通行人の数が少ない通りにある背の高いにビルに挟まれた探偵事務所。その事務所の前に二人の人影がたっていた。

「う、うぷっ……。こ、ここが天柳探偵事務所です」

青い顔で口元を押さえているのは中原詩織、自称探偵助手の女子高生だ。そんな詩織の顔を少しばつが悪そうに覗きこんでいるのは銀月大牙、天柳探偵事務所を探していた所中原詩織と出会い丁度目的地が同じだったため案内してもらう事となった。

「おう、ご苦労さん。つか大丈夫か? そんなに速く走ったつもりはなかったんだが……」

中原詩織にとっては速さよりも高さの方が問題だったのだが、そこに気付く様子は無い。

「そういえば。えーと、銀月さん……でしたったけ? 今更ですけど、事務所に何の用ですか? 依頼の話でしたら今日はちょっと無理だと思いますけど……」

「依頼、か。そう言えないことも無いな。まぁ、時間は取らせねぇから心配すんな」

詩織の質問に含みのある言い方で返す銀月。その表情は獲物を見つけた肉食獣のそれに近い。

「そうなんですか? とりあえず中に入りましょう」

銀月の表情の変化には気づいていない詩織が事務所の扉に手をかけた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...