ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。

ピラフドリア

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第6話 『見習いクエスト』

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ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。



著者:ピラフドリア



第6話
『見習いクエスト』




 朝食を終えた俺達見習い三人の前にウィンクは、一枚の紙切れを持ってやってくる。



「見習い用のクエスト? そんなクエストがあるんですか?」



 俺が首を傾げると、レジーヌがフンと鼻で笑う。



「そんなクエストあるわけないでしょ。ウィンクさんが私達のレベルに合わせたクエストをギルドから探してきてくれたのよ」



 威張るレジーヌを俺はガンを飛ばす。



「鼻で笑うなよ! 分かってるての!!」



「はぁ? クッズが理解できてなさそうだったから、説明してあげたのよ。分かってるならそんな間抜けな顔するんじゃないわよ」



 俺とレジーヌがガンを飛ばして睨み合っていると、その様子にウィンクが微笑む。



「仲良くなったみたいで良かった良かった」



「「仲良くなってない!!」」



「そ、そうか…………」



 俺とレジーヌがハモるとウィンクは頬を指で掻いて少し困り顔をする。



「まぁ、お前達見習いにとって初めてのチーム作業だ。クエストの達成具合によっては修行をもっと厳しくする」



 ウィンクの言葉に俺達三人は肩をビクッと震わせた。



 この一ヶ月。かなり厳しい日々が続いていた。ドミニクの時間を除き、どの修行の時間もハードな内容。
 三人揃ってこれ以上内容が厳しくなったら、もう身体が保たないと確信していた。



 これ以上厳しくしないためにも、クエストを完璧にこなすしかない。俺はウィンクの持つ紙を受け取ってクエスト内容を見る。
 そこには……。



「ドドドドドドドッ!? ドラゴンの討伐!?」



 クエスト内容にはドラゴンの討伐と書かれていた。



「いや、絶対これ見習い向けじゃねェェ!!」



 俺が叫ぶと、隣でエイコイが首を上下に振っている。エイコイも俺と同じ意見らしい。しかし、



「クズども、ウィンクさんが間違ってるって言いたいの?」



「いや、ドラゴンだよ、ドラゴン!! どう考えても俺達じゃ無理だよ!!」



 エイコイも高速で頷いて賛成する。



「よく依頼内容を見なさい。ドラゴンと言っても子供よ」



「子供?」



 俺とエイコイは紙を見直す。すると、洞窟に住み着いた子供のドラゴンの討伐と書かれている。ドラゴンという単語に目が入っていたが、まだ成長しきっていない子供の討伐がクエスト内容らしい。



「子ドラゴンはまだ空も飛べないし、力も弱い。これなら私達でも達成できると見越して持ってきてくれたってことよ」



 レジーヌは腰に両手を当てて威張る姿勢を取る。ウィンクはそんなレジーヌの言葉に頷いているため、それで合っているのだろう。



「しかし、君達だけではもしもの時に不安だ。俺達の中から一人付き添いをすることにした」



 ウィンクは後ろで待っているパーティメンバーに目線を向ける。すると、あらかじめメンバーは決まっていたのか、その中から一人一歩前に出た。



「今回はオレがお前達の面倒を見ることになったァ。まぁ、基本は遠くから見守ってるだけだ。お前達のやりたいようにやるんだなァ」



 葉巻を咥えたセルゲイが腕組みをして前に出た。








「セルゲイさんは?」



 俺は森の中を歩きながら、先頭を歩くレジーヌに尋ねる。



「きっと数十キロ後方で見てるはずよ。今回のクエストは私達の修行を兼ねてるから、見守るだけって言ってたし」



「数十キロ後方ってどんだけ遠くから!? そんなところから本当に見えてるの!?」



「あの人達の実力は本物よ。クズには分からないでしょうけどね」



 いちいちトゲのあるレジーヌにイラつきながらも、俺達はクエストに書いてあった洞窟の前まで辿り着いた。



「意外と順調に進めたね!」



 エイコイはそう言って洞窟に来るまでのことを言うが。



 本当に順調だっただろうか……。



 巨大カマキリに襲われるわ。目が七色に光るカタツムリに追われるわ。振り返ると大変だったと思うが……。



 俺と同じように来るまでのことが軽くトラウマなのか、レジーヌも顔を青くしている。来るまでの苦労を忘れ、あんな感じで楽しめているエイコイは一番大物なのかもしれない。



 洞窟にたどり着いたは良いが、俺はレジーヌの装備でずっと気になっていたことを尋ねる。



「そういえば、武器は持ってないのか?」



 俺とエイコイは試験中にレジーヌから貰った剣をそれぞれ一本ずつ腰にかけている。剣の訓練はして来なかったが、無いよりはマシと言う感じだ。
 それに比べてレジーヌは手ぶらで武器らしきものを持っていない。



「あんたらクズどもに渡した武器で全部だったのよ。私は無いわよ」



「「なら返すよ!!」」



 俺とエイコイはハモる。レジーヌを心配してと言うよりも、レジーヌが持っていた方が効率的だと考えたからだ。
 見習いとしてはレジーヌの方が先輩だ。実際修行中はレジーヌの方が成績が良い。



 この一ヶ月、剣の修行はなかったがレジーヌが剣を使えるのなら、俺達が持ってるよりも渡した方が良いだろう。



 しかし、レジーヌはそっぽを向くと、



「いらない」



「「なんで!?」」



 俺達の返事には答えようとしないレジーヌ。返そうとしても受け取る気配もないため諦めるしかないか。



 券を返すのを諦めて自分で使うことにし、腰に剣を戻すと、エイコイが洞窟を見て叫ぶ。



「二人とも洞窟を見てよ!」



 俺とレジーヌが洞窟に目をやると、羽の生えたトカゲが洞窟から姿を現した。
 サイズ的には乗用車ほどの大きさ。身体のサイズに比べて羽が小さく。あれでは空を飛べないだろう。背中を覆う鱗の色は茶色であり、地面と同化して洞窟で暮らしているのだろうか。



「あれはアースドラゴンね」



 そのドラゴンの姿にレジーヌは呟く。



「ドラゴンに種類があるのか?」



 俺はレジーヌに尋ねたつもりだったが、横からエイコイが顔を出して自慢げな顔で説明を始める。



「そうだともドラゴンには種類がある!! アース、ホワイト、ブルー、他にもいくつかのドラゴンが発見されている。が、面白いのは個体の豊富さだけじゃない!!」



 鼻息が荒くなり、説明の口調が速くなるエイコイ。ここ一ヶ月、このエイコイと一緒にいてわかったのだが、この男、生物やモンスターなどのオタクである。



「ドラゴンはモンスターに分類されるが、他のモンスターと違うのは魔力を持つものを積極的に襲うわけではないんだよ。詳しくは解明されてないけど、元になった生命タ……………」



「そろそろ静かにしろ」



 エイコイの説明に痺れを切らしたレジーヌが、後ろからレジーヌの頬を引っ張って説明を止めさせる。



「ドラゴンが動き出したのよ。洞窟内だと動きが制限されるけど、外なら手があるわ。クズども手伝いなさい」








 レジーヌの説明を受け、俺達は作戦に移る。作戦は至って簡単。



「おーい! ドラゴン!! こっちだ、こっちー!!」



 俺は洞窟から出てきたドラゴンに、両手を振ってアピールをする。俺に気づいたドラゴンは俺の姿に注目する。



 レジーヌの作戦は俺が囮になってドラゴンをひきつけて、その隙にエイコイが討伐するというもの。
 しかし、俺を見たら飛びかかってくるの思っていたが、ドラゴンは俺の姿を凝視したまま固まる。



「襲って来ないな……」



 早速作戦がうまくいかず、俺が戸惑っているとドラゴンの背後の草むらから顔を出したエイコイが、身体を動かして何かを俺に伝えようとしている。



 ドラゴンを指差し、走る姿をした後、両手をクロスさせてバツを作る。それがどうな意味があるのか理解できず、俺が首を傾げると、



「ドラゴンは他のモンスターと違って、積極的には襲って来ないって言ったろおぉ!!」



 伝わらなくて諦めたエイコイが、大声を出した。
 声を出してからまた草むらに隠れるが、もう隠れている意味がない。ドラゴンはとっくに気づいていたようで、目線がエイコイの方へチラッと移動していた。



 もうこの作戦は失敗だと判断し、俺はドラゴン越しにエイコイへ呼びかける。



「じゃあ、無害なのか?」



「いいや、体内の魔力量が少なくなれば人を襲うことがある。蓄積量が多いから積極的には襲わないってだけで、危険ではある!!」



「今は魔力が足りてるってわけか!!」



「そーゆーことー!!」



 俺とエイコイは大声で会話している中、ドラゴンは欠伸をして警戒すらしていない様子。
 ドラゴンは俺達のことを舐めきっているのか。



 ドラゴンが動く気配もないため、俺はエイコイの元まで駆け寄る。



「なぁどうするよ?」



「どうするって聞かれてもなー」



 エイコイも困った様子で首を傾げる。



 ここまで警戒されていないのなら、奇襲とか関係なくドラゴンに近づいて攻撃すれば良いのではないだろうか。
 そんなことを考えていると、



「何時間かけてるのよ!! せっかく私が考えた作戦が台無しじゃない!!」



 草むらの奥に隠れていたレジーヌが腕を組んだポーズで姿を現す。
 というか、その作戦が……。



「作戦が役に立たなかったから話あってるんだろ!!」



 俺がレジーヌに怒鳴ると、レジーヌは顔を赤くして怒り出す。



「私の作戦が役に立たないわけないじゃない!! アンタ達が弱っちいからドラゴンも警戒しないのよ!!」



 レジーヌはプンプン怒りながら、ドラゴンの前に立つ。



「見てなさい!! 私ならドラゴンも警戒するはずよ!! その隙にアンタ達がやっちゃいなさい!!」



 そう言ってドラゴンの目線に立つが、ドラゴンはレジーヌを見ると、



「フガァ…………」



 興味なさそうに鼻から息を吐き出して目線を逸らした。
 ドラゴンから呆れられたレジーヌは、ドラゴンの態度に怒り出す。今にも殴りかかりそうになっていたため、ドラゴンを刺激するのはまずいと俺とエイコイが駆け寄ってレジーヌを止める。



「待て待て!!」



「なにするのよ!! このドラゴンに私の恐ろしさを教えてやるのよ!!」



「十分伝わってる! 伝わってると思うぞ!! だからビビってあんな態度取ってるんだ!!」



 俺が説得して納得はしてないがレジーヌは諦めて大人しくなる。こうやってグダグダしてる姿に、ドラゴンは鼻で笑う。



「フガァ……」



 俺もこのドラゴンにムカついて来た。



 しかし、レジーヌのグダグダ作戦も失敗ということで、ここは一から体制を立て直すことにした。



 ドラゴンを放置して、俺達は少し離れたところで円陣を組んで話し合いを始める。



「どうするんだよ、というか、よく考えればあのドラゴン、刃もの通じるか? 鱗硬そうだぞ!」



 俺がドラゴンの鱗について触れると、エイコイが自慢げに話し出す。



「それはそうだよ。ドラゴンの鱗は鋼鉄以上の硬度があるんだから、こんな剣じゃ刺さるわけないよ」



「ならさっきの作戦はなんだったんだよ……」



 ドラゴンの囮になっていたら、奇襲を仕掛けても効果なく。囮役の俺が喰われてたかもしれないってことじゃん。



 俺はもしもドラゴンが好戦的だったらと想像して顔を青くさせる。そんな中、レジーヌは胸を張ると、



「私の魔法があるわ。魔法を使えば、あんなドラゴン楽勝よ!!」



「おぉっ!? そうか!! その手があったが!!」



 俺はレジーヌの言葉に目を輝かせて拍手する。



 レジーヌの魔法の使える魔法は、前に初めて会ったときに使っていた影魔法だけだ。見習いの間、魔法の勉強は独学でしかしたことがなかったため、適応が高かったそれしか覚えていないらしい。
 しかし、それでも威力は十分に高い。俺とエイコイが逃げるしかなかったイノシシをあっという間に倒せてしまうのだから。



 だが、エイコイは首を横に振る。



「無理だよ」



「なんでよ!! クズコイ!!」



「クズコイ言わないでよ!! …………ドラゴンは魔法に対する耐性も高いんだよ。あの鱗は魔力を流して威力を下げるんだ。影魔法は魔力を使って影を操るから、鱗に触れた途端、レジーヌの今の力じゃ鱗の効果で普通の影に戻る」



「そんなっ!?」



 ドラゴンについて知識がなかったのか、レジーヌは大口を開けてショックを受けている。レジーヌがショックで喋れないでいるため、俺はエイコイと相談する。



「じゃあ、どうするよ?」



「ドラゴンと言っても相手は子供で体格も小さいし、空も飛べない。罠を用意するのはどうだろう?」



「罠か……どんなのだ?」



 俺が聞くと、エイコイはその辺で拾った木の枝でせっせと地面に絵を描く。



「こういう作戦はどうだろうか」









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