2 / 27
第二話 切落し2
しおりを挟む
武田は両手を頭上高くに取る、上段の構えを取ってみせた。攻気も露わな上段構えで、少女を威圧する腹積もりである。
対して少女は右肩に担ぐような剣形を取った。柄を握る両の手は右胸よりやや上に位置し、刀身は肩から後方へ寝かせている。一般的な八双の構えより刀身を後ろに隠す様にしているが、流派によって構えは様々である。おそらくは、この構えが少女にとっての基本なのだろう。
間合いは……先ほど少女が後ろへ大きく飛び下がったため、一足一刀には少しばかり遠い。勝負の様相は、間合いの測り合いから始まった。
武田はじり、と、半歩近寄った。対して少女は不動。あたかも周囲を取り囲む大木のごとく沈静を保っている。歩法によっての間合いの取り合いに、少女は見切りをつけているようであった。
「はっ、ガキが……」
武田は嘲りの笑みを見せた。なるほど、少女の選択は理解できると、武田は思った。
剣と剣の勝負において、歩法によっての間合いの取り合いで利を得やすいのは、射程距離に優れている者である。武田と少女、どちらにその優劣があるかといえば、それは武田にあった。
互いの得物の刃尺にはそう違いはない。大きく違うのはその体格であった。
少女の矮躯は、武田の胸を超えるか否か程度しかない。それは、武田に比べて身長が劣っているということであり、つまり手足の長さも劣っているのである。個人差はあるものの、身長が低ければ手足も短いのが道理。刃を操る手が武田よりも短く、地を一歩踏み込む足も短いとあれば、自然と射程距離は武田に劣ってしまうのだ。
刃が届く範囲、つまり斬り間は武田が有利。少女がいかに歩法で間合いの奪い合いを試みたとしても、その優劣は絶対である。少女がその刃を届かせられない間合いであっても、間合いに勝る武田なら刃を食い込ませることができるのだ。すなわち武田には、一方的に先手を取れる利がある。
少女がその刃を武田に届かせるには、武田が一方的に襲う間合いに踏み込み、その間合いで細見を晒しながら少女の利する間合いまで近づかなければいけない。
そのため、少女が歩法で己の利を得るとするならば、対敵の呼吸をはかりつつ、攻勢を読んで意の裏を取り、対敵に刃を振らせることなく間合いを盗むほかないのだ。いわずもがな、難業である。
しかして……少女は不動の構え。武田がにじり寄るに任せている。
おそらく少女の狙いはいわゆる後の先であろうと、武田は考えた。彼は剣術家ではなかったものの、学生時代に剣道を嗜んでおり、そのつてで何度か剣術道場の稽古を見学したり、話を伺ったことがあった。
後の先とは、相手を先に動かし、相手の剣撃を体捌きで躱す、受け流すなどを用いて凌ぎ、死太刀を打ち込んだ相手の体躯が居ついた隙を斬るのである。
間合いで劣る少女は、どうせ先手を取られるからと武田に先に打ち込ませ、それを凌いで彼を斬る腹積もりなのだろう。
しかし、それもまた難業である。そもそも、体格で大きく劣る少女の勝機は、客観的に見ずとも紙のように薄い。
体で劣っているというのは、つまり力で劣っているということである。少女の細身で繰る剣撃と、武田の繰る剣撃。仮に正面からそれがぶつかり合ったとすると、少女は一方的に打ち負けるだろう。
それは、少女が武田の剣撃をその刀で受けようとした時にも適応される。武田の渾身の一刀を少女が受けたとして、その力を流せずに押し切られ致命傷をくらう、ということも十分にありえるのだ。
少女の取れる手はもはや一つ。武田の一刀を体捌きで避けることしかない。そしてこれもやはり、難業であるのだ。
殺意めいた白刃をただ避けるだけでも難儀な話である。相手の攻気を正しく読み、振りかざされる殺刃の軌道をしかと見極め、死の恐怖に打ち勝った精神で正しく体を操ることができて初めて、やっと敵の一刀を避けることができるのだ。一瞬躊躇すれば死ぬに易い。殺刃の持つ死の恐怖に打ち負ければ、棒立ちで斬られるのが落ちである。
加えて、避けた隙に一刀を打ち込むとなると、はたしてどれほどの技量が必要であるか。たゆまぬ努力によって培われた技術と、鍛えられた肉体、強靭な精神に反応速度。どれかが不足していれば不可能であるし、これらが十分であっても、また別の要因で不可能となる場合もある。
敵の剣撃を避け、その隙に一刀を食らわせるなど、達人の域なのだ。
はたして、この少女が達人の至芸を為し得るというのだろうか。いや、ありえないと、武田は心の中で笑った。
……間合いは、いつしか狭まっていた。後つま先一つ分ほど近寄れば、武田の間合いである。
斬り間に達すれば、武田はすぐさま斬りかかる意気込みである。対して少女はやはり不動のまま。あくまで先手を譲る腹らしい。
意気を計る。呼吸を整える。武田の狙いは単純明快であった。少女が後の先を狙うというのなら、ただ愚直に先を斬る。体捌きで躱す暇も与えぬ、渾身の一刀を叩きこむつもりだ。
仮に少女がその刃で武田の剣撃を受けたとしたら、その受けごと粉砕するのみである。
間合いが狭まる……つま先一つ、武田の間合い。
「シャア!」
武田は気声一つ、地を踏みしめた。迅雷の太刀筋がはしった。武田をして会心の一刀である。避ける暇も、受けきる度量も少女にあるまいと、武田は思った。
「……あ? な、なに……?」
しかし、武田は疑問を吐いた。少女は健在のまま武田の目に映っている。彼の刃は少女をとらえていなかったのだ。
「ば、バカな……」
ありえないと、武田は呆然としながらそう口にした。
そう、ありえるはずがないのだ。斬られていたのは、少女ではなく武田の方であった。
武田の左手が、鮮やかに切断されていた。切断面からは鮮血があふれ、少女の魔女服を汚していた。
武田は左手を失った衝撃と痛み、そしてその現実を受け入れられず、刀を手放して膝から崩れ落ちた。色鮮やかな血の赤が、大地を染め上げる。
武田は、呆然としながら先ほどの交錯の時を思い返していた。
あの交錯の時、武田が斬りかかったのを見て取り少女は遅れて動き出し……刀と刀が切り結ぶや、武田の一刀は弾かれ、少女の一刀はそのまま武田の左手を斬り落としていた。
ありえないことであった。力で劣るはずの少女の一刀が、力で勝るはずの武田の一刀をどう弾くというのか。巧妙な手妻があったとしても、力の差が絶対であれば意味はない。せいぜいが刃先を少し逸らす程度、あるいは互いの刃と刃が弾かれ合うのがやっとである。武田の一刀を切り落とすことなど、不可能であるはずだ。
ならば、そもそもの前提が間違っていたのである。体格で劣る少女は単純な力で劣るという武田の仮定は誤りで、体格の劣勢を覆す何かがあったのだ。
だとすれば、それはもはや魔術と評せざるを得ない。ありえないことがありえてしまったのだから。
「ま、魔女……!」
武田は恐怖に顔を歪めて、凍てつく声色で呟いた。この小娘の風体は伊達ではなく、まさしく魔女であると、武田は恐れた。
今や地に膝を落とし失血と恐怖で青ざめる武田に対して、少女は無表情であった。
「……一つ聞きたい、あなたはどうやってラピスを……その刀を手に入れた?」
「し、知らない、いつの間にか家の中にあったんだ……! ほ、本当だ、信じてくれ……!」
恐慌におちいりガチガチと歯を噛みあわせながら、武田はやっとの思いで答えた。
「そうか」
対して少女は……魔女は、冷たい声で言った。
その声を聞いて、武田の臓腑から恐怖が湧き上がり吐き気を催した。
武田は魔女の冷たい声色で、彼女が今から自分に止めを刺すのだと本能的に悟ったのだ。
「た、助けてくれ、た、頼むっ! 本当なんだ、さっき言ったのは……! だ、だから、助けて……」
恥も外聞もなく命乞いをする武田に、少女は憐れみと冷ややかさを伴った視線を投げた。
「それはできない。あなたはもう、ラピスに魅入られてしまっている」
「あ、ああ……」
少女が一刀を右肩かつぎに構えた。
殺される。今から殺されてしまう。武田の脳裏はそんな考えで満たされ、尻もちをついたまま後ずさった。
「い、嫌だ……嫌だ、死にたくない……ッ」
死期を悟った武田は、虚しく言の葉を散らした。それは無意味な行為だと、武田は知っていたが、止められなかった。
この魔女は、武田の命乞いなど聞き届けたりはしない。だが、それは何もこの魔女に限った事ではなかった。武田は今まで自分が犯した殺人を思い返す。彼の手にかかった犠牲者もまた、今の彼のように命乞いをしていた。
しかし、彼はかつて一度も殺した者らの命乞いを聞いてやりはしなかった。ただ笑って、その手にある刃を振り落とした。
「死にたくないっ! 嫌だっ、たすっ、助けてくれぇぇっ!」
それでもなお、武田は請い願う。今武田の胸には後悔があふれていた。彼の中に希望などどこにもなかった。
今まで一度も命乞いに耳を貸さなかった彼は、今この瞬間、かすかな希望を抱くことすらできなかったのだ。
それは悲劇であった。少なくとも、武田善之という人間にとっては。
刃がはしった。それは一切の迷いなく、武田の首を斬り落とした。
もはや武田は言葉を発することができない骸と化した。かつて彼が幾多の人間をそうしてきたように。
一陣の風が吹き、梢が歌う。魔女は武田が落とした刀を手に取った。それは瞬く間に手の平に収まるサイズの宝石へと姿を変えた。
彼女は宝石を懐にしまうと、この場を後にした。後に残ったのは物言わぬ骸のみ。ざわめく森林もやがて収まり、静寂が訪れた。
対して少女は右肩に担ぐような剣形を取った。柄を握る両の手は右胸よりやや上に位置し、刀身は肩から後方へ寝かせている。一般的な八双の構えより刀身を後ろに隠す様にしているが、流派によって構えは様々である。おそらくは、この構えが少女にとっての基本なのだろう。
間合いは……先ほど少女が後ろへ大きく飛び下がったため、一足一刀には少しばかり遠い。勝負の様相は、間合いの測り合いから始まった。
武田はじり、と、半歩近寄った。対して少女は不動。あたかも周囲を取り囲む大木のごとく沈静を保っている。歩法によっての間合いの取り合いに、少女は見切りをつけているようであった。
「はっ、ガキが……」
武田は嘲りの笑みを見せた。なるほど、少女の選択は理解できると、武田は思った。
剣と剣の勝負において、歩法によっての間合いの取り合いで利を得やすいのは、射程距離に優れている者である。武田と少女、どちらにその優劣があるかといえば、それは武田にあった。
互いの得物の刃尺にはそう違いはない。大きく違うのはその体格であった。
少女の矮躯は、武田の胸を超えるか否か程度しかない。それは、武田に比べて身長が劣っているということであり、つまり手足の長さも劣っているのである。個人差はあるものの、身長が低ければ手足も短いのが道理。刃を操る手が武田よりも短く、地を一歩踏み込む足も短いとあれば、自然と射程距離は武田に劣ってしまうのだ。
刃が届く範囲、つまり斬り間は武田が有利。少女がいかに歩法で間合いの奪い合いを試みたとしても、その優劣は絶対である。少女がその刃を届かせられない間合いであっても、間合いに勝る武田なら刃を食い込ませることができるのだ。すなわち武田には、一方的に先手を取れる利がある。
少女がその刃を武田に届かせるには、武田が一方的に襲う間合いに踏み込み、その間合いで細見を晒しながら少女の利する間合いまで近づかなければいけない。
そのため、少女が歩法で己の利を得るとするならば、対敵の呼吸をはかりつつ、攻勢を読んで意の裏を取り、対敵に刃を振らせることなく間合いを盗むほかないのだ。いわずもがな、難業である。
しかして……少女は不動の構え。武田がにじり寄るに任せている。
おそらく少女の狙いはいわゆる後の先であろうと、武田は考えた。彼は剣術家ではなかったものの、学生時代に剣道を嗜んでおり、そのつてで何度か剣術道場の稽古を見学したり、話を伺ったことがあった。
後の先とは、相手を先に動かし、相手の剣撃を体捌きで躱す、受け流すなどを用いて凌ぎ、死太刀を打ち込んだ相手の体躯が居ついた隙を斬るのである。
間合いで劣る少女は、どうせ先手を取られるからと武田に先に打ち込ませ、それを凌いで彼を斬る腹積もりなのだろう。
しかし、それもまた難業である。そもそも、体格で大きく劣る少女の勝機は、客観的に見ずとも紙のように薄い。
体で劣っているというのは、つまり力で劣っているということである。少女の細身で繰る剣撃と、武田の繰る剣撃。仮に正面からそれがぶつかり合ったとすると、少女は一方的に打ち負けるだろう。
それは、少女が武田の剣撃をその刀で受けようとした時にも適応される。武田の渾身の一刀を少女が受けたとして、その力を流せずに押し切られ致命傷をくらう、ということも十分にありえるのだ。
少女の取れる手はもはや一つ。武田の一刀を体捌きで避けることしかない。そしてこれもやはり、難業であるのだ。
殺意めいた白刃をただ避けるだけでも難儀な話である。相手の攻気を正しく読み、振りかざされる殺刃の軌道をしかと見極め、死の恐怖に打ち勝った精神で正しく体を操ることができて初めて、やっと敵の一刀を避けることができるのだ。一瞬躊躇すれば死ぬに易い。殺刃の持つ死の恐怖に打ち負ければ、棒立ちで斬られるのが落ちである。
加えて、避けた隙に一刀を打ち込むとなると、はたしてどれほどの技量が必要であるか。たゆまぬ努力によって培われた技術と、鍛えられた肉体、強靭な精神に反応速度。どれかが不足していれば不可能であるし、これらが十分であっても、また別の要因で不可能となる場合もある。
敵の剣撃を避け、その隙に一刀を食らわせるなど、達人の域なのだ。
はたして、この少女が達人の至芸を為し得るというのだろうか。いや、ありえないと、武田は心の中で笑った。
……間合いは、いつしか狭まっていた。後つま先一つ分ほど近寄れば、武田の間合いである。
斬り間に達すれば、武田はすぐさま斬りかかる意気込みである。対して少女はやはり不動のまま。あくまで先手を譲る腹らしい。
意気を計る。呼吸を整える。武田の狙いは単純明快であった。少女が後の先を狙うというのなら、ただ愚直に先を斬る。体捌きで躱す暇も与えぬ、渾身の一刀を叩きこむつもりだ。
仮に少女がその刃で武田の剣撃を受けたとしたら、その受けごと粉砕するのみである。
間合いが狭まる……つま先一つ、武田の間合い。
「シャア!」
武田は気声一つ、地を踏みしめた。迅雷の太刀筋がはしった。武田をして会心の一刀である。避ける暇も、受けきる度量も少女にあるまいと、武田は思った。
「……あ? な、なに……?」
しかし、武田は疑問を吐いた。少女は健在のまま武田の目に映っている。彼の刃は少女をとらえていなかったのだ。
「ば、バカな……」
ありえないと、武田は呆然としながらそう口にした。
そう、ありえるはずがないのだ。斬られていたのは、少女ではなく武田の方であった。
武田の左手が、鮮やかに切断されていた。切断面からは鮮血があふれ、少女の魔女服を汚していた。
武田は左手を失った衝撃と痛み、そしてその現実を受け入れられず、刀を手放して膝から崩れ落ちた。色鮮やかな血の赤が、大地を染め上げる。
武田は、呆然としながら先ほどの交錯の時を思い返していた。
あの交錯の時、武田が斬りかかったのを見て取り少女は遅れて動き出し……刀と刀が切り結ぶや、武田の一刀は弾かれ、少女の一刀はそのまま武田の左手を斬り落としていた。
ありえないことであった。力で劣るはずの少女の一刀が、力で勝るはずの武田の一刀をどう弾くというのか。巧妙な手妻があったとしても、力の差が絶対であれば意味はない。せいぜいが刃先を少し逸らす程度、あるいは互いの刃と刃が弾かれ合うのがやっとである。武田の一刀を切り落とすことなど、不可能であるはずだ。
ならば、そもそもの前提が間違っていたのである。体格で劣る少女は単純な力で劣るという武田の仮定は誤りで、体格の劣勢を覆す何かがあったのだ。
だとすれば、それはもはや魔術と評せざるを得ない。ありえないことがありえてしまったのだから。
「ま、魔女……!」
武田は恐怖に顔を歪めて、凍てつく声色で呟いた。この小娘の風体は伊達ではなく、まさしく魔女であると、武田は恐れた。
今や地に膝を落とし失血と恐怖で青ざめる武田に対して、少女は無表情であった。
「……一つ聞きたい、あなたはどうやってラピスを……その刀を手に入れた?」
「し、知らない、いつの間にか家の中にあったんだ……! ほ、本当だ、信じてくれ……!」
恐慌におちいりガチガチと歯を噛みあわせながら、武田はやっとの思いで答えた。
「そうか」
対して少女は……魔女は、冷たい声で言った。
その声を聞いて、武田の臓腑から恐怖が湧き上がり吐き気を催した。
武田は魔女の冷たい声色で、彼女が今から自分に止めを刺すのだと本能的に悟ったのだ。
「た、助けてくれ、た、頼むっ! 本当なんだ、さっき言ったのは……! だ、だから、助けて……」
恥も外聞もなく命乞いをする武田に、少女は憐れみと冷ややかさを伴った視線を投げた。
「それはできない。あなたはもう、ラピスに魅入られてしまっている」
「あ、ああ……」
少女が一刀を右肩かつぎに構えた。
殺される。今から殺されてしまう。武田の脳裏はそんな考えで満たされ、尻もちをついたまま後ずさった。
「い、嫌だ……嫌だ、死にたくない……ッ」
死期を悟った武田は、虚しく言の葉を散らした。それは無意味な行為だと、武田は知っていたが、止められなかった。
この魔女は、武田の命乞いなど聞き届けたりはしない。だが、それは何もこの魔女に限った事ではなかった。武田は今まで自分が犯した殺人を思い返す。彼の手にかかった犠牲者もまた、今の彼のように命乞いをしていた。
しかし、彼はかつて一度も殺した者らの命乞いを聞いてやりはしなかった。ただ笑って、その手にある刃を振り落とした。
「死にたくないっ! 嫌だっ、たすっ、助けてくれぇぇっ!」
それでもなお、武田は請い願う。今武田の胸には後悔があふれていた。彼の中に希望などどこにもなかった。
今まで一度も命乞いに耳を貸さなかった彼は、今この瞬間、かすかな希望を抱くことすらできなかったのだ。
それは悲劇であった。少なくとも、武田善之という人間にとっては。
刃がはしった。それは一切の迷いなく、武田の首を斬り落とした。
もはや武田は言葉を発することができない骸と化した。かつて彼が幾多の人間をそうしてきたように。
一陣の風が吹き、梢が歌う。魔女は武田が落とした刀を手に取った。それは瞬く間に手の平に収まるサイズの宝石へと姿を変えた。
彼女は宝石を懐にしまうと、この場を後にした。後に残ったのは物言わぬ骸のみ。ざわめく森林もやがて収まり、静寂が訪れた。
0
あなたにおすすめの小説
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
「真白」〜〜雪と蛇の女〜〜
まへまへ
キャラ文芸
恋愛ファンタジー小説です。
本作品の画像は全て生成AIを使用しております。
信州の雪深い山中で、母とともに小さなロッジを営む青年・一朗。
父を雪崩で亡くし、幼なじみをかばって手に傷を負った過去を抱え、静かに、淡々と日々を生きていた。
そんな彼の前に、ある日“白い蛇”が現れる。
罠にかかっていたその蛇を助けた夜から、運命は静かに動き出した。
吹雪の晩、ロッジに現れた少女――名を「真白」。
彼女は、あの日の白蛇だった。
純粋で無垢、けれどどこか懐かしい。
人の姿を得た彼女は、初めて知る「世界」に心を震わせ、一朗のそばで少しずつ“人間”を学んでいく。
雪に閉ざされた山のロッジで生まれた、人と白蛇の奇跡の絆。
過去の痛みと孤独を包みこむように、真白は優しく一朗の心に灯をともしていく。
けれど、やがて訪れる春が二人に突きつける――「蛇としての運命」と「人としての願い」。
白い雪の中で出会い、心を通わせた一朗と真白の、静かで切ない恋の物語ですが、ラバーフェチ要素やちょっとR15な要素(まへまへらしさ)が中盤以降登場しますので、、、。笑
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる