持ち込み商品で異世界交流!

きっこ

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「咲さん~!」

店を開けて間もなく、アランとデュランの元気な声が響いた。今日は二人とも、ちょっときれいめなシャツ姿で髪も丁寧に整えてる。どうしたの?って聞きたいくらい。

「こんにちは!ふたりとも元気そうね~。今日はお母さんは?」

「ちょっと遅れて来るって!」

「あとで来るって言ってたよ~!」

そうか、今日も来てくれるんだ。あの優しいお母さん。お仕事忙しそうなのに、こうして顔を出してくれるのは嬉しい。

「お菓子の新しいの、増えてるかな~?この前のミルクのやつ美味しかった!」

「俺はパチパチのやつ!ラムネ、また買ってくって決めてるもん!」

ふたりとも、ほんとうに素直でいい子たちだなぁ。こういうお客さんが来てくれると、こっちも自然と笑顔になる。

「もちろん仕入れてるよ~。今日は新しい香りのリップもあるから、ママさんにオススメしてみてね」

「わかった!リップって、口のやつでしょ?ママ、この前“すごく良かった”って言ってた!」

「そうそう。お屋敷の人たちも欲しがってるらしくてさ、今度まとめて買いたいって言ってたよ」

おや、イグラムくん登場。少し汗をかいた顔で小走りに駆け寄ってきた。

「イグラムくんもこんにちは!今日も元気だね~」

「父上がね、ちょっとした集まりがあるからって、咲さんのお菓子や香りのものを“贈り物”にしたいって言ってたんだ。だから、相談できたらなって」

贈り物…? おぉ~、異世界でギフト需要ってかなり大きいんじゃ…?

「もちろん大歓迎だよ。詰め合わせとか、組み合わせも考えてみようか?」

「うん、それがいいと思う!あとね──」

イグラムくんが口を開きかけたとき、

「お姉ちゃんっ!」

パタパタと、ミーニャちゃんが後ろから飛び込んできた。後ろには彼女のお世話をしている屋敷の女性と、少し遅れて領主様の奥様──お母様らしき女性の姿が見える。

(あっ、ついに…!)

お母様は、上品で落ち着いた雰囲気。ミーニャちゃんの耳をふんわりと撫でるようなまなざしで見守っていて、あぁ、本当にお母さんしてる方なんだなって、安心する。

「はじめまして、いつも娘たちが大変お世話になっております。お礼が遅れてしまって…申し訳ありません」

「いえ、とんでもないです!こちらこそ、皆さんが温かく迎えてくださって…感謝しています」

少し会釈し合っただけなのに、不思議と心が和らぐ。やっぱりお母様がしっかりされてると、家全体の雰囲気が安定するんだなあ。

───

その日の営業が落ち着いたころ。

咲は、イグラムから少しだけ真剣な相談を受けていた。

「ねぇ、咲さん……。この世界に、“迷い込んでる子”がいたら、どうする?」

「……どうするって?」

「カナトくんがね、そう言ってたんだ。“誰かがここに来てる気がする”って。“でも呼ばれてない”って」

それは──リクくん、なのか?

「咲さん、知ってる?“呼ばれずに転生してくる”って、あんまりないらしいよ」

「うん……でも、可能性はあるよね」

「うん。カナトくん、ちゃんと誰かに“準備された”らしいんだ。でも、別の誰かは──ただ、ここに来ちゃった。それが、誰なのか……わからないんだって」

胸がぎゅっと締め付けられる。

たぶん、それはリクくんだ。今はまだ確信がない。でも、どこかで糸がつながっている感覚がある。

「わたし、ちょっと……現代のほうでも探してみるよ。心当たりがあるんだ」

「そう? なんだか……咲さんが見つけられる気がするよ」

イグラムが優しく微笑む。まるで、何かを知ってるかのような──そんなまなざしで。

(きっともうすぐ、つながる)

咲は小さくうなずいて、明日また会おうねと別れを告げた。

───

夜、現代に戻った咲は、アパートの向かいのリクくんの家をちらりと見上げた。

明かりはついてる。彼は、今どんな夢を見ているのだろう。

次に出会えたら、今度はちゃんと、話しかけてみよう──。

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