ギルドを追放された支援魔法士は悪魔※とギルドを創る

るちぇ。

文字の大きさ
23 / 23
第2章:一筋縄でいかないギルド創設の道

負けられない手続き

しおりを挟む
 遂にこの時がやってきた、気がしていたルーク。

 アイリスの借金を返済し、いざ、ギルド創設。

 申請用紙を記入していた時の出来事である

「なぁ、イブ」
「何ですか、ルーク」
「言わなくてもわかるだろ?」
「じゃあ聞かないで下さい。魅入られたら終わりですよ?」

 王国ギルドの酒場は賑わうのが普通。

 しかし、今に限ってあり得ない。

 静寂。

 布の擦れる音、ペンを走らせる音がよく聞こえてしまう程に。

「お前の力でどうにかならないか?」
「無理ですよ。私の美貌が通じる相手じゃないです」
「え、何の冗談だ?」
「ほほう、遺言は――っ!?」

 言いかけたイブリースの口を、プルートが咄嗟に塞ぐ。

「だ、駄目だよ、イブ! 忘れたの!? そんなこと言おうものなら、うぅ、どうなっちゃうか!」
「うぅ、うぅーーーっ!」
「何とか言ってよ! 思い出して! あの苦く辛い記憶を! たった1時間前のことじゃない!」
「う……う……う」

 次第にイブリースの抵抗が弱くなっていく。

 ついでに、目から生気が失われていく。

「おい、プル。なんか顔が青くなってきてないか?」
「え? あ、あぁっ!?」

 不運。鼻までしっかり塞がれたイブリース。

 プルートに介抱されつつ離脱する。

「おい、旦那様。早く書かないと危険だぞ」
「あ、あぁ、分かっている」

 アイリスの言う通りだ。

 この静けさは異常。

 その元凶から放たれるオーラは半端ではない。

 ルークはささっと必要事項を書き終え、後は最後の署名欄を残すのみ。

「あ、あああ、あの、早く書いてくれませんかねぇ!?」

 恐怖に耐えられなくなったらしい。

 受け付けの男が泣き付く。

「そのペン重いですか!? 筆ペン使います!? 血で書いても結構ですよぉっ!」
「ば、馬鹿――っ!」

 もう遅い。

 これを好機と元凶が――王女が詰め寄って来る。

「ルーク様、お手は大丈夫ですかっ!? すぐに入院を!」
「あぁ、軽いなぁ! 書きやすいなぁ! くっそう、どこの匠だ、こんな逸品を世に放ったのは!」
「なんと! 必ず見つけましょう!」
「匠の邪魔をするなぁぁぁっ!」

 ルークは深呼吸する。

 気持ちを落ち着かせ、今一度確認した。

「あの、王女様。この国にいるという条件で話は無しになったはずですよね?」
「えぇ、誠に遺憾ながら」
「では、どうしてこのような?」
「私はこの国の王女です。たまたまお会いしても不思議ではありませんよね?」

 それはその通りである。

 例え物陰に隠れて、隠し切れない存在感を放ち、熱い視線を送っていたのだとしても。

 ――変な人に魅入られたなぁ、俺も

 ルークは頭痛を覚えながら、最後の署名欄に名前を入れようとする。

「……あれ?」

 突如、突風が吹いて用紙は飛んで行った。

 窓でも開いていたのだろうか。

 否。犯人は涙目の憲兵たち。

 各々、大きな団扇を持って一心不乱に風を送っていた。

「俺たち何しているんだろうなぁっ!?」
「考えるな! 風になるんだっ!」
「違う、風を送るんだっ!」

 ――まさか!

 狙いに気付いたルーク。

 急いで駆け出した、その時。

「させますか――っ!」

 王女は俊敏な動きで追い抜き、

「――おっとぉっ、足が滑ったあぁぁぁっ!」

 ヒールの高い靴で踏みつけた。

 憐れ、用紙が大きく裂ける。

「な、なんてことを!?」
「はい? あら、これは失礼。たまたま足の下に」
「させますか! とか、おっとぉっ!? とか言ってませんでした!?」
「記憶に御座いませんが、申し訳なさで胸が締め付けられる思いがします。本当に申し訳ありません」

 ――もしかして、改心してくれたのか

 一瞬、ルークが油断する。

「せめてものお詫びの印として、とても良い話があるのですが」
「お断りしますっ!」

 油断した彼が馬鹿だった。

 それはともかくとして、こんなやり取りを続けること3日も経つ。

「ルーク様、新しいギルド創設の申請用紙をどうぞ」
「何か色々と書き込まれていませんか?」
「お手間かと思い、後は名前を書き込むだけにしてあります」
「人はそれを余計なお世話と言いますよ」

 まだまだ戦いは終わりそうにない。

 ――このままじゃ駄目だ

「あの、王女様。少し話をしませんか?」
「まぁ! このようなところでプロポーズだなんて!」
「違いますから! はぁ……まったくもう」

 これまでも話の通じにくい、もしくは通じない相手とやり合ってきたルーク。

 その中でも王女は別格。権力を笠にやりたい放題。

 しかし、避けては通れない相手である。

 ルークは気合を入れた。

「俺は自分のギルドを一から作りたいんです」
「はい、何度も聞きました。しかし不思議です。なぜ王国ギルドではいけないのでしょう?」

 なぜ、と聞かれるとルークは困る。

 魔族たちが仲間だからです、なんて言おうものなら極刑だ。

「さっきも言いましたが、王国ギルドとなれば多くの者を受け入れなくてはなりません。俺は気心の知れたメンバーだけでやっていきたいんです」
「しかし、ギルドメンバーの募集はしているのでしょう? 矛盾していませんか?」

 流石は王女か。

 あの面接の一件を把握しているらしい。

「あの時はメンバーが不足していましたから。今は大丈夫なので、その必要はありません」
「しかし今後の事を見据えれば――」

 憲兵が近付き、王女に耳打ちする。

 一瞬、王女は目を丸くすると、

「急用が出来てしまいました。でも、私は諦めませんからね、ルーク様!」

 急いでどこかへ行ってしまった。

 解放されたルークたちはホッと胸を撫で下ろした――のも束の間だった。
しおりを挟む
感想 15

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(15件)

リョウ
2018.09.08 リョウ

嵐が去ったと思ったら、また来るにかな?
ルークも大変な相手に見込まれたな

解除
リョウ
2018.09.02 リョウ

イブリースかアイリス辺りがキレそう

解除
リョウ
2018.08.29 リョウ

アイリス、巻き込まれてないよね?
超不幸体質考えたら有りそうだったので(笑

解除

あなたにおすすめの小説

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。