172 / 185
173話、ビアガーデンでフルーツビール
しおりを挟む
クランの町二日目のお昼頃。昨日お別れ食事会をした後皆で一泊し、クロエは朝食を食べたらそのまま自分の家へと戻ってしまった。
なのでいつも通り、私とベアトリスにライラで町の観光を始めていた。
クランの町は色んな土地の人々が寄り集まってできているので、市場なんかも様々な物が売っている。
それを物珍しげに見ていた時、急にベアトリスが言った。
「ビアガーデンに行きたいわ」
急になに言いだしてるんだろ。と思ってたら、ベアトリスが市場のお店とお店の間の壁を指さした。
そこには張り紙がされてあり、こう書いている。
ビアガーデン開催中。12時~24時。カゾンフラワーガーデンにて。
なるほど、ベアトリスはこの張り紙を見たからビアガーデンに行きたいと急に言いだしたのか。
でも、一つ疑問がある。
「ビアガーデンって……なに?」
「屋外でビールが飲めるイベントよ」
ビールか……つまりお酒か。
「別に行ってもいいけどさ、私お酒苦手なんだけど」
お酒好きのベアトリスが行きたがるのは分かるし、ライラもお酒飲めるからいい。でも私はお酒は苦手だから、屋外で飲むのはちょっと不安だ。しかもこんな真昼間に。
「大丈夫よ。ほらこの張り紙の下に書いてあるでしょ? フルーツビール提供中って」
「……フルーツビールってのにもピンと来ないんだけど」
言葉そのままを受け取ると、フルーツが入ってるように聞こえる。さすがにそんなわけないよね。
「ビールに果汁とかフルーツの香料が加えられているのをフルーツビールと呼ぶのよ。アルコール度数が低いのもあってジュースみたいに飲めるから、リリアでもきっと大丈夫だと思うけど」
ビールにフルーツ? ええ? 本当に?
以前飲んだ黒ビールを思い出す。ビールってあの独特の苦みと後味があるものだ。なのにフルーツの味が入ったら味のバランスが変にならないかな。
極端な話、甘くて苦いっていう変なことになりそう。
でも、こんな機会でもないと私がビアガーデンとやらに行くことは無いだろうと思うし、ベアトリスに付き合ってもいいかな。
「わかった。いいよ、行こうビアガーデン」
「やったわ!」
ベアトリスはお酒が飲めるのがそんなに嬉しいのか、ライラとハイタッチしていた。
……この二日酔い吸血鬼め。
ビアガーデンが開催されているカゾンフララーガーデンは、市場からそう遠くない場所にあった。
フラワーガーデンというだけあって、綺麗な花畑が広がっている公園だ。そこの芝生にたくさんの木製テーブル席が置かれていて、少し離れたテントでビールを販売していた。
昼間だというのに結構人でにぎわっている。お昼からお酒を飲めるなんて、こういうイベント時くらいしかないからかも。
「ビール以外にもおつまみが売ってるわね。ちょうどいいからここでお昼も食べましょう」
目に見えてウキウキしているベアトリスは、早足でビール売り場に向かった。それに遅れて私とライラはついていく。
「……本当だ。フルーツビールがある」
ベアトリスが言ったように、通常のビールの他フルーツビールも売っていた。有り難いことにアルコール度数も書かれてあり、低いのでは1パーセント未満でほぼジュースみたいなのもあった。これなら私でも飲めそう。
「おすすめある?」
ベアトリスに聞いてみる。
「私もフルーツビールは飲んだことないのよ、実は。リリアはアルコール苦手なんだし、度数が低くて甘めのがいいんじゃない? パイナップルとかどう? 甘いけど酸味もあってすっきりしてると思うわ」
「じゃあそれにしよ。ライラはどうするの?」
ライラもフルーツビールに興味あるのか、ふよふよ漂いながら見本のフルーツビールの匂いをそれぞれ嗅いでいた。
「私はりんごにするわ。とてもいい香りよ。ベアトリスは?」
「私は……ラズベリーはないのね、なら木苺にするわ」
意外にもベアトリスもフルーツビールだった。飲んだこと無いって言ってたし、そもそもフルーツビールに興味があってビアガーデンに来たかったのかも。
三人とも飲みたいビールを決めたので、後はお昼兼おつまみを買っていく。
焼き鳥、ポテトとウインナーの炒め物、イカのバター炒め、それとナッツ類を色々。
ビールとたくさんのおつまみを手にしてテーブル席へと着席する。お昼とは思えない光景だ。
三人ビールジョッキを手にして、軽くふちを打ちつけ合う。
「かんぱ~い」
ぐびっとパインのフルーツビールを一口。
しゅわっとした気持ちいい炭酸に、パインの甘みと香りが口に広がる。
ビール特有の苦みはほとんどなくて、でもやっぱりどこかビールの独特なクセがあり、ジュースのようでジュースではない感じがあった。
確かにこれはビールだ。ビールだけどフルーツをしっかり感じる。アルコール度数も低くて、私でもおいしく飲めた。
とはいえアルコールはアルコール。うっかり一気に飲み過ぎたら酔ってしまうだろうから気を付けよう。
そう自分を戒める私と違って、お酒に強いベアトリスとライラは良い飲みっぷりだった。
乾杯してからの一口目だというのに、ぐびぐび飲んでいき一気にジョッキの半分まで無くしてしまったのだ。
「っはぁ~~っ。やっぱりお酒はおいしいわねっ。こう日差しが熱い時のビールは最高だわ」
照りつける太陽の光を浴びながら、豪快にビールを飲むベアトリス。
……一応吸血鬼だよね? 吸血鬼のくせに日光浴びながらおいしそうにビール飲んでるのなんなの?
「りんごのビールおいしー! お代わりしてくるわ」
ライラもライラだ。昼間からビールがばがば飲む妖精ってなんなの。神秘性ゼロだよ。
お昼からビールを飲む吸血鬼と妖精を目の当たりにしていると、もはや白昼夢を見ているかのようだ。冷静に考えたら変な状況なんだよな、これ。
……まあいいか。今更だもんね。
ビールをそこそこにおつまみを食べていく私だった。
なのでいつも通り、私とベアトリスにライラで町の観光を始めていた。
クランの町は色んな土地の人々が寄り集まってできているので、市場なんかも様々な物が売っている。
それを物珍しげに見ていた時、急にベアトリスが言った。
「ビアガーデンに行きたいわ」
急になに言いだしてるんだろ。と思ってたら、ベアトリスが市場のお店とお店の間の壁を指さした。
そこには張り紙がされてあり、こう書いている。
ビアガーデン開催中。12時~24時。カゾンフラワーガーデンにて。
なるほど、ベアトリスはこの張り紙を見たからビアガーデンに行きたいと急に言いだしたのか。
でも、一つ疑問がある。
「ビアガーデンって……なに?」
「屋外でビールが飲めるイベントよ」
ビールか……つまりお酒か。
「別に行ってもいいけどさ、私お酒苦手なんだけど」
お酒好きのベアトリスが行きたがるのは分かるし、ライラもお酒飲めるからいい。でも私はお酒は苦手だから、屋外で飲むのはちょっと不安だ。しかもこんな真昼間に。
「大丈夫よ。ほらこの張り紙の下に書いてあるでしょ? フルーツビール提供中って」
「……フルーツビールってのにもピンと来ないんだけど」
言葉そのままを受け取ると、フルーツが入ってるように聞こえる。さすがにそんなわけないよね。
「ビールに果汁とかフルーツの香料が加えられているのをフルーツビールと呼ぶのよ。アルコール度数が低いのもあってジュースみたいに飲めるから、リリアでもきっと大丈夫だと思うけど」
ビールにフルーツ? ええ? 本当に?
以前飲んだ黒ビールを思い出す。ビールってあの独特の苦みと後味があるものだ。なのにフルーツの味が入ったら味のバランスが変にならないかな。
極端な話、甘くて苦いっていう変なことになりそう。
でも、こんな機会でもないと私がビアガーデンとやらに行くことは無いだろうと思うし、ベアトリスに付き合ってもいいかな。
「わかった。いいよ、行こうビアガーデン」
「やったわ!」
ベアトリスはお酒が飲めるのがそんなに嬉しいのか、ライラとハイタッチしていた。
……この二日酔い吸血鬼め。
ビアガーデンが開催されているカゾンフララーガーデンは、市場からそう遠くない場所にあった。
フラワーガーデンというだけあって、綺麗な花畑が広がっている公園だ。そこの芝生にたくさんの木製テーブル席が置かれていて、少し離れたテントでビールを販売していた。
昼間だというのに結構人でにぎわっている。お昼からお酒を飲めるなんて、こういうイベント時くらいしかないからかも。
「ビール以外にもおつまみが売ってるわね。ちょうどいいからここでお昼も食べましょう」
目に見えてウキウキしているベアトリスは、早足でビール売り場に向かった。それに遅れて私とライラはついていく。
「……本当だ。フルーツビールがある」
ベアトリスが言ったように、通常のビールの他フルーツビールも売っていた。有り難いことにアルコール度数も書かれてあり、低いのでは1パーセント未満でほぼジュースみたいなのもあった。これなら私でも飲めそう。
「おすすめある?」
ベアトリスに聞いてみる。
「私もフルーツビールは飲んだことないのよ、実は。リリアはアルコール苦手なんだし、度数が低くて甘めのがいいんじゃない? パイナップルとかどう? 甘いけど酸味もあってすっきりしてると思うわ」
「じゃあそれにしよ。ライラはどうするの?」
ライラもフルーツビールに興味あるのか、ふよふよ漂いながら見本のフルーツビールの匂いをそれぞれ嗅いでいた。
「私はりんごにするわ。とてもいい香りよ。ベアトリスは?」
「私は……ラズベリーはないのね、なら木苺にするわ」
意外にもベアトリスもフルーツビールだった。飲んだこと無いって言ってたし、そもそもフルーツビールに興味があってビアガーデンに来たかったのかも。
三人とも飲みたいビールを決めたので、後はお昼兼おつまみを買っていく。
焼き鳥、ポテトとウインナーの炒め物、イカのバター炒め、それとナッツ類を色々。
ビールとたくさんのおつまみを手にしてテーブル席へと着席する。お昼とは思えない光景だ。
三人ビールジョッキを手にして、軽くふちを打ちつけ合う。
「かんぱ~い」
ぐびっとパインのフルーツビールを一口。
しゅわっとした気持ちいい炭酸に、パインの甘みと香りが口に広がる。
ビール特有の苦みはほとんどなくて、でもやっぱりどこかビールの独特なクセがあり、ジュースのようでジュースではない感じがあった。
確かにこれはビールだ。ビールだけどフルーツをしっかり感じる。アルコール度数も低くて、私でもおいしく飲めた。
とはいえアルコールはアルコール。うっかり一気に飲み過ぎたら酔ってしまうだろうから気を付けよう。
そう自分を戒める私と違って、お酒に強いベアトリスとライラは良い飲みっぷりだった。
乾杯してからの一口目だというのに、ぐびぐび飲んでいき一気にジョッキの半分まで無くしてしまったのだ。
「っはぁ~~っ。やっぱりお酒はおいしいわねっ。こう日差しが熱い時のビールは最高だわ」
照りつける太陽の光を浴びながら、豪快にビールを飲むベアトリス。
……一応吸血鬼だよね? 吸血鬼のくせに日光浴びながらおいしそうにビール飲んでるのなんなの?
「りんごのビールおいしー! お代わりしてくるわ」
ライラもライラだ。昼間からビールがばがば飲む妖精ってなんなの。神秘性ゼロだよ。
お昼からビールを飲む吸血鬼と妖精を目の当たりにしていると、もはや白昼夢を見ているかのようだ。冷静に考えたら変な状況なんだよな、これ。
……まあいいか。今更だもんね。
ビールをそこそこにおつまみを食べていく私だった。
0
あなたにおすすめの小説
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる