ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。

ピラフドリア

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第24話 『危険なモンスター』

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ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。



著者:ピラフドリア



第24話
『危険なモンスター』




 盾で攻撃を防ぎ、敵を切り付ける。単純な動作のようで、これが曲者。



 反撃のタイミングは攻撃を防いだ時でも、敵が退いた時でもない。攻撃を止めると決断した瞬間だ。









「ユウ。ビビっちゃダメだ。それじゃあ、反撃に間に合わない」



 ドミニクは俺とエイコイの手合わせを見て、腕を組みながらアドバイスを出す。



「ビビっちゃダメって……そりゃ怖いですよ」



 俺はドミニクのアドバイスにそう返すと、ドミニクは頬を上げて、



「それもそうだな。それが普通だ、だが、そこであえて前に出る、その勇気が必要だ」



「そう……なんですか?」



 ドミニクは俺のそばに歩いてくると、俺の持つ盾を軽く叩く。



「クロエの眼力は神技だ、そいつに適した武器をあっさり見抜き、作り上げる」



 そう言うと、ドミニクは俺のそばで息を荒げているエイコイと、少し離れた場所で体育座りで休憩しているレジーヌにも順番に目線を向ける。



「それぞれの力を最大限に活かせる装備。それがお前達に渡された装備だ」



「それで俺は盾と剣……ですか」



「不満か?」



 ドミニクの疑問に俺は頷く。



 俺の武器はエイコイやレジーヌに比べると、守りに重視している感覚があった。
 一人だけ盾を持ち、身を守っている。戦いに積極性がないというイメージで、二人に比べると俺は実力が認められていないのかと思っていた。



 しかし、ドミニクはそんな俺の考えを否定した。



「そうか、どうやらユウ、お前は勘違いしているみたいだな」



 ドミニクはそう言うと、俺と装備について説明を始めた……。








 俺は盾でゴゴリンの攻撃を防ぎ、一匹のゴゴリンを一匹、切り倒す。そして隣で戦うエイコイの元へと駆け寄ると、ゴゴリンの攻撃からエイコイを守った。



「相棒!!」



「エイコイ、背中は任せろ。お前達は俺が守ってやる」




 ──仲間を守るための勇気、それを得た時、力を発揮する──




 俺はエイコイを守るため、盾でゴゴリンの攻撃を防ぎ切る。そしてタイミングを見計らってゴゴリンを切りつけた。
 エイコイはそんな俺の後ろから、出たり退いたりしながらゴゴリンを切り倒していく。



 そうしてエイコイと連携をとりながら、なんとか襲ってきたゴゴリンの討伐に成功した。



「はぁはぁ、やっと倒せたね……」



 ゴゴリンを倒し終え、エイコイは息を荒くしながら剣をしまう。



「だな。でも、レジーヌが連れて行かれた」



 ゴゴリンは倒せたが、レジーヌがゴゴリンに連れて行かれてしまった。
 エイコイはやれやれとため息を吐き捨てる。



「何やってんだよ、クズーヌ!! いつもいつも面倒なことを増やしてさ~」



「まぁまぁ、それよりもエイコイ、連れて行かれた場所に心当たりがあるって言ってたよな、早く助けに行こう」



「そうだね……。でも……」



 エイコイは木の影に隠れているクロエの方を見る。レジーヌが連れて行かれたというのに、クロエは助けに入ってこなかった。
 そのクロエの姿を見て、エイコイは予想を立てる。



「もしかしたら、これくらいは予想通りってことなのかもね……。僕達の中から一人がゴゴリンに連れて行かれて、助けに行く、そこまでが修行なんだろうね」



 エイコイの予想に俺も頷く。



「そういうことだろうな。これからが本番ってことか」








 森の中にある洞窟。その入り口の前にゴゴリン達が集まっていた。
 木を伐採して、焚き火の準備を行う。モンスターだというのに、器用に道具を使いこなしている。



 レジーヌは木にロープで縛られ、身動きが取れない状態でゴゴリン達の様子を見つめる。



「はぁ、なんで私がこんな目に……」



 脱出を試みたが、ロープが固く逃げることができない。魔法で影の世界に逃げ込むという手も考えたが、木に縛られている状態では影の世界には入り込めなかった。



「あのクズどもがぐずぐずしてるのが悪いのよ。だからこんなことになるのよ」



 レジーヌは独り言で二人の文句を言うが、ボソボソと愚痴っても状況は変わらない。



「この後どうなるのかしら……」



 レジーヌは焚き火の準備をしているゴゴリンに疑問を持つ。
 他のモンスターであれば、焚き火をしたりはしない。



 動物を捕食することで生命力を得て、体内に魔力を貯める。それがモンスターの本能だ。しかし、ゴゴリンはレジーヌをすぐに喰うのではなく、焚き火の準備を始めた。



「焼いて食べるってことかしら…………」








 モルガナイト王国にある酒場。そこに三名の人物が集まっていた。
 一人の男性の前に、二人のジャーナリストは座る。



「今日も取材を応じてもらい、ありがとうございます」



「いいえ、こちらこそ、隠居した身ですが、何か力になれるのならば喜んで」



「では、ザガードさん。取材を始めさせていただきます」



 二人の前に座っている人物は、ザガードという名の元騎士だ。騎士は両肘をテーブルにつけると二人の顔を見る。



「それで今回は私になんの話を聞きたいのかな?」



 ザガードの質問にジャーナリストの二人のうち一人が質問をする。そしてその質問の回答をメモするため、もう一人のジャーナリストがメモ帳を取り出す。



「ゴゴリンというモンスターについてお話を聞かせていただきたいです。ゴゴリンは我々人類の知能を携えた厄介な存在なのは存じていますが、討伐難易度自体は低いとお聞きしています」



 ジャーナリストと発言にザガードはうむと頷く。



「しかし、ザガードが集落の近くに出ると騎士団がすぐさま派遣され、討伐に向かわれます。騎士団の派遣にも金銭がかかり、それは国民から集めた税金で行われています。討伐難易度の低いゴゴリンに騎士団を派遣する必要があるのでしょうか?」



 ジャーナリストの質問にザガードは口元をムとして険しい顔をする。



「確かにゴゴリンの討伐難易度は他モンスターに比べれば低い。しかし、人々の安全のため、素早く討伐する必要があるのだ」



 ザガードは語る。ゴゴリンの脅威を……。



「ゴゴリンは人間の知能を持ち、武器やチームワークを持つのはご存知でしょう」



「えぇ……」



「しかし、それ以外にも人間の知能として持っている習性がある」



「武器やチームワーク以外にも……ですか」



「それが食料の保存」



 人類の食糧保管の歴史は長い。塩や日干しを使った調理法から、壺や高床式、そして冷凍などと保管場所も進化してきた。
 どれだけ新鮮で状態の良いものを長い間保存するか。



「食糧保存……ですか。しかし、モンスターは食事を必要としない。食事のように見られる行為も、魔力の吸収です」



「そう、彼らに取って食べることは魔力を得ること。存在を保つこと……。食料がなければ、どんなモンスター……例えばドラゴンでさえ、自然に消滅する」



「だから強力なモンスターは無理に討伐するのではなく、周囲の生態系を破壊することで消滅を促す……そういう討伐法は聞いたことがあります。しかし、それとゴゴリンに関係が?」



「モンスターの中で最も長い間、存在し続ける手段を持つ。それがゴゴリンだからだ」



 ザガードはテーブルに乗せていた手を組み合わせて、指を組む。そしてその上に顎を乗せた。



「かつてこんな事件があった……。とある村がモンスターの襲撃を受けて滅ぶという事件だ。騎士団は近隣の村からの通報を受け、村人の救出へ向かった。モンスターの住処にあった光景、それは……」



「その光景は……」



「人間を生きたまま保存するゴゴリン達の姿だ。樽に身体を詰め、食料を与えることで人間を保存していたんだ」



「人間を保存!? なぜですか!?」



 ジャーナリストが驚く中、ザガードはその質問に淡々と答える。



「死んだ生命は魔力を持たない。だから生かして保管しておくんだ。そうすることでゴゴリンは魔力の供給源を保管することができる」



「人間を生かして保管……」



「足の腱を切ることで脱出できないようにし、最低限の食料を食わせて生かし続ける。あれは地獄だ……。だからこそ、村人に被害が出る前に我々は全力で討伐に向かうのだ」








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