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開幕
舞台の幕が上がる。
照明が一気に焚かれ、
豪奢な夜会の場が現れた。
ざわり、と客席がどよめく。
次の瞬間――
張りのある声が、劇場中に響き渡った。
「婚約破棄だ!」
一拍。
観客の視線が、舞台中央へ吸い寄せられる。
正装した青年が立ち、
その前に、三人の令嬢が並ばされている。
よくある構図。
あまりにも、よくある構図だった。
令嬢の一人が泣き崩れる。
「そんな……っ、殿下……!」
別の令嬢は顔を上げ、声を荒らげる。
「私は、そんなことしていません!」
そして、最後の一人は――
何も言わず、ただ静かに頭を下げる。
その様子を、舞台上の人々は誰も気に留めない。
断罪は、滞りなく進んでいく。
言葉は鋭く、結論は早い。
観客席には、最初は拍手すら混じっていた。
――だが。
少しずつ、空気が変わる。
ざわ……
ざわざわ……
誰かが、身を乗り出した。
「……これ……」
別の場所から、ひそひそと声が漏れる。
「え……?」
「……ちょっと、待って」
舞台では、すでに場面が切り替わっていた。
一人目の令嬢。
自室で叱責される。
「殿下の不興を買ったのだろう!
そんな娘を、家に置いておけるか!」
彼女は泣きながら、否定する。
「私は……何もしていません……」
だが、聞き入れられない。
次の場面。
二人目の令嬢。
領地へ連れ戻され、
突きつけられる選択。
「結婚か、修道院か」
沈黙のあと、彼女は修道院を選ぶ。
客席のざわめきが、はっきりと音を持ち始める。
「……こんな……」
「これ、さっきの……」
「いや、でも……」
舞台は、修道院へ。
質素な部屋。
再会する、二人の令嬢。
ゆっくりと、言葉を交わし始める。
「……あの手紙、普通のことしか書いていないのよ」
「私も。乱暴なんて、命じていない」
観客席。
ざわざわ。
ざわ……。
「え?」
「どういうこと?」
「……話が……」
声が、広がっていく。
ヒソヒソ。
ヒソヒソ。
誰かが、はっきりと口にした。
「……これ……」
「……本当に、正しかったの……?」
その問いは、もう止まらない。
舞台の上では、
二人の令嬢が、淡々と“真実”を語り続けている。
客席のざわめきは、やがて一つの波になり、
劇場全体を包み込んでいった。
ざわ。
ざわざわ。
――そして。
誰もが、気づき始めていた。
この劇は、
どこかで見たことがあるのではなく。
自分たちが、見てきたものそのものなのだと。
照明が一気に焚かれ、
豪奢な夜会の場が現れた。
ざわり、と客席がどよめく。
次の瞬間――
張りのある声が、劇場中に響き渡った。
「婚約破棄だ!」
一拍。
観客の視線が、舞台中央へ吸い寄せられる。
正装した青年が立ち、
その前に、三人の令嬢が並ばされている。
よくある構図。
あまりにも、よくある構図だった。
令嬢の一人が泣き崩れる。
「そんな……っ、殿下……!」
別の令嬢は顔を上げ、声を荒らげる。
「私は、そんなことしていません!」
そして、最後の一人は――
何も言わず、ただ静かに頭を下げる。
その様子を、舞台上の人々は誰も気に留めない。
断罪は、滞りなく進んでいく。
言葉は鋭く、結論は早い。
観客席には、最初は拍手すら混じっていた。
――だが。
少しずつ、空気が変わる。
ざわ……
ざわざわ……
誰かが、身を乗り出した。
「……これ……」
別の場所から、ひそひそと声が漏れる。
「え……?」
「……ちょっと、待って」
舞台では、すでに場面が切り替わっていた。
一人目の令嬢。
自室で叱責される。
「殿下の不興を買ったのだろう!
そんな娘を、家に置いておけるか!」
彼女は泣きながら、否定する。
「私は……何もしていません……」
だが、聞き入れられない。
次の場面。
二人目の令嬢。
領地へ連れ戻され、
突きつけられる選択。
「結婚か、修道院か」
沈黙のあと、彼女は修道院を選ぶ。
客席のざわめきが、はっきりと音を持ち始める。
「……こんな……」
「これ、さっきの……」
「いや、でも……」
舞台は、修道院へ。
質素な部屋。
再会する、二人の令嬢。
ゆっくりと、言葉を交わし始める。
「……あの手紙、普通のことしか書いていないのよ」
「私も。乱暴なんて、命じていない」
観客席。
ざわざわ。
ざわ……。
「え?」
「どういうこと?」
「……話が……」
声が、広がっていく。
ヒソヒソ。
ヒソヒソ。
誰かが、はっきりと口にした。
「……これ……」
「……本当に、正しかったの……?」
その問いは、もう止まらない。
舞台の上では、
二人の令嬢が、淡々と“真実”を語り続けている。
客席のざわめきは、やがて一つの波になり、
劇場全体を包み込んでいった。
ざわ。
ざわざわ。
――そして。
誰もが、気づき始めていた。
この劇は、
どこかで見たことがあるのではなく。
自分たちが、見てきたものそのものなのだと。
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