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123話、浜辺でのんびりだらだら焼きそば食べる
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ミルラナ島の宿屋で一泊した翌日。
朝ごはんを軽く食べてから、何をするでもなく浜辺をのんびり歩いていた。
今日は一日どうしようか。カカミの町に戻ってもいいし、ミルラナ島をもう少し観光していくのも悪くない。
明るい日差しを浴びながらさざ波の音を聞いていると、何だか気持ちがのんびりと落ち着いていく。
……いっそのこと、今日は一日浜辺でゆっくりするのもいいかもしれない。
日々次の町を目指して歩き続け、町へつけば観光へ乗り出して結局歩いている。一日何もせずゆっくり休むというのも、良い息抜きだと思えた。
「よしっ、ライラ、今日は浜辺で一日ゆっくりしよう」
「いいけど、こんな日差しが強い中でじっとしてると日焼けしちゃうわよ」
「大丈夫、あっちでビーチパラソル貸し出してるから」
さっそくビーチパラソルの貸し出し所へ向かい、一日レンタルする。ついでにビーチチェアも借りた。
ビーチパラソルとチェアを片手に、浜辺の適当な場所を見繕う。
ミルラナ島の浜辺には結構人が居る。離島とは思えない賑わいは、ここが観光に適した島という証左でもあった。
でも今日はできるだけのんびりしたいので、こういう騒がしいのはあまりよくない。
なので人混みを避けるように浜辺の隅っこへと行き、そこへビーチパラソルを突き刺した。
パラソルの下にチェアを設置して、準備完了。
これでいますぐにでもくつろげる……けど。
その前に、まずは飲み物を確保しよう。
海風が涼しいとはいえ、日差しは強く気温も結構高い。こまめに水分補給しないと、気が付いた時には脱水症状になっている可能性もある。
幸い、観光客が訪れるビーチなので屋台は豊富。いわゆる海の家がそこかしこにあって、飲み物や食べ物に困る事はない。
さっそく飲み物を買いに行き、ビーチっぽい飲み物を求めた結果、パインジュースを購入した。
「よし、準備できたしゆっくりするぞー」
魔女帽子を外してビーチチェアに腰かけ、体を預ける。
ビーチチェアは座角が調整できるタイプで、かなり深い位置で背中を預ける事ができた。
ゆったり腰と背を預け、ストローを吸ってパインジュースを飲む。
甘みが強く酸味が際立つパインジュースが、この海風の中で爽やかだった。
「っはぁー……落ち着くぅー」
ぐでっと顔を上に向け、小さく息を吐く。
「だらけてるわね……」
ライラは堕落しきった私を見て呆れるように呟いていた。
「ライラもだらけなよ。今日はだらける日だよ。こういう日があってもいい。人間、息抜きも大事だから。だらけよう。ねっ、だらけよう」
「……妖精を堕落に誘う最低の言葉だわ」
言いつつも、ライラはビーチチェアのふちにかけておいた魔女帽子に体を預けた。
……私の帽子、ライラからしたらビーチチェアみたいなものなのか。
そのまま二人、ぐでーっとだらけきる。
海を眺めながら波の音を聞き、時折パインジュースを飲む。
ゆったりとした時間が流れていた。
本当に何をするでもなく、ただ無為に時間を消費する。
あるいはそれは、もったいないと言える時間だったかもしれない。
だけどこうして特に何も考えず、ただただ静かにゆっくりする。
時にはこういう時間が必要なのだ。
しかし悲しいかな。何もせずただだらけきっているのに、時間が経てばお腹が空いてしまう。
近くの屋台からは何やらおいしそうな匂いも漂ってくるし、軽く何か食べたい。
でも……ビーチチェアから動きたくない。
「ねーライラ」
「……なに?」
「何かごはん買ってきてよ」
「うっわっ、本当にだらけきってるわね。妖精の私にお使いを頼む? 普通。私の姿、普通の人には見えないのよ」
「そうだった……忘れてた」
「魔女がそういう事忘れないでよ」
「そうだ、私魔女だったね」
「だらけすぎたからってそれすら忘れる!? もしかしてこの魔女帽子を被ってないと魔女としての記憶を失うの……?」
いや、これは単にだらけすぎて寝ぼけかけているだけだ。
軽く首を振り、何とか体を起こす。
このまま寝てしまう前に、とりあえず何か買って空腹を満たそう。
よたよたと立ち上がり、屋台へと向かった。
屋台では今まさに鉄板の上で料理をしている。
どうやら作っているのは焼きそばのようだ。
熱した鉄板の上に油を引き、そこに豚肉とキャベツを乗せて炒め、そばを投入してかき混ぜるように焼き、仕上げにソースをたっぷりかけ、ソースを焦がしつつ麺と絡めていく。
そうして出来上がった焼きそばを紙パックに詰め、上から紅ショウガをたっぷり乗せて作り置きしているのだ。
よし、焼きそば食べよう。屋台には他にイカ焼きやらタコ焼きやらあったが、目の前で作られた熱々の焼きそばの誘惑には抗えなかった。
焼きそば一パックを購入し、また堕落のビーチパラソルの下に舞い戻る。
「っはぁー、落ちつくぅー」
「戻ってきて一瞬でだらけきったわね……」
呆れられつつも、ライラと二人、早速焼きそばを食べる事にした。
紅ショウガがたっぷり入った焼きそばはまだ熱々で、香ばしいソースの匂いが漂っている。実に食欲を誘う匂いだ。
さっそく一口、色々な具材と共にそばをすする。
「あっ、すごく味濃い」
ソースをたっぷり使って味付けしてあるからか、味はすごく濃い。紅ショウガの辛味が結構聞いていたが、それ以上にソース味。
なんというか、とても豪快な味だ。もっとはっきり言うと雑な味。
でもその雑さが良い。浜辺で海風を浴びながら食べると、この豪快な味付けがとても際立つのだ。
ある意味、海辺の光景が一番の調味料なのだろう。料理の味だけが重要なのではなく、食べる際のシチュエーションも大事なのだ。
なんて、グルメっぽい事を考えつつ焼きそばを食べ終えた私は、また吸い込まれるようにビーチチェアに背中を預けた。
はぁ~……落ち着く。海風と波の音が心地いい。
これが堕落の味なのか……。今はどんな料理よりも堕落がおいしい。
「ライラ……」
「なに?」
「明日もこうしてだらだらしようか……」
「それは人としてダメよ。さすがに戻れなくなるわ」
妖精に人としての道を説かれてしまった。
しかたないので、今日は心ゆくままだらだらして明日からまた旅を頑張ろう。
私はビーチチェアに更に深く背を預けるのだった。
朝ごはんを軽く食べてから、何をするでもなく浜辺をのんびり歩いていた。
今日は一日どうしようか。カカミの町に戻ってもいいし、ミルラナ島をもう少し観光していくのも悪くない。
明るい日差しを浴びながらさざ波の音を聞いていると、何だか気持ちがのんびりと落ち着いていく。
……いっそのこと、今日は一日浜辺でゆっくりするのもいいかもしれない。
日々次の町を目指して歩き続け、町へつけば観光へ乗り出して結局歩いている。一日何もせずゆっくり休むというのも、良い息抜きだと思えた。
「よしっ、ライラ、今日は浜辺で一日ゆっくりしよう」
「いいけど、こんな日差しが強い中でじっとしてると日焼けしちゃうわよ」
「大丈夫、あっちでビーチパラソル貸し出してるから」
さっそくビーチパラソルの貸し出し所へ向かい、一日レンタルする。ついでにビーチチェアも借りた。
ビーチパラソルとチェアを片手に、浜辺の適当な場所を見繕う。
ミルラナ島の浜辺には結構人が居る。離島とは思えない賑わいは、ここが観光に適した島という証左でもあった。
でも今日はできるだけのんびりしたいので、こういう騒がしいのはあまりよくない。
なので人混みを避けるように浜辺の隅っこへと行き、そこへビーチパラソルを突き刺した。
パラソルの下にチェアを設置して、準備完了。
これでいますぐにでもくつろげる……けど。
その前に、まずは飲み物を確保しよう。
海風が涼しいとはいえ、日差しは強く気温も結構高い。こまめに水分補給しないと、気が付いた時には脱水症状になっている可能性もある。
幸い、観光客が訪れるビーチなので屋台は豊富。いわゆる海の家がそこかしこにあって、飲み物や食べ物に困る事はない。
さっそく飲み物を買いに行き、ビーチっぽい飲み物を求めた結果、パインジュースを購入した。
「よし、準備できたしゆっくりするぞー」
魔女帽子を外してビーチチェアに腰かけ、体を預ける。
ビーチチェアは座角が調整できるタイプで、かなり深い位置で背中を預ける事ができた。
ゆったり腰と背を預け、ストローを吸ってパインジュースを飲む。
甘みが強く酸味が際立つパインジュースが、この海風の中で爽やかだった。
「っはぁー……落ち着くぅー」
ぐでっと顔を上に向け、小さく息を吐く。
「だらけてるわね……」
ライラは堕落しきった私を見て呆れるように呟いていた。
「ライラもだらけなよ。今日はだらける日だよ。こういう日があってもいい。人間、息抜きも大事だから。だらけよう。ねっ、だらけよう」
「……妖精を堕落に誘う最低の言葉だわ」
言いつつも、ライラはビーチチェアのふちにかけておいた魔女帽子に体を預けた。
……私の帽子、ライラからしたらビーチチェアみたいなものなのか。
そのまま二人、ぐでーっとだらけきる。
海を眺めながら波の音を聞き、時折パインジュースを飲む。
ゆったりとした時間が流れていた。
本当に何をするでもなく、ただ無為に時間を消費する。
あるいはそれは、もったいないと言える時間だったかもしれない。
だけどこうして特に何も考えず、ただただ静かにゆっくりする。
時にはこういう時間が必要なのだ。
しかし悲しいかな。何もせずただだらけきっているのに、時間が経てばお腹が空いてしまう。
近くの屋台からは何やらおいしそうな匂いも漂ってくるし、軽く何か食べたい。
でも……ビーチチェアから動きたくない。
「ねーライラ」
「……なに?」
「何かごはん買ってきてよ」
「うっわっ、本当にだらけきってるわね。妖精の私にお使いを頼む? 普通。私の姿、普通の人には見えないのよ」
「そうだった……忘れてた」
「魔女がそういう事忘れないでよ」
「そうだ、私魔女だったね」
「だらけすぎたからってそれすら忘れる!? もしかしてこの魔女帽子を被ってないと魔女としての記憶を失うの……?」
いや、これは単にだらけすぎて寝ぼけかけているだけだ。
軽く首を振り、何とか体を起こす。
このまま寝てしまう前に、とりあえず何か買って空腹を満たそう。
よたよたと立ち上がり、屋台へと向かった。
屋台では今まさに鉄板の上で料理をしている。
どうやら作っているのは焼きそばのようだ。
熱した鉄板の上に油を引き、そこに豚肉とキャベツを乗せて炒め、そばを投入してかき混ぜるように焼き、仕上げにソースをたっぷりかけ、ソースを焦がしつつ麺と絡めていく。
そうして出来上がった焼きそばを紙パックに詰め、上から紅ショウガをたっぷり乗せて作り置きしているのだ。
よし、焼きそば食べよう。屋台には他にイカ焼きやらタコ焼きやらあったが、目の前で作られた熱々の焼きそばの誘惑には抗えなかった。
焼きそば一パックを購入し、また堕落のビーチパラソルの下に舞い戻る。
「っはぁー、落ちつくぅー」
「戻ってきて一瞬でだらけきったわね……」
呆れられつつも、ライラと二人、早速焼きそばを食べる事にした。
紅ショウガがたっぷり入った焼きそばはまだ熱々で、香ばしいソースの匂いが漂っている。実に食欲を誘う匂いだ。
さっそく一口、色々な具材と共にそばをすする。
「あっ、すごく味濃い」
ソースをたっぷり使って味付けしてあるからか、味はすごく濃い。紅ショウガの辛味が結構聞いていたが、それ以上にソース味。
なんというか、とても豪快な味だ。もっとはっきり言うと雑な味。
でもその雑さが良い。浜辺で海風を浴びながら食べると、この豪快な味付けがとても際立つのだ。
ある意味、海辺の光景が一番の調味料なのだろう。料理の味だけが重要なのではなく、食べる際のシチュエーションも大事なのだ。
なんて、グルメっぽい事を考えつつ焼きそばを食べ終えた私は、また吸い込まれるようにビーチチェアに背中を預けた。
はぁ~……落ち着く。海風と波の音が心地いい。
これが堕落の味なのか……。今はどんな料理よりも堕落がおいしい。
「ライラ……」
「なに?」
「明日もこうしてだらだらしようか……」
「それは人としてダメよ。さすがに戻れなくなるわ」
妖精に人としての道を説かれてしまった。
しかたないので、今日は心ゆくままだらだらして明日からまた旅を頑張ろう。
私はビーチチェアに更に深く背を預けるのだった。
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