96 / 185
96話、白い温泉と温泉卵
しおりを挟む
朝も早くからフラメイズを出発し、街道を進む。
早朝なので人通りが少なく、小鳥のさえずりがよく聞こえていた。のどかな朝の風景を前に、思わずあくびをかいてしまう。
「……あれ? 煙……?」
あくびをした際の生理現象で視界が涙で滲む中、かすかにだが白い煙が見えた。すぐに目をこすって涙をぬぐい、先ほど白い煙が見えた方向を改めて見てみる。
見間違いではない。煙は街道の右手側、ずっと遠くの方から確かに立ち昇っていた。
「何なのかしらあれ。火事?」
ライラも遠くから立ちのぼる謎の煙が気になるらしい。
「火事……にしては煙が白すぎるかな。どちらかと言うと湯気っぽいかも」
「……こんな道のど真ん中から湯気? 妙な話ね」
それは私も少し気になる。白い煙は街道を外れた先、やや小高くなった丘のような地形の途中付近から昇っているようだ。
さすがにそんな起伏にとんだ土地に村なんてないと思うけど。
「気になるし、ちょっと行ってみようか」
「そうね。このまま知らんぷりするのはもやもやするわ」
「……煙だけに?」
「……」
ライラは無言で私の発言を知らんぷりする。
朝っぱらだから脳がまだ寝ているのか、思いついた事をそのまま言ってしまった。気をつけよう。この沈黙は二度と体験したくない。
煙の正体を知るため、街道を外れて歩きはじめる。幸いにも獣道ではなく、木々がまばらに生えてる程度の原っぱだったので、かなり歩きやすい。
しかし煙がのぼる方向へ進んでいくと微妙な坂が続き、中々足に負担がかかる。元いた街道から比べ、結構上の方へ来ていることだろう。
緩やかな坂道を登っていくと、そのうち段々になった地形へ差しかかった。
丘の斜面を切り崩して階段状にするのは、珍しくない光景だ。そうして階段状にした地形に畑を作れば、段々畑となる。
しかしここは段々畑でもなければ、とても人の手で整地された段々状の地形とは思えない。不規則に土が盛り上がり、段々地形がデコボコと出来上がっていたのだ。
「何だここ……歩きにくい」
不規則な階段状の地形を進むのは実に厄介だった。なぜか土は湿っており、微妙に足が滑る。うっかり転げ落ちたらと考えると、背筋が冷えた。
しかし煙には確実に近づいているようで、気がつけば私の周囲は白いもやが浮かんでいた。
心なしか気温も暖かい。この白いもやのおかげだろうか? どうやら蒸気らしく、湿気もすごい。
蒸気のようなもやに妙な暖かさ、そして白い煙。これはもしかしたら……。
そんな私の予想に答えるかのように、ようやく白い煙が立ちのぼる場所が見えてきた。
「やっぱり温泉だ」
そこはちょろちょろと心地いい水音が聞こえる温泉だった。
沸きだした暖かい温泉が段々状の地形に溜まり、溢れた水がまた下へと流れ溜まっていく。タワー状に並べたコップの一番上から水を注いでいるような状態だ。
棚田のような地形で出来た、天然の温泉。その暖かさによって生まれた蒸気が白い煙の正体だ。
温泉の水を軽くすくってみる。薄い乳白色をしていて、ちょっと肌がぴりぴりする感じ。
おそらくやや酸性の水質なのだろう。乳白色なのは水に含まれるカルシウムと何らかの成分による反応だろうか。それなりに硬質の水らしい。
若干酸性が強いが、入っても問題ない温泉だと思う。肌が弱い人は微妙に気になるだろうけど。
「温泉ね……たまにあるわよね、こういう暖かい水が湧き出るところ」
ライラはかつて温泉を見たことがあるのだろう、さして驚いてたりはしなかった。自然に溶け込む妖精の方が温泉の発見率は高いのだろうか。意外と温泉に入る妖精って珍しくない感じ?
「どうするのリリア、温泉に入る?」
「いや……うーん」
周囲を見回してみる。人の気配は全くないが、段々状の地形のかなり高い場所。しかも木々なんて全く生えてない。
さすがにこんな所でゆっくり湯につかるわけにはねぇ……。
付近の住民からしたら知る人ぞ知る温泉かもしれないし、いつ誰がやってくるとも分からない。
自然の中お風呂に入るなんて……ちょっとハードル高すぎ。
「でもせっかくだし、足湯くらいなら楽しもうかな」
その程度ならもし人に見られても問題ないしね。
「そうね、残念だけど私も足湯だけにしておくわ」
わりと肩まで浸かる気満々だったのか、ライラ。
「……ん?」
足湯をするため靴を脱ごうとした矢先、白い煙の中で何か黒い物体を視界にとらえる。
おそらく人ではない何かが、温泉から少し離れた所にある。
なんだろうと思って近づいて見ると、それは木製の……棚と言ったほうがいいのだろうか、荷物置き場みたいなのがあった。
そしてそこにはなぜか、卵や野菜が置かれていた。
棚の傍には立て札があり、周囲の煙を手で払いながら文字を読んでみる。
無人販売所。値段は全て同じ。料金は台の上へ。
……なるほど、無人販売所ね。
おそらく出来が良くなかった野菜などを格安で売っているのだろう。とすると、近くに村などがあることになる。やはりここは多少なりとも人が来る場所なのか。
でもこんな湿度が高いところに野菜とかを放置していると、すぐに痛みそうだ。あまり売れ行きに期待してないのかも。
野菜はあれとしても、卵は良い。卵は常温保存できるので、さすがに痛んではないだろう。
お金を台の上に置いて、卵を二個購入してみた。
「卵なんて買ってどうするの?」
「温泉卵作ろうかなって」
「温泉卵?」
「温度にもよるけど、温泉でゆでるといい感じの半熟になるんだよ。ぷるっとしてておいしいよ」
先ほど湯をすくったところはちょうど入るのに適した温度だった。ならば湧き出るところはもっと熱いはずだ。とりあえずそこに数十分ほどつけて、温泉卵ができるかやってみよう。失敗したらその時はその時。
普通温泉卵を作る時は網などに入れて卵を取り出しやすくするものだが、そんな物は持ってないし、テレキネシスでどうとでもなるだろうと考えてそのまま源泉に放り込む。
「雑っ。卵割れちゃうわよ」
「大丈夫でしょ。割れてたら割れてたで原初時代のゆで卵感あっていいじゃん」
「……原初時代のゆで卵って何よ」
私も知らない。
温泉卵は六十~七十度のお湯で二、三十分はゆでる必要がある。かなりゆっくり足湯に浸かれそうだ。
棚田のような地形に溜まった温泉に指を入れて一つ一つ温度を確認し、ちょうど足湯に良さそうなのを選ぶ。そして靴と靴下を脱ぎ、若干スカートの裾を折り曲げてから温泉の中に足を突っ込んでみた。
「あー……これは中々、良い気持ちかも」
じわーっと温かいお湯がふくらはぎまでを包み、体がぽかぽかと温まっていく。
適当な大きさの石を温泉のへりに置き、そこへ座ってゆっくり足湯を楽しむことにした。多少お尻が痛いが、自然にできた温泉なのでそこはしかたない。
「ふー……」
横並びで足湯に浸かるライラが気持ちよさそうに息を吐く。ちゃぷちゃぷと小さい足を水中で揺らしていて、かなり上機嫌のようだ。
「さっき、たまに暖かいお湯が沸きでるところがあるって言ってたけど、ライラは温泉に浸かったことあるの?」
「あるわよ。妖精の間では結構人気のスポットだから、色んな温泉の噂が流れてたわ。もっとも私たちは温泉ではなくファタモルガナって呼んでたけど」
「ファタモルガナ……つまり蜃気楼?」
「たどり着きたい夢のような場所、という意味合いでもあるわ」
ファタモルガナ……蜃気楼……たどり着きたい夢のような場所。
人気のスポットって言ってたし、妖精って温泉好きなんだ。なんだか意外かも。
となると、やはり世界のどこかには妖精がたくさん浸かる温泉とかあるんだろうな。
そんな光景を見たら……魔女である私ですら、蜃気楼と見紛うかもしれない。
「それより、そろそろ温泉卵ができあがるんじゃない? 早く食べましょうよ」
ちゃぷちゃぷ足を揺らして催促されたので、源泉の方へ向かいテレキネシスで卵を取り出してくる。
そしてライラの所へ戻り、小皿を用意して卵をこんこんとぶつけた。
「うまくできてるかな……」
思い切って卵を割ってみる。すると、皿の上にとぷん、と半熟卵が落ちた。
「お、結構よくできてるんじゃない?」
「言った通りぷるぷるね。おいしそうだわ」
もう一つ皿を用意し、後一個卵を割る。そちらもうまく半熟卵になっていた。
味付けは……本来なら魚のダシとか醤油などのソース系が合うのだろうけど、あいにく持ち合わせがない。オリーブオイルと塩コショウかけちゃえ。多分変な事にはならないだろう。
片方の皿をライラに渡し、早速食べることに。
ぷるぷるした温泉卵なので、箸とか使わずもう一気に食べてしまおう。
ちゅるっと吸うように温泉卵を一気に口に含む。全部口に入れると、思ったよりも量が多くてびっくりした。
でも食べられないことは無い。ぷるぷるの白身に、とろとろの黄身。軽く噛むと黄身が弾け、濃厚な味が口の中に広がっていく。
濃厚でまろやかな卵の味に、塩コショウが効いたオリーブオイルが中々良いアクセントとなっている。意外と相性は悪くない。オリーブオイルの香りが爽やかだった。
「温泉卵、というより半熟のゆで卵なんて久しぶりに食べたかも。おいしかった」
「おいしいけど、若干溺れかけたわ。一気に食べる物ではないわね」
ライラは体が小さいから、一気に頬張ったらそうなるか。しかし、足湯に浸かりながら温泉卵で溺れかけるってどういう状況だ。
温泉卵を食べ終えた私たちは、もう少しだけ足湯を楽しんでから出発することにした。
……足湯、温かくてのぼせる心配も少ないから、ずっと入ってしまう……。
早朝なので人通りが少なく、小鳥のさえずりがよく聞こえていた。のどかな朝の風景を前に、思わずあくびをかいてしまう。
「……あれ? 煙……?」
あくびをした際の生理現象で視界が涙で滲む中、かすかにだが白い煙が見えた。すぐに目をこすって涙をぬぐい、先ほど白い煙が見えた方向を改めて見てみる。
見間違いではない。煙は街道の右手側、ずっと遠くの方から確かに立ち昇っていた。
「何なのかしらあれ。火事?」
ライラも遠くから立ちのぼる謎の煙が気になるらしい。
「火事……にしては煙が白すぎるかな。どちらかと言うと湯気っぽいかも」
「……こんな道のど真ん中から湯気? 妙な話ね」
それは私も少し気になる。白い煙は街道を外れた先、やや小高くなった丘のような地形の途中付近から昇っているようだ。
さすがにそんな起伏にとんだ土地に村なんてないと思うけど。
「気になるし、ちょっと行ってみようか」
「そうね。このまま知らんぷりするのはもやもやするわ」
「……煙だけに?」
「……」
ライラは無言で私の発言を知らんぷりする。
朝っぱらだから脳がまだ寝ているのか、思いついた事をそのまま言ってしまった。気をつけよう。この沈黙は二度と体験したくない。
煙の正体を知るため、街道を外れて歩きはじめる。幸いにも獣道ではなく、木々がまばらに生えてる程度の原っぱだったので、かなり歩きやすい。
しかし煙がのぼる方向へ進んでいくと微妙な坂が続き、中々足に負担がかかる。元いた街道から比べ、結構上の方へ来ていることだろう。
緩やかな坂道を登っていくと、そのうち段々になった地形へ差しかかった。
丘の斜面を切り崩して階段状にするのは、珍しくない光景だ。そうして階段状にした地形に畑を作れば、段々畑となる。
しかしここは段々畑でもなければ、とても人の手で整地された段々状の地形とは思えない。不規則に土が盛り上がり、段々地形がデコボコと出来上がっていたのだ。
「何だここ……歩きにくい」
不規則な階段状の地形を進むのは実に厄介だった。なぜか土は湿っており、微妙に足が滑る。うっかり転げ落ちたらと考えると、背筋が冷えた。
しかし煙には確実に近づいているようで、気がつけば私の周囲は白いもやが浮かんでいた。
心なしか気温も暖かい。この白いもやのおかげだろうか? どうやら蒸気らしく、湿気もすごい。
蒸気のようなもやに妙な暖かさ、そして白い煙。これはもしかしたら……。
そんな私の予想に答えるかのように、ようやく白い煙が立ちのぼる場所が見えてきた。
「やっぱり温泉だ」
そこはちょろちょろと心地いい水音が聞こえる温泉だった。
沸きだした暖かい温泉が段々状の地形に溜まり、溢れた水がまた下へと流れ溜まっていく。タワー状に並べたコップの一番上から水を注いでいるような状態だ。
棚田のような地形で出来た、天然の温泉。その暖かさによって生まれた蒸気が白い煙の正体だ。
温泉の水を軽くすくってみる。薄い乳白色をしていて、ちょっと肌がぴりぴりする感じ。
おそらくやや酸性の水質なのだろう。乳白色なのは水に含まれるカルシウムと何らかの成分による反応だろうか。それなりに硬質の水らしい。
若干酸性が強いが、入っても問題ない温泉だと思う。肌が弱い人は微妙に気になるだろうけど。
「温泉ね……たまにあるわよね、こういう暖かい水が湧き出るところ」
ライラはかつて温泉を見たことがあるのだろう、さして驚いてたりはしなかった。自然に溶け込む妖精の方が温泉の発見率は高いのだろうか。意外と温泉に入る妖精って珍しくない感じ?
「どうするのリリア、温泉に入る?」
「いや……うーん」
周囲を見回してみる。人の気配は全くないが、段々状の地形のかなり高い場所。しかも木々なんて全く生えてない。
さすがにこんな所でゆっくり湯につかるわけにはねぇ……。
付近の住民からしたら知る人ぞ知る温泉かもしれないし、いつ誰がやってくるとも分からない。
自然の中お風呂に入るなんて……ちょっとハードル高すぎ。
「でもせっかくだし、足湯くらいなら楽しもうかな」
その程度ならもし人に見られても問題ないしね。
「そうね、残念だけど私も足湯だけにしておくわ」
わりと肩まで浸かる気満々だったのか、ライラ。
「……ん?」
足湯をするため靴を脱ごうとした矢先、白い煙の中で何か黒い物体を視界にとらえる。
おそらく人ではない何かが、温泉から少し離れた所にある。
なんだろうと思って近づいて見ると、それは木製の……棚と言ったほうがいいのだろうか、荷物置き場みたいなのがあった。
そしてそこにはなぜか、卵や野菜が置かれていた。
棚の傍には立て札があり、周囲の煙を手で払いながら文字を読んでみる。
無人販売所。値段は全て同じ。料金は台の上へ。
……なるほど、無人販売所ね。
おそらく出来が良くなかった野菜などを格安で売っているのだろう。とすると、近くに村などがあることになる。やはりここは多少なりとも人が来る場所なのか。
でもこんな湿度が高いところに野菜とかを放置していると、すぐに痛みそうだ。あまり売れ行きに期待してないのかも。
野菜はあれとしても、卵は良い。卵は常温保存できるので、さすがに痛んではないだろう。
お金を台の上に置いて、卵を二個購入してみた。
「卵なんて買ってどうするの?」
「温泉卵作ろうかなって」
「温泉卵?」
「温度にもよるけど、温泉でゆでるといい感じの半熟になるんだよ。ぷるっとしてておいしいよ」
先ほど湯をすくったところはちょうど入るのに適した温度だった。ならば湧き出るところはもっと熱いはずだ。とりあえずそこに数十分ほどつけて、温泉卵ができるかやってみよう。失敗したらその時はその時。
普通温泉卵を作る時は網などに入れて卵を取り出しやすくするものだが、そんな物は持ってないし、テレキネシスでどうとでもなるだろうと考えてそのまま源泉に放り込む。
「雑っ。卵割れちゃうわよ」
「大丈夫でしょ。割れてたら割れてたで原初時代のゆで卵感あっていいじゃん」
「……原初時代のゆで卵って何よ」
私も知らない。
温泉卵は六十~七十度のお湯で二、三十分はゆでる必要がある。かなりゆっくり足湯に浸かれそうだ。
棚田のような地形に溜まった温泉に指を入れて一つ一つ温度を確認し、ちょうど足湯に良さそうなのを選ぶ。そして靴と靴下を脱ぎ、若干スカートの裾を折り曲げてから温泉の中に足を突っ込んでみた。
「あー……これは中々、良い気持ちかも」
じわーっと温かいお湯がふくらはぎまでを包み、体がぽかぽかと温まっていく。
適当な大きさの石を温泉のへりに置き、そこへ座ってゆっくり足湯を楽しむことにした。多少お尻が痛いが、自然にできた温泉なのでそこはしかたない。
「ふー……」
横並びで足湯に浸かるライラが気持ちよさそうに息を吐く。ちゃぷちゃぷと小さい足を水中で揺らしていて、かなり上機嫌のようだ。
「さっき、たまに暖かいお湯が沸きでるところがあるって言ってたけど、ライラは温泉に浸かったことあるの?」
「あるわよ。妖精の間では結構人気のスポットだから、色んな温泉の噂が流れてたわ。もっとも私たちは温泉ではなくファタモルガナって呼んでたけど」
「ファタモルガナ……つまり蜃気楼?」
「たどり着きたい夢のような場所、という意味合いでもあるわ」
ファタモルガナ……蜃気楼……たどり着きたい夢のような場所。
人気のスポットって言ってたし、妖精って温泉好きなんだ。なんだか意外かも。
となると、やはり世界のどこかには妖精がたくさん浸かる温泉とかあるんだろうな。
そんな光景を見たら……魔女である私ですら、蜃気楼と見紛うかもしれない。
「それより、そろそろ温泉卵ができあがるんじゃない? 早く食べましょうよ」
ちゃぷちゃぷ足を揺らして催促されたので、源泉の方へ向かいテレキネシスで卵を取り出してくる。
そしてライラの所へ戻り、小皿を用意して卵をこんこんとぶつけた。
「うまくできてるかな……」
思い切って卵を割ってみる。すると、皿の上にとぷん、と半熟卵が落ちた。
「お、結構よくできてるんじゃない?」
「言った通りぷるぷるね。おいしそうだわ」
もう一つ皿を用意し、後一個卵を割る。そちらもうまく半熟卵になっていた。
味付けは……本来なら魚のダシとか醤油などのソース系が合うのだろうけど、あいにく持ち合わせがない。オリーブオイルと塩コショウかけちゃえ。多分変な事にはならないだろう。
片方の皿をライラに渡し、早速食べることに。
ぷるぷるした温泉卵なので、箸とか使わずもう一気に食べてしまおう。
ちゅるっと吸うように温泉卵を一気に口に含む。全部口に入れると、思ったよりも量が多くてびっくりした。
でも食べられないことは無い。ぷるぷるの白身に、とろとろの黄身。軽く噛むと黄身が弾け、濃厚な味が口の中に広がっていく。
濃厚でまろやかな卵の味に、塩コショウが効いたオリーブオイルが中々良いアクセントとなっている。意外と相性は悪くない。オリーブオイルの香りが爽やかだった。
「温泉卵、というより半熟のゆで卵なんて久しぶりに食べたかも。おいしかった」
「おいしいけど、若干溺れかけたわ。一気に食べる物ではないわね」
ライラは体が小さいから、一気に頬張ったらそうなるか。しかし、足湯に浸かりながら温泉卵で溺れかけるってどういう状況だ。
温泉卵を食べ終えた私たちは、もう少しだけ足湯を楽しんでから出発することにした。
……足湯、温かくてのぼせる心配も少ないから、ずっと入ってしまう……。
0
あなたにおすすめの小説
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる