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第6章
143.暗闇の励まし
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「…………ごめん、ちょっと寝ぼけてたみたい。 なんだって?」
なんだか、エレナが突拍子もないことを言った気がする。
いや、突拍子もないのはいつものことか。けれども今回はまた一段と凄いことを言っていた気が。
まさか、ねぇ。 いくらなんでもこの歳でご挨拶に行くなんてねぇ。聞き間違いでしょう。
「あら、聞こえなかった? 仕方ないわねぇ……私たちの実家!行くわよ!!」
「…………」
やっぱり聞き間違いじゃなかった。
見事いい切った彼女は仁王立ちするように自信満々、円満具足だ。
暗い部屋の中で外からの光に映される彼女の瞳が、キラキラと輝いているように見える。
「いやいやいや……なんで俺が三人の家に行くの?」
ようやく言葉を飲み込めた俺は思わず肩をすくめた。
彼女らの田舎……それはつまり実家ということ。神鳥さんみたいな親"代わり"ではなく正真正銘親がいる場所。
どうしてという気持ちが頭の中を占める。せっかくの正月なのだから家族水入らずでゆっくり過ごせばいいのに。
「そりゃあ決まってるじゃない。お盆もクリスマスも帰らなかったもの。お正月くらいは顔を出さなきゃと思ってね」
「でもそれに俺が行く必要も無いよね!?」
「何言ってるの!!私たちを一人残らず落としたんだから親に挨拶は必須じゃない!!」
まさかとおもった。まさかちょっとした挨拶なだけで、そういう男女的な挨拶は別だろうと正直高を括っていた。
しかし小さな口から飛び出したのはまさしくそういった意味での挨拶。なかなかの爆弾発言に空いた口が塞がらない。
「でもまだ俺たちは付き合ってないよね!?」
なんとか意識を取り戻した俺は否定するように食い下がる。
そう、好き合ってはいるが付き合ってはいない。
ただの屁理屈だが親が云々はまだ早いだろう。
「まぁだそんなこと言ってるの? 単に早いか遅いかの違いじゃない」
「それは…………」
呆れたように告げるエレナに思わず言いよどむ。
それは……どうなのだろう。
一緒になるとしても誰と?どうやって?
色々と考えなきゃならない問題が山積みだ。モラルとか世間体とか彼女らの仕事とか。
「……とまぁ、冗談はここまでにしておいて、そんなに難しく考えなくっていいわ」
「冗談……?本当に……?」
まったくそうは聞こえなかったが。
クルリとその場で方向転換した彼女は軽い調子でキッチンまで足を進めてお湯を沸かしはじめる。
「そ、冗談。3割位ね」
「ほぼ本気じゃん!!」
7割なんて降水確率で考えたらほぼ確実じゃないか。
まだ俺は死にたくない。
「バレた? でも、慎也の不安はそこじゃないでしょう?私達アイドル三人も侍らせて……ってところじゃない?」
「……まぁ、そうだけど」
核心を突くエレナの言葉にドキリと心臓が高鳴る。。
相応しいのかどうか。以前も話題に出て、いまだ答えの出ていない大きな悩み。
前はエレナに発破をかけられたが、今回の彼女は優しげで、沸騰したお湯をティーパックの入ったコップに注いでいく。
「もともと私たちは普通の女の子なのよ。それがリオの差し金で今となってはこんなことになっちゃってるけど」
テキパキと灯りも付いていない部屋の中で紅茶を淹れていき、甘い仄かな香りが充満する。
紅茶の種類など詳しくないが、フルーティーな香りで少し心が癒やされる感覚があった。
「そこで、慎也にも実家に来てもらって、いかに私たちが相応しいとか考えるまでもない普通の女の子かってわかってもらうのよ」
「それは…………エレナたちの親御さんはいいの?水を差して」
「いいんじゃない? 逆に喜ぶと思うわ。『娘がようやく彼氏を連れてきた』って」
彼氏……彼氏ねぇ。
語弊がある気がしないでもないが間違っていると言われても少し違う、複雑な感じだ。
けれどこの悩みが解消できるとなれば行くのもアリかもしれない。
そんなことを考えていると、すぐ近くのテーブルにコトンとカップを置くエレナの姿があった。
「とりあえず考えておいてくれる? 今はゆっくり紅茶でも飲みましょう」
「…………うん」
カップを傾ける彼女に続いて俺も置かれたカップに口をつけると、その芳醇な香りと暖かさが身体の中を巡っていく。
これは……アップルティーだろうか。甘い香りの正体は林檎のようだ。暖房で部屋中温かいとはいえ、冬の身体をぬくもりで癒やしてくれる。
「コーヒーでもよかったけど眠れなくなっちゃうから。どう?美味しい?」
「……美味しいよ。ありがとう」
ただのパックから抽出したものだが、その心遣いが、優しさが、ただの紅茶をより一層美味しいものへと昇華させてくれているような気がした。
彼女は俺の言葉を微笑むだけに留め、今度は何を考えたのか冷蔵庫を大きく開け放ってガチャガチャと音を鳴らし始めた。
「エレナ……? 今度は何……?」
「えぇ、ちょっと待ってて。あくまで紅茶はおまけでこっちが本番なのよ…………っと」
彼女が取り出したのは銀のタッパ。
あれは……冷蔵庫を開けるたび目に入ったものだ。アルミホイルで包まれていて中身がわからなかったもの。
小分けされているのだろうか。そこから二つほど何かを取り出して残りを片付ける。
「はい。 ホントはこれを一番はじめに食べてもらおうと思ってここに一人来たのよ」
「ありがと…………プリン?」
手渡されたそれは小さな器に入ったプリンだった。
よくよく見れば表面部分が焦げて茶色になっている。これは……焼きプリンだろうか。
「そ、プレゼント交換前に作ってたもの。こんな時間に悪いと思ったんだけどね」
たしかにあの時間、エレナは何かしらしていた。
やたら甘い香りがするなと思っていたらこんなものを作っていたのか。
俺はポンポンとソファーの隣を叩く彼女に促されるまま移動し、手渡されたスプーンでプリンを一切れ掬い口に運んでいく。
「……どうかしら? 美味しい?」
「うん、美味しい、美味しいよ。 十分店でも出せるレベルかも」
「そう……よかったわ」
その不安な顔から一転、安堵したように胸を撫で下ろすエレナ。
実際、口にしたプリンは料理下手とは思えないくらい上手になっていた。甘みの抑えられたカラメル、ふわっと揺れるプリン。そのどれもがバランスよく、口にいれると卵の香りが口いっぱいに広がる。
「私も……ロクに料理の作れなかった私も今では焼きプリンを作れるようになったわ」
彼女は真っ暗な部屋の中、何も付いていないモニターを向きながら一人言葉を連ねる。
それは俺に言い聞かせるのか、はたまた自分に言い聞かせているのか。
「オムライスとスクランブルエッグは作り分けられるようになった?」
「そ……それはいいのよ食べられたんだから! とにかく!私がここまで上達したのは慎也のお陰だってこと!」
「…………俺?」
思わぬ言葉につい聞き返す。
俺が何かしただろうか。確かに上手になったほうがいいとかいうニュアンスのことは言ったり食べて評価したりしたことはあったが、感謝される覚えなど無い。
「えぇ。最初は何でも完璧なアイへの対抗心だったけど、それでも慎也に美味しいって言ってもらいたかったから。 だからね……」
一つ息を吐いて手が重なる。彼女はポスンと収まるように俺の膝の上へと倒れ込んだ。
「だから、何度だって言ってやるわ。私はどうしようもなく慎也が好きだってこと。 そうやって落ち込んでたり、不安になってたらいくらでも助けてあげるんだからね」
「エレナ……」
彼女は正面を向いていて表情は伺いしれない。
しかしその声色は優しく、目一杯俺を気にかけてくれていることがわかった。
「……それに、悪かったわね」
「悪いって何の話?」
「アイの話よ。最近かなりグイグイ来てキミも戸惑ってるんじゃない?」
「……そうだね」
唐突な謝罪に何かと思ったが、その真意を知り戸惑いながらも肯定する。
アイさんの最近のアタック。決して嫌な訳では無い。けれど人目をはばからないことだったり俺自身が相応しくないのではという思いから嬉しさより困惑が勝ってしまっている。
「あの子はずっと男の人に近づけなかったことはもちろん覚えてるわよね?」
「うん。男性恐怖症だよね?」
「えぇ。だからこそ、小学生の頃からずっと男の人と関わらなかったのに急に好きな人ができたものだから、距離感が掴めないのよ」
「……そうだね」
彼女の押しの強さ。その理由についてはある程度察しがついていた。
距離感。それが何よりも簡潔な答えだろう。エレナは彼女を案じるように言葉を続ける。
「だからあの子もどうすればいいか悩んでる最中だと思う。めげずに付き合ってくれると嬉しいわ」
「もちろん。……なんだかエレナは母親みたいだね」
「当然じゃない。なんねんあの子と一緒にいると思ってるの」
「家事は全然なのにね」
「それは言わない約束よ」
互いに空から落ちる真っ白な雪を見上げながらともに笑い合う。
同じ方向を向いて表情がわからない。真意は掴みきれない。けれどきっと、優しげな言葉、雰囲気からきっと悪いものじゃないだろう。俺は膝に倒れている彼女の、絹のような金髪をゆっくりとなで始める。
「んっ……。 気持ちいいわ、それ。なんていうか、落ち着く」
「……ねぇエレナ」
「なぁに?」
「ありがと」
「ん」と小さく言葉を発するだけのエレナ。
それ以上の言葉は必要ないだろう。俺は気持ちよさで目を細めているであろう金髪の少女の髪を梳き続ける――――。
「ちなみに、ちゃんと私の下着見てくれた? 慎也はどういうのが好み?」
「ううん、一瞬たりとも見てないけど……」
「えぇ~、もったいないわねぇ。 あれ?脱ぎたてじゃないとダメなタイプ? 待ってなさい。今脱いであげるから――――」
「結構です!俺の姉なら大人しくしててください」
真下から不満そうな声が聞こえてくる。
俺はプリンを一口食べ、彼女にはわからないようため息と、小さな笑みをこぼすのであった。
なんだか、エレナが突拍子もないことを言った気がする。
いや、突拍子もないのはいつものことか。けれども今回はまた一段と凄いことを言っていた気が。
まさか、ねぇ。 いくらなんでもこの歳でご挨拶に行くなんてねぇ。聞き間違いでしょう。
「あら、聞こえなかった? 仕方ないわねぇ……私たちの実家!行くわよ!!」
「…………」
やっぱり聞き間違いじゃなかった。
見事いい切った彼女は仁王立ちするように自信満々、円満具足だ。
暗い部屋の中で外からの光に映される彼女の瞳が、キラキラと輝いているように見える。
「いやいやいや……なんで俺が三人の家に行くの?」
ようやく言葉を飲み込めた俺は思わず肩をすくめた。
彼女らの田舎……それはつまり実家ということ。神鳥さんみたいな親"代わり"ではなく正真正銘親がいる場所。
どうしてという気持ちが頭の中を占める。せっかくの正月なのだから家族水入らずでゆっくり過ごせばいいのに。
「そりゃあ決まってるじゃない。お盆もクリスマスも帰らなかったもの。お正月くらいは顔を出さなきゃと思ってね」
「でもそれに俺が行く必要も無いよね!?」
「何言ってるの!!私たちを一人残らず落としたんだから親に挨拶は必須じゃない!!」
まさかとおもった。まさかちょっとした挨拶なだけで、そういう男女的な挨拶は別だろうと正直高を括っていた。
しかし小さな口から飛び出したのはまさしくそういった意味での挨拶。なかなかの爆弾発言に空いた口が塞がらない。
「でもまだ俺たちは付き合ってないよね!?」
なんとか意識を取り戻した俺は否定するように食い下がる。
そう、好き合ってはいるが付き合ってはいない。
ただの屁理屈だが親が云々はまだ早いだろう。
「まぁだそんなこと言ってるの? 単に早いか遅いかの違いじゃない」
「それは…………」
呆れたように告げるエレナに思わず言いよどむ。
それは……どうなのだろう。
一緒になるとしても誰と?どうやって?
色々と考えなきゃならない問題が山積みだ。モラルとか世間体とか彼女らの仕事とか。
「……とまぁ、冗談はここまでにしておいて、そんなに難しく考えなくっていいわ」
「冗談……?本当に……?」
まったくそうは聞こえなかったが。
クルリとその場で方向転換した彼女は軽い調子でキッチンまで足を進めてお湯を沸かしはじめる。
「そ、冗談。3割位ね」
「ほぼ本気じゃん!!」
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まだ俺は死にたくない。
「バレた? でも、慎也の不安はそこじゃないでしょう?私達アイドル三人も侍らせて……ってところじゃない?」
「……まぁ、そうだけど」
核心を突くエレナの言葉にドキリと心臓が高鳴る。。
相応しいのかどうか。以前も話題に出て、いまだ答えの出ていない大きな悩み。
前はエレナに発破をかけられたが、今回の彼女は優しげで、沸騰したお湯をティーパックの入ったコップに注いでいく。
「もともと私たちは普通の女の子なのよ。それがリオの差し金で今となってはこんなことになっちゃってるけど」
テキパキと灯りも付いていない部屋の中で紅茶を淹れていき、甘い仄かな香りが充満する。
紅茶の種類など詳しくないが、フルーティーな香りで少し心が癒やされる感覚があった。
「そこで、慎也にも実家に来てもらって、いかに私たちが相応しいとか考えるまでもない普通の女の子かってわかってもらうのよ」
「それは…………エレナたちの親御さんはいいの?水を差して」
「いいんじゃない? 逆に喜ぶと思うわ。『娘がようやく彼氏を連れてきた』って」
彼氏……彼氏ねぇ。
語弊がある気がしないでもないが間違っていると言われても少し違う、複雑な感じだ。
けれどこの悩みが解消できるとなれば行くのもアリかもしれない。
そんなことを考えていると、すぐ近くのテーブルにコトンとカップを置くエレナの姿があった。
「とりあえず考えておいてくれる? 今はゆっくり紅茶でも飲みましょう」
「…………うん」
カップを傾ける彼女に続いて俺も置かれたカップに口をつけると、その芳醇な香りと暖かさが身体の中を巡っていく。
これは……アップルティーだろうか。甘い香りの正体は林檎のようだ。暖房で部屋中温かいとはいえ、冬の身体をぬくもりで癒やしてくれる。
「コーヒーでもよかったけど眠れなくなっちゃうから。どう?美味しい?」
「……美味しいよ。ありがとう」
ただのパックから抽出したものだが、その心遣いが、優しさが、ただの紅茶をより一層美味しいものへと昇華させてくれているような気がした。
彼女は俺の言葉を微笑むだけに留め、今度は何を考えたのか冷蔵庫を大きく開け放ってガチャガチャと音を鳴らし始めた。
「エレナ……? 今度は何……?」
「えぇ、ちょっと待ってて。あくまで紅茶はおまけでこっちが本番なのよ…………っと」
彼女が取り出したのは銀のタッパ。
あれは……冷蔵庫を開けるたび目に入ったものだ。アルミホイルで包まれていて中身がわからなかったもの。
小分けされているのだろうか。そこから二つほど何かを取り出して残りを片付ける。
「はい。 ホントはこれを一番はじめに食べてもらおうと思ってここに一人来たのよ」
「ありがと…………プリン?」
手渡されたそれは小さな器に入ったプリンだった。
よくよく見れば表面部分が焦げて茶色になっている。これは……焼きプリンだろうか。
「そ、プレゼント交換前に作ってたもの。こんな時間に悪いと思ったんだけどね」
たしかにあの時間、エレナは何かしらしていた。
やたら甘い香りがするなと思っていたらこんなものを作っていたのか。
俺はポンポンとソファーの隣を叩く彼女に促されるまま移動し、手渡されたスプーンでプリンを一切れ掬い口に運んでいく。
「……どうかしら? 美味しい?」
「うん、美味しい、美味しいよ。 十分店でも出せるレベルかも」
「そう……よかったわ」
その不安な顔から一転、安堵したように胸を撫で下ろすエレナ。
実際、口にしたプリンは料理下手とは思えないくらい上手になっていた。甘みの抑えられたカラメル、ふわっと揺れるプリン。そのどれもがバランスよく、口にいれると卵の香りが口いっぱいに広がる。
「私も……ロクに料理の作れなかった私も今では焼きプリンを作れるようになったわ」
彼女は真っ暗な部屋の中、何も付いていないモニターを向きながら一人言葉を連ねる。
それは俺に言い聞かせるのか、はたまた自分に言い聞かせているのか。
「オムライスとスクランブルエッグは作り分けられるようになった?」
「そ……それはいいのよ食べられたんだから! とにかく!私がここまで上達したのは慎也のお陰だってこと!」
「…………俺?」
思わぬ言葉につい聞き返す。
俺が何かしただろうか。確かに上手になったほうがいいとかいうニュアンスのことは言ったり食べて評価したりしたことはあったが、感謝される覚えなど無い。
「えぇ。最初は何でも完璧なアイへの対抗心だったけど、それでも慎也に美味しいって言ってもらいたかったから。 だからね……」
一つ息を吐いて手が重なる。彼女はポスンと収まるように俺の膝の上へと倒れ込んだ。
「だから、何度だって言ってやるわ。私はどうしようもなく慎也が好きだってこと。 そうやって落ち込んでたり、不安になってたらいくらでも助けてあげるんだからね」
「エレナ……」
彼女は正面を向いていて表情は伺いしれない。
しかしその声色は優しく、目一杯俺を気にかけてくれていることがわかった。
「……それに、悪かったわね」
「悪いって何の話?」
「アイの話よ。最近かなりグイグイ来てキミも戸惑ってるんじゃない?」
「……そうだね」
唐突な謝罪に何かと思ったが、その真意を知り戸惑いながらも肯定する。
アイさんの最近のアタック。決して嫌な訳では無い。けれど人目をはばからないことだったり俺自身が相応しくないのではという思いから嬉しさより困惑が勝ってしまっている。
「あの子はずっと男の人に近づけなかったことはもちろん覚えてるわよね?」
「うん。男性恐怖症だよね?」
「えぇ。だからこそ、小学生の頃からずっと男の人と関わらなかったのに急に好きな人ができたものだから、距離感が掴めないのよ」
「……そうだね」
彼女の押しの強さ。その理由についてはある程度察しがついていた。
距離感。それが何よりも簡潔な答えだろう。エレナは彼女を案じるように言葉を続ける。
「だからあの子もどうすればいいか悩んでる最中だと思う。めげずに付き合ってくれると嬉しいわ」
「もちろん。……なんだかエレナは母親みたいだね」
「当然じゃない。なんねんあの子と一緒にいると思ってるの」
「家事は全然なのにね」
「それは言わない約束よ」
互いに空から落ちる真っ白な雪を見上げながらともに笑い合う。
同じ方向を向いて表情がわからない。真意は掴みきれない。けれどきっと、優しげな言葉、雰囲気からきっと悪いものじゃないだろう。俺は膝に倒れている彼女の、絹のような金髪をゆっくりとなで始める。
「んっ……。 気持ちいいわ、それ。なんていうか、落ち着く」
「……ねぇエレナ」
「なぁに?」
「ありがと」
「ん」と小さく言葉を発するだけのエレナ。
それ以上の言葉は必要ないだろう。俺は気持ちよさで目を細めているであろう金髪の少女の髪を梳き続ける――――。
「ちなみに、ちゃんと私の下着見てくれた? 慎也はどういうのが好み?」
「ううん、一瞬たりとも見てないけど……」
「えぇ~、もったいないわねぇ。 あれ?脱ぎたてじゃないとダメなタイプ? 待ってなさい。今脱いであげるから――――」
「結構です!俺の姉なら大人しくしててください」
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