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光と影
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差別というものは、どれだけ平和で幸福な国であっても無くなりはしない。
自分より劣るものがあれば、それを助けようとする者も、蔑もうとする者もいる。それが戦争の真っただ中ならなおさらだ。神々の地に人間がいれば、差別を受けるのは当然と言えば当然なのかもしれない。
そして蔑む側が神なら、人間同士のそれよりも痛ましい結果となるのもまた当然と言えよう。
二人が駆け付けた先にあった光景は、誰が見ても戦慄に値するものだった。
巨人族と思われる大男が、人間と思われる少女を見下していた。しかも少女はかなり負傷している。状況からみて、巨人の男がやったのだろう。
その光景を目にした夜刀は、前に出て大男と向き合った。
「何してるの!?」
夜刀の言葉に大男が振り返って答える。
「そんなの決まってるだろ、コイツが人間だからだよ‼」
そう言って男は少女を蹴る。
蹴られた少女は壁に叩きつけられ、ガクリと項垂れて動かなくなった。
「貴方、私が怒る前に帰った方が身のためですよ」
そう言う夜刀の顔は一切笑っておらず、妖の様な気味さすら漂っていた。
「ハッ‼ お前みたいなチビに何が出来るってんだ。お前が失せろ」
「そうですか・・・なら、仕方ないですね」
そう言うと夜刀は、どんどん男に近づいていった。
男は夜刀が近づくのを見ると、拳を大きく振り上げ、そして勢いよく振り下ろす。
「危な・・・っ‼」
ウリエルが声を上げるころには、男は地面に伏していた。
ウリエルもしっかりと見たわけではないが、男の拳を受け流すと、その勢いを利用して投げ飛ばしたのだ。体格が二倍の差もあろうかという大男を、いとも簡単に。
「なん、どうやって・・・」
ウリエルが驚愕の表情を浮かべると、夜刀が苦笑いしながら種明かしをした。
「父と祖母が、東洋空手っていう武術の達人なんだ。だから小さい頃からずっと教え込まれてるんだよね」
「へ、へえ・・・」
この子は絶対に怒らせちゃいけない、そう心に誓ったウリエルであった。
「あ、あの子・・・‼」
ウリエルは少女に駆け寄ると、傷の具合を確かめる。
「急いで医務室に連れてかないと・・・」
「ううん、あばらが折れてる。他にも折れてる所もあるかもしれないから、うかつに動かしちゃダメ」
「でも、このままじゃ・・・」
「大丈夫、任せて」
ウリエルはそう言うと、少女に手をかざして言葉を唱える。
「《癒しの光を我が手に》」
それは太古から語り継がれる、神々の御業。
ウリエルの手から流れる光が少女を包み込むと、みるみる傷が塞がり始めた。
「ウリエルさん、貴女魔法を使えるの?」
夜刀が質問すると、ウリエルは少し暗い顔で答えた。
「まあ、これくらいしか出来ることがないから。家事も出来ないし、他には何の取り得も無い」
「そんなことないよ。その年で魔法が使えるだけでもすごいよ」
夜刀が言う通り、神々であっても古の魔法を使える者は少ない。
使えるのは、今ではアトランティスや、東のヤマト帝国、そして南のキリクス連邦の貴族や王族のみとなってしまった。
「まあ、うちの家系は使える人が多いので、あんま気にしてなかったんだけど」
「いいや、十分すごいよ」
そう言われても、ウリエルは顔を暗くしたままだった。
「う、あ、あれ? どこも、痛くない?」
少女が目覚めた。だがまだ自分に何が起きたのか分からず混乱している様だ。
「大丈夫? もう痛いところない?」
ウリエルが少女に聞くと、少女は二人を無視して走り去ってしまった。
「何あの子、助けてあげたのに・・・」
ウリエルは憤るが、夜刀は反対に心配そうな眼差しで、少女が走った方向を見つめていた。
自分より劣るものがあれば、それを助けようとする者も、蔑もうとする者もいる。それが戦争の真っただ中ならなおさらだ。神々の地に人間がいれば、差別を受けるのは当然と言えば当然なのかもしれない。
そして蔑む側が神なら、人間同士のそれよりも痛ましい結果となるのもまた当然と言えよう。
二人が駆け付けた先にあった光景は、誰が見ても戦慄に値するものだった。
巨人族と思われる大男が、人間と思われる少女を見下していた。しかも少女はかなり負傷している。状況からみて、巨人の男がやったのだろう。
その光景を目にした夜刀は、前に出て大男と向き合った。
「何してるの!?」
夜刀の言葉に大男が振り返って答える。
「そんなの決まってるだろ、コイツが人間だからだよ‼」
そう言って男は少女を蹴る。
蹴られた少女は壁に叩きつけられ、ガクリと項垂れて動かなくなった。
「貴方、私が怒る前に帰った方が身のためですよ」
そう言う夜刀の顔は一切笑っておらず、妖の様な気味さすら漂っていた。
「ハッ‼ お前みたいなチビに何が出来るってんだ。お前が失せろ」
「そうですか・・・なら、仕方ないですね」
そう言うと夜刀は、どんどん男に近づいていった。
男は夜刀が近づくのを見ると、拳を大きく振り上げ、そして勢いよく振り下ろす。
「危な・・・っ‼」
ウリエルが声を上げるころには、男は地面に伏していた。
ウリエルもしっかりと見たわけではないが、男の拳を受け流すと、その勢いを利用して投げ飛ばしたのだ。体格が二倍の差もあろうかという大男を、いとも簡単に。
「なん、どうやって・・・」
ウリエルが驚愕の表情を浮かべると、夜刀が苦笑いしながら種明かしをした。
「父と祖母が、東洋空手っていう武術の達人なんだ。だから小さい頃からずっと教え込まれてるんだよね」
「へ、へえ・・・」
この子は絶対に怒らせちゃいけない、そう心に誓ったウリエルであった。
「あ、あの子・・・‼」
ウリエルは少女に駆け寄ると、傷の具合を確かめる。
「急いで医務室に連れてかないと・・・」
「ううん、あばらが折れてる。他にも折れてる所もあるかもしれないから、うかつに動かしちゃダメ」
「でも、このままじゃ・・・」
「大丈夫、任せて」
ウリエルはそう言うと、少女に手をかざして言葉を唱える。
「《癒しの光を我が手に》」
それは太古から語り継がれる、神々の御業。
ウリエルの手から流れる光が少女を包み込むと、みるみる傷が塞がり始めた。
「ウリエルさん、貴女魔法を使えるの?」
夜刀が質問すると、ウリエルは少し暗い顔で答えた。
「まあ、これくらいしか出来ることがないから。家事も出来ないし、他には何の取り得も無い」
「そんなことないよ。その年で魔法が使えるだけでもすごいよ」
夜刀が言う通り、神々であっても古の魔法を使える者は少ない。
使えるのは、今ではアトランティスや、東のヤマト帝国、そして南のキリクス連邦の貴族や王族のみとなってしまった。
「まあ、うちの家系は使える人が多いので、あんま気にしてなかったんだけど」
「いいや、十分すごいよ」
そう言われても、ウリエルは顔を暗くしたままだった。
「う、あ、あれ? どこも、痛くない?」
少女が目覚めた。だがまだ自分に何が起きたのか分からず混乱している様だ。
「大丈夫? もう痛いところない?」
ウリエルが少女に聞くと、少女は二人を無視して走り去ってしまった。
「何あの子、助けてあげたのに・・・」
ウリエルは憤るが、夜刀は反対に心配そうな眼差しで、少女が走った方向を見つめていた。
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