26 / 27
第26話 『モンスターの変異』
しおりを挟む
ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。
著者:ピラフドリア
第26話
『モンスターの変異』
モンスター研究家メイル・トーマスはこう語る。
「モンスターの進化ですか……。そうですね、特別な事例を分ければ、二つのパターンが基本でしょうか」
トーマスは一つ指を立てる。
「一つは魔素の集合体を吸収すること。魔力を持つ人間や動物を喰らうことで、魔素を吸収して進化します」
さらにトーマスは二つ目の指を立てた。
「二つ目は…………」
身体の色が赤く変化したキングゴゴリンを前にして、エイコイが呟く。
「空気中にある魔素を使っての進化……」
それを聞き、俺は大きく口を開ける。
「進化!? 仲間を食って進化するだけじゃないのかよ!?」
「ああ、確かにそれが一番基本的な進化方法だ。でも、空気中にも微量だが魔素が含まれてるんだ。魔素を吸い続けたモンスターはそれが一定量を超えると、進化する」
「はぁぁぁぁぁ!? だけど、こいつはさっき進化したばっかりだろ!!」
キングゴゴリンはさっき、他のモンスターを食べて進化したばっかりだ。そんなに早く進化するものなのか。
「普通はないよ。でも、ここが異様に魔素が多いんだよ。地形的な問題かな、ここは魔素が流れ込みやすいんだ」
「そんなことってある!?」
俺が頭を抱えている中、後ろで樽に入れられたままのレジーヌが睨んでくる。
「アンタ達……そんなことはどぉぉでもいいのよぉぉ、早く私をここからだっしなさぁぁぁぁぁぁい!!」
樽の中で暴れて、樽が左右にガタガタと揺れる。俺はそんなレジーヌにやれやれと言い訳をする。
「でもなぁ、レジーヌすっぽりはまってるじゃん。これじゃ抜けないよ」
「なによぉぉ、こうなったのも全部アンタ達のせいよ!!」
「いや、レジーヌが油断してたからでしょ」
俺がそう言うと、エイコイも頷く。
「ああ、あれはレジーヌの油断だと僕も思う」
「なによなによ!!!!」
俺達二人に反論され、顔を真っ赤にしたレジーヌは更に暴れ出す。そして樽がガタガタと大きく揺れて、最終的には、
「あ……」
樽が横に倒れてしまった。そして地面が斜めになっていたのだろう。レジーヌは樽ごと転がり始める。
「あ、ちょ、ァァァァァァァァッ!!!!」
「「え!? レジーヌ!?」」
転がり始めたレジーヌの向かう先には、赤く変化したキングゴゴリンの姿がある。
「レジーヌ、そのままじゃモンスターに突っ込むぞ!?」
エイコイは先の姿を見て、レジーヌに伝える。俺もエイコイと並んでレジーヌに叫んだ。
「止まれ、レジーヌ、どうにかして止まるんだ!!」
しかし、レジーヌは手も足も自由に動かせない。止まることができず、転がっていく。
半泣きになりながらも、覚悟を決めたのかレジーヌは、
「もぉぉう!! こうなったらこのまま戦ってやるわよ!!」
そう言って樽の転がるスピードを早めた。速度が増していき、樽は高速回転する。樽の先端についていたレジーヌの顔も、どこが正面だか分からないほど回転が早くなる。
樽が転がってきているというのに、進化がまだ終わっていないのか、キングゴゴリンはその場から動かない。
そしてレジーヌは勢いをつけたまま、キングゴゴリンに激突した。
樽がキングゴゴリンの後頭部に当たり、キングゴゴリンは首をガクッとさせる。だが、ダメージは少ないようで後頭部を痛そうに摩るだけだ。
勢いよく激突した樽だが、壊すことはできず、レジーヌは樽の中に入ったまま、キングゴゴリンの前を転がった。
キングゴゴリンは頭を摩りながら、激突してきた樽に目線を移す。そしてレジーヌと目があった。
「…………ハロー」
「グォォァァァァッ!!」
「いやァァァァァ、ユウ、エイコイ、助けてェェェェェェ!!!!」
キングゴゴリンは樽を見つけ、武器である丸太を振り上げた。それを見て、レジーヌは助けを求めて叫ぶ。
キングゴゴリンは樽ごとレジーヌを潰すつもりなのだろう。
このままではレジーヌも樽と一緒に粉々になってしまう。
「あいつはぁ!! エイコイ、助けに行くぞ」
「はいはい。助けてやろうか」
俺とエイコイは同時に走り出し、レジーヌの救出へ向かう。キングゴゴリンが丸太を振り下ろし、レジーヌが潰されそうになったが、どうにか俺が間に合い、盾で丸太を止めた。
「クッズ!!」
「さっき普通に呼んでただろ!? なんでここでその呼び方に戻るんだよ!! ……エイコイ、頼んだ!!」
俺は丸太を受け止めることで精一杯だ。ここはキングゴゴリンの背後に回り込み、二本の剣を構えているエイコイに攻撃を任せる。
「おう、相棒!!」
エイコイは二本の剣でキングゴゴリンの背中をXの形に切ってみせる。
だが、
「コイツ、進化して固くなってる」
エイコイの攻撃でかすり傷をつけるのが精一杯だった。
それしかダメージは入らなかったが、エイコイが攻撃したことでキングゴゴリンの意識がレジーヌからエイコイに移動する。
「僕が時間を稼ぐ。その間にレジーヌを安全なところに!」
「無理するなよ!」
エイコイがキングゴゴリンの意識をひいている間に、俺は樽ごとレジーヌを抱えてキングゴゴリンから離れた。
キングゴゴリンは強くなっているが、エイコイのスピードにはまだ追いつけない様子。エイコイは攻撃を避けながら時間を稼ぐ。
「よし、この辺なら大丈夫か……」
俺は樽女を離れた場所に運んで、今度は転がらないように置いた。俺はエイコイを助けに行くため、樽に背をむせる。すると、
「待ちなさい!」
「なんだよ、タルーヌ」
「誰がタルーヌよ!! …………気づいてる? アンタがエイコイに加勢したところであのモンスターには勝てないわ」
「…………」
樽から顔を出し、レジーヌは真剣な顔で事実を伝えてくる。
それは俺も分かっている。不意打ちで攻撃をしたのに、エイコイの攻撃はダメージにならなかった。二人で協力しても、火力不足でキングゴゴリンには勝てないだろう。
「私を出しなさい!! 私の魔法を使えば、キングゴゴリンにダメージを与えられる!!」
「影魔法か……」
確かにレジーヌの魔法は強力だ。使うことができれば、キングゴゴリンにもダメージを与えられるかもしれない。
「でも、お前樽から出れないじゃん」
「だから私を出すのよ! ……エイコイを助けるんでしょ、なら私の力が必要のはずよ」
お前を助けにきて、ピンチなんだが……。
だが、レジーヌの力は欲しい。
「ならどうやって出せば良いんだよ。引っこ抜こうとしても全然抜けないんだぞ!!」
「方法はあるわ。私の右側。そこを私とタイミングを合わせて強く叩くのよ」
「右側?」
俺は言われた方法を見るが、樽にヒビが入っていたりはしていない。
「なんで、そんな場所を?」
俺が首を傾げると、レジーヌはフンと鼻を鳴らした。
「今朝、エイコイの魔道具をパクっておいたのよ。それが右ポケットに入ってるの」
「おい、なにやってんだよ!! またエイコイに怒られるぞ」
「今はそんなこと忘れなさい。上手く叩けば、衝撃で爆発するはずよ。それで樽を壊すの」
レジーヌはそんなことを言い出すが、
「でも、そんなことしたらレジーヌも一緒に爆発に巻き込まれるぞ?」
「一瞬でも身体が自由になれば、魔法が使えるわ。そうすれば影の世界に逃げ込める、だからタイミングを合わせる必要があるのよ」
「そんな無茶な……」
かなり無謀な手段だ。確かにボム丸君ならこの樽も壊せそうだ。しかし、タイミングをミスれば、レジーヌは爆発に巻き込まれて粉々になってしまう。
「危険すぎるよ!! 他の方法を考えようよ!!」
「そんなこと言ってる余裕はないのよ。見なさい、エイコイを……。避け続けてるけど、体力が無くなればエイコイはやられるのよ」
レジーヌの言う通り、エイコイは避け続けているが体力が無限というわけじゃない。疲れれば、避けるスピードも遅くなる。
そうなれば最終的には避けることができなくなり、キングゴゴリンにやられてしまうだろう。
「ァァァァァッ!!!! もう分かったよ、失敗しても恨むなよ!!」
俺は頭を勢いよく掻きむしって、嫌なことを考えないようにする。
「いや、失敗したら恨むわよ」
「俺の決意を揺るがすなよ!!」
レジーヌに言われたことは忘れて、俺は剣を鞘にしまう。そして両手で剣を握って、剣で殴れるようにした。
「良いか。合図をしたら樽を殴るぞ」
「早くしなさい。どうせ一発勝負よ。やるしかないのよ!」
「分かってるよ!! じゃあ行くぞ、セーっのぉ!!」
俺は勢いよく樽を剣で殴った。すると、良い感じにレジーヌのポケットに入ったボム丸君に当たったのだろう。
樽が光を放つ。
「爆発するぅ!?」
光を放った樽が爆発して、周囲に粉切れになった残骸を飛ばす。
俺は爆発の影響で後ろに数メートル転がり倒れたが、すぐに立ち上がって樽の方へと目線を戻した。
「レジーヌは……」
俺が心配そうに爆発で発生した煙の方をじっと見る。やがて煙が晴れてきて、中に人影が見え始めた。
「やれやれよ。これでやっと自由になれたわ」
「レジーヌ、無事だったか!!」
煙の中からレジーヌが現れた。爆発の煙で身体が煤だらけだが、怪我はない様子だ。
「当然よ。さぁ、エイコイを助けに行くわよ、ユウ!」
「ああ、エイコイ。今助けに行くぜ!」
俺とレジーヌはエイコイを助けに行くため、キングゴゴリンの元へ走り出した。
エイコイはキングゴゴリンの攻撃を避け続けているが、疲労が溜まってきたのか、動きが鈍くなり始めていた。
「エイコイ、助けに来たぞ!」
「相棒! それにレジーヌも!! よし、ここから反撃だな!」
著者:ピラフドリア
第26話
『モンスターの変異』
モンスター研究家メイル・トーマスはこう語る。
「モンスターの進化ですか……。そうですね、特別な事例を分ければ、二つのパターンが基本でしょうか」
トーマスは一つ指を立てる。
「一つは魔素の集合体を吸収すること。魔力を持つ人間や動物を喰らうことで、魔素を吸収して進化します」
さらにトーマスは二つ目の指を立てた。
「二つ目は…………」
身体の色が赤く変化したキングゴゴリンを前にして、エイコイが呟く。
「空気中にある魔素を使っての進化……」
それを聞き、俺は大きく口を開ける。
「進化!? 仲間を食って進化するだけじゃないのかよ!?」
「ああ、確かにそれが一番基本的な進化方法だ。でも、空気中にも微量だが魔素が含まれてるんだ。魔素を吸い続けたモンスターはそれが一定量を超えると、進化する」
「はぁぁぁぁぁ!? だけど、こいつはさっき進化したばっかりだろ!!」
キングゴゴリンはさっき、他のモンスターを食べて進化したばっかりだ。そんなに早く進化するものなのか。
「普通はないよ。でも、ここが異様に魔素が多いんだよ。地形的な問題かな、ここは魔素が流れ込みやすいんだ」
「そんなことってある!?」
俺が頭を抱えている中、後ろで樽に入れられたままのレジーヌが睨んでくる。
「アンタ達……そんなことはどぉぉでもいいのよぉぉ、早く私をここからだっしなさぁぁぁぁぁぁい!!」
樽の中で暴れて、樽が左右にガタガタと揺れる。俺はそんなレジーヌにやれやれと言い訳をする。
「でもなぁ、レジーヌすっぽりはまってるじゃん。これじゃ抜けないよ」
「なによぉぉ、こうなったのも全部アンタ達のせいよ!!」
「いや、レジーヌが油断してたからでしょ」
俺がそう言うと、エイコイも頷く。
「ああ、あれはレジーヌの油断だと僕も思う」
「なによなによ!!!!」
俺達二人に反論され、顔を真っ赤にしたレジーヌは更に暴れ出す。そして樽がガタガタと大きく揺れて、最終的には、
「あ……」
樽が横に倒れてしまった。そして地面が斜めになっていたのだろう。レジーヌは樽ごと転がり始める。
「あ、ちょ、ァァァァァァァァッ!!!!」
「「え!? レジーヌ!?」」
転がり始めたレジーヌの向かう先には、赤く変化したキングゴゴリンの姿がある。
「レジーヌ、そのままじゃモンスターに突っ込むぞ!?」
エイコイは先の姿を見て、レジーヌに伝える。俺もエイコイと並んでレジーヌに叫んだ。
「止まれ、レジーヌ、どうにかして止まるんだ!!」
しかし、レジーヌは手も足も自由に動かせない。止まることができず、転がっていく。
半泣きになりながらも、覚悟を決めたのかレジーヌは、
「もぉぉう!! こうなったらこのまま戦ってやるわよ!!」
そう言って樽の転がるスピードを早めた。速度が増していき、樽は高速回転する。樽の先端についていたレジーヌの顔も、どこが正面だか分からないほど回転が早くなる。
樽が転がってきているというのに、進化がまだ終わっていないのか、キングゴゴリンはその場から動かない。
そしてレジーヌは勢いをつけたまま、キングゴゴリンに激突した。
樽がキングゴゴリンの後頭部に当たり、キングゴゴリンは首をガクッとさせる。だが、ダメージは少ないようで後頭部を痛そうに摩るだけだ。
勢いよく激突した樽だが、壊すことはできず、レジーヌは樽の中に入ったまま、キングゴゴリンの前を転がった。
キングゴゴリンは頭を摩りながら、激突してきた樽に目線を移す。そしてレジーヌと目があった。
「…………ハロー」
「グォォァァァァッ!!」
「いやァァァァァ、ユウ、エイコイ、助けてェェェェェェ!!!!」
キングゴゴリンは樽を見つけ、武器である丸太を振り上げた。それを見て、レジーヌは助けを求めて叫ぶ。
キングゴゴリンは樽ごとレジーヌを潰すつもりなのだろう。
このままではレジーヌも樽と一緒に粉々になってしまう。
「あいつはぁ!! エイコイ、助けに行くぞ」
「はいはい。助けてやろうか」
俺とエイコイは同時に走り出し、レジーヌの救出へ向かう。キングゴゴリンが丸太を振り下ろし、レジーヌが潰されそうになったが、どうにか俺が間に合い、盾で丸太を止めた。
「クッズ!!」
「さっき普通に呼んでただろ!? なんでここでその呼び方に戻るんだよ!! ……エイコイ、頼んだ!!」
俺は丸太を受け止めることで精一杯だ。ここはキングゴゴリンの背後に回り込み、二本の剣を構えているエイコイに攻撃を任せる。
「おう、相棒!!」
エイコイは二本の剣でキングゴゴリンの背中をXの形に切ってみせる。
だが、
「コイツ、進化して固くなってる」
エイコイの攻撃でかすり傷をつけるのが精一杯だった。
それしかダメージは入らなかったが、エイコイが攻撃したことでキングゴゴリンの意識がレジーヌからエイコイに移動する。
「僕が時間を稼ぐ。その間にレジーヌを安全なところに!」
「無理するなよ!」
エイコイがキングゴゴリンの意識をひいている間に、俺は樽ごとレジーヌを抱えてキングゴゴリンから離れた。
キングゴゴリンは強くなっているが、エイコイのスピードにはまだ追いつけない様子。エイコイは攻撃を避けながら時間を稼ぐ。
「よし、この辺なら大丈夫か……」
俺は樽女を離れた場所に運んで、今度は転がらないように置いた。俺はエイコイを助けに行くため、樽に背をむせる。すると、
「待ちなさい!」
「なんだよ、タルーヌ」
「誰がタルーヌよ!! …………気づいてる? アンタがエイコイに加勢したところであのモンスターには勝てないわ」
「…………」
樽から顔を出し、レジーヌは真剣な顔で事実を伝えてくる。
それは俺も分かっている。不意打ちで攻撃をしたのに、エイコイの攻撃はダメージにならなかった。二人で協力しても、火力不足でキングゴゴリンには勝てないだろう。
「私を出しなさい!! 私の魔法を使えば、キングゴゴリンにダメージを与えられる!!」
「影魔法か……」
確かにレジーヌの魔法は強力だ。使うことができれば、キングゴゴリンにもダメージを与えられるかもしれない。
「でも、お前樽から出れないじゃん」
「だから私を出すのよ! ……エイコイを助けるんでしょ、なら私の力が必要のはずよ」
お前を助けにきて、ピンチなんだが……。
だが、レジーヌの力は欲しい。
「ならどうやって出せば良いんだよ。引っこ抜こうとしても全然抜けないんだぞ!!」
「方法はあるわ。私の右側。そこを私とタイミングを合わせて強く叩くのよ」
「右側?」
俺は言われた方法を見るが、樽にヒビが入っていたりはしていない。
「なんで、そんな場所を?」
俺が首を傾げると、レジーヌはフンと鼻を鳴らした。
「今朝、エイコイの魔道具をパクっておいたのよ。それが右ポケットに入ってるの」
「おい、なにやってんだよ!! またエイコイに怒られるぞ」
「今はそんなこと忘れなさい。上手く叩けば、衝撃で爆発するはずよ。それで樽を壊すの」
レジーヌはそんなことを言い出すが、
「でも、そんなことしたらレジーヌも一緒に爆発に巻き込まれるぞ?」
「一瞬でも身体が自由になれば、魔法が使えるわ。そうすれば影の世界に逃げ込める、だからタイミングを合わせる必要があるのよ」
「そんな無茶な……」
かなり無謀な手段だ。確かにボム丸君ならこの樽も壊せそうだ。しかし、タイミングをミスれば、レジーヌは爆発に巻き込まれて粉々になってしまう。
「危険すぎるよ!! 他の方法を考えようよ!!」
「そんなこと言ってる余裕はないのよ。見なさい、エイコイを……。避け続けてるけど、体力が無くなればエイコイはやられるのよ」
レジーヌの言う通り、エイコイは避け続けているが体力が無限というわけじゃない。疲れれば、避けるスピードも遅くなる。
そうなれば最終的には避けることができなくなり、キングゴゴリンにやられてしまうだろう。
「ァァァァァッ!!!! もう分かったよ、失敗しても恨むなよ!!」
俺は頭を勢いよく掻きむしって、嫌なことを考えないようにする。
「いや、失敗したら恨むわよ」
「俺の決意を揺るがすなよ!!」
レジーヌに言われたことは忘れて、俺は剣を鞘にしまう。そして両手で剣を握って、剣で殴れるようにした。
「良いか。合図をしたら樽を殴るぞ」
「早くしなさい。どうせ一発勝負よ。やるしかないのよ!」
「分かってるよ!! じゃあ行くぞ、セーっのぉ!!」
俺は勢いよく樽を剣で殴った。すると、良い感じにレジーヌのポケットに入ったボム丸君に当たったのだろう。
樽が光を放つ。
「爆発するぅ!?」
光を放った樽が爆発して、周囲に粉切れになった残骸を飛ばす。
俺は爆発の影響で後ろに数メートル転がり倒れたが、すぐに立ち上がって樽の方へと目線を戻した。
「レジーヌは……」
俺が心配そうに爆発で発生した煙の方をじっと見る。やがて煙が晴れてきて、中に人影が見え始めた。
「やれやれよ。これでやっと自由になれたわ」
「レジーヌ、無事だったか!!」
煙の中からレジーヌが現れた。爆発の煙で身体が煤だらけだが、怪我はない様子だ。
「当然よ。さぁ、エイコイを助けに行くわよ、ユウ!」
「ああ、エイコイ。今助けに行くぜ!」
俺とレジーヌはエイコイを助けに行くため、キングゴゴリンの元へ走り出した。
エイコイはキングゴゴリンの攻撃を避け続けているが、疲労が溜まってきたのか、動きが鈍くなり始めていた。
「エイコイ、助けに来たぞ!」
「相棒! それにレジーヌも!! よし、ここから反撃だな!」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる