魔女リリアの旅ごはん

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172話、ビュッフェの町

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 ひとまずクロエの魔術遺産の調査が終わった。クロエいわく、後は帰宅して今回の調査を報告書形式でまとめたら一段落とのことらしい。
 だけどせっかくこうして会ったのだから、このまま簡単にお別れするより、どこかの町でお別れ会ならぬ食事会を最後にして別れたい。

 そう私が提案すると、クロエも時間は全然あるらしく、好意的に了承してくれた。
 とのことで箒で湿地帯を飛び越えて、見えてきた町へと降り立つ。そこは結構栄えたクランという名の町だった。

 クランの町に着いたのは夕方を迎える頃。ちょうど夕食時が近いので、まずは町を軽く見回りクロエとのお別れ食事会をするのに適したお店を見繕う。どうせなら豪勢な食事をしたいところだ。
 そうして色々町の事を調べていると、ここが結構独特な食文化を形成しているのがわかった。

 どうもこの町は様々な土地から来た人々が住んでいるらしく、その分食の好みも多岐に分かれているらしい。
 しかし、一飲食店では多種多様な食文化に対応する様々な料理を出すのは大変だ。かといって一つの食文化に特化したお店にすると、お客を限定してしまうので商売としては上手くない。

 そこで多くの飲食店が手を出したのが、ビュッフェスタイル。ビュッフェとはテーブルに並べられた様々な料理を自由に自分の皿へ盛りつける食事形式だ。
 高級店などではコース料理のように前菜、メイン、デザート、と数回に分けて取るようなマナーなどがあるが、この町では大衆食堂でのビュッフェが主なので、そういう細かい形式はなく自由に食べ放題らしい。

 色んな料理が楽しめるビュッフェ形式の食べ放題は観光客にも人気らしく、今ではこのクランの町は別名ビュッフェの町とも呼ばれている。

 そんな特色の町なので、当然私達もビュッフェを楽しむことにした。空も暗くなってきた頃合いに賑わうお店へと入店し、大きなプレートの上に大小様々な形状のお皿を置いていく。
 それを持って、いざ取り放題のビュッフェへ。

「うわっ、料理いっぱいあるっ」

 賑わっている人気店とはいえ、そこまで高級なお店ではない。それでも広い店内の中央にはたくさんの料理が置かれていた。サラダはもちろん、揚げ物、煮物、スープ、お肉や魚のメイン料理、果てはデザートと目白押し。

 こんなにたくさんの料理があるが、食べられるのは数種類が限度だろう。ついついたくさん取りそうになるが、食べ切れる量で留めないと後で困る。食べ放題のビュッフェ形式が当然のこの町では、盛りつけた料理を残したら罰金という制度があるのだ。
 だから目に見えて大盛りにしている人は少ない。基本的には数種類の料理を取り、それを食べてまだ足りないなら再度料理を取りに行くのが普通のようだ。

 とはいえ、せっかく自分で料理を取って盛り付けるのだから、できれば一回だけで大満足できるセットにしたい。何度も取りに行くよりそっちの方が格好いいじゃん。
 加えて盛りつけのセンスなんかにも気を使いたくなる。皆と一緒にビュッフェなんだから、こう、綺麗な盛り付けを見せびらかせて一目置かれたいじゃん。特に私は原始的魔女とまで呼ばれているんだから。

 そんな思惑もあり、むむむと唸りながら料理を一品一品見ていく。時間をかけているせいか、いつの間にかクロエもベアトリスもライラも私の側にはいなかった。
 だけど焦るんじゃない。最初に取るのは重要だ。最初の一品でこのお皿の上のバランスが全て決まると言っても過言では……。

「あ、かぼちゃだ」

 かぼちゃの煮物がある。と思った瞬間、私は無心でかぼちゃの煮物を小皿に盛りつけていた。
 ……いやいや、かぼちゃ大好きだから仕方ないよ。次はこのかぼちゃに合う料理を選べば……。

「え、天ぷらまであるの?」

 以前ルキョウの町で天ぷらを食べたけど、あれはかなりおいしかった。サクサク食感で揚げ物なのに油っぽさも少なく、さっぱりした後味。
 天ぷらは食べよう。まずはエビと……えっ!? かぼちゃがある!?

 かぼちゃの天ぷらは食べたことない。そう思った瞬間私はかぼちゃの天ぷらを取っていた。

 ……どうするんだよ、かぼちゃ被っちゃったよ。
 ……まあまあまあまあ、かぼちゃは大好物だから二品被ってもいいよ別に。うん。

 とか思ってたら、スープコーナーへやってきてすぐに驚愕で体が固まってしまった。

「……かぼちゃのスープあるじゃん」

 黄金色のツヤツヤ輝くかぼちゃスープ。後のせのクルトンまで別皿で置かれている。

 どうしよう……飲みたい。かぼちゃ被りまくりだけど……かぼちゃのスープとそれにひたしたパンは大好物だし……。
 とか思っている間にかぼちゃのスープを深皿に入れてしまっていた。

 ……おかしいな。お皿の上がかぼちゃまみれだぞ。
 思わず頭を抱えそうになったけど、必死にこらえてパンを取る。

 冷静に考えよう。もうここまで来たら最後まで突っ走るしかないんじゃないだろうか?
 つまりかぼちゃ尽くしにする。それならクロエ達も、あ、こいつかぼちゃテーマで盛りつけたんだな、って思ってくれるはず。
 よし、それでいこう。

 となるとサラダがいるな。かぼちゃのサラダ。
 あと、こうなってくるとエビの天ぷらがなんか変だな。一つだけエビ天ってどうなんだろ。うーん……肉も魚もないし、揚げ物繋がりで魚のフライとからあげも取っておこう。
 ……ますます訳分からなくなってきたな? なんだこの盛りつけ。センスの欠片もない。

 でももうこれ以上食べるのはキツいので、ここでストップ。皆を探すとすでにテーブル席へ着席していたので合流する。
 私のお皿を見て皆何て言うかな……自分でも思うけど完全に失敗してるんだよなぁ。

 そう思いながら席に座って皆の料理を見ると……。

「え、ライラ、カニ尽くしだ……」

 ライラは自分の体に合ったサイズのお皿に料理を盛りつけているが、そこにあるのは全部カニ料理。カニの身が入ったサラダに、茹でガニの足が数本、そしてカニ玉。

「カニー♪」

 これはいくらなんでも……と思ってたら、ライラは大満足していた。
 クロエの方はというと……。

「……デザートばっかりじゃん」

 クロエはクロワッサンを一つに、後は全部デザート。プリンに色んなケーキにパイなど色々。そんなに甘い物食べたいのか。

「前から私は思っていた……ごはんはほぼデザートでいいと」

 前から何を思ってたんだこいつ。しかしさすが幼馴染。モニカが居たら絶対肉尽くしにしていただろうし、クロエがデザート尽くしでむしろほっとしたと言うかなんと言うか。私もかぼちゃまみれだし。
 やはり私達幼馴染は似た者同士。そこにライラも入れればもうこんなビュッフェプレートでも恥ずかしくないっ。

 安心した私は早速料理にかぶりつくのだった。
 かぼちゃおいしー♪

「……あなた達、取り放題のセンスひどすぎるわね」

 ただ一人、綺麗に盛り付けた料理皿を前にするベアトリスだけが呆れたように私達を見ていた。
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