森と花の国の王子

あーす。

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宿屋での取り決め

宿屋到着直後の顛末

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 階段を上がって、すぐの部屋の扉をエルデリオンは開けると、レジィリアンスを室内に導く。

濃い緑の壁。
質素な、テーブルと椅子。
…奥には、寝台。

それが視界に入った時、レジィリアンスは震えた。
エルデリオンは手を握ったまま誘い、寝台に近寄ると、座るよう促したから…!

腰を下ろすと、エルデリオンは直ぐ横に腰掛ける。
レジィリアンスは身が震えるに任せ、泣き出したいのをただひたすら、こらえた。

…つまり馬車でされたが花嫁の務めで、それは本来、ここでするものだ。
そう分かったから。

エルデリオンが再び、肩を抱こうと腕を回しかけた時。
ノックの音が響く。

コンコン…!

エルデリオンは気づくと、回しかけた腕を引き、立ち上がって戸口へと足を運ぶ。

開いた扉から、ラステルがエルデリオンに、小声で話しかける。
エルデリオンはその言葉を聞くと頷き、部屋を出て行こうとし…ふ…と気づき、寝台に座るレジィリアンスに振り向く。

微笑みかけて一つ、頷き…従者の後に従い、部屋を出ていった。

パタン…。

戸の閉まる音と共に、レジィリアンスの全身から力がどっと抜け、気絶しそうになった。
意識は遠くなり、自分がどこで、何をしていて、何者なのか…。

解らなくなっていった。


階下の広い食堂で、エウロペはエリューンとテリュスと共に、立って待っていた。
エルデリオンがレジィリアンスを階上に導いた後、ラステルに囁かれる。

「エルデリオンを呼びます。
その後直ぐ、階段を上がって貴方がレジィリアンス殿のお側に…」

“エルデリオンを差し置き、そんな事が可能か”
問い正す間もなく、ラステルは身を翻して背を向け、さっさと少し離れた場に立つ、ロットバルトとデルデロッテ。
二人の前に行くと、話し始める。

長身の美丈夫、デルデロッテは長く伸ばした濃いウェーブのかかる艶やかな栗毛を胸の前で揺らし、その整った顔を傾け、ラステルの言葉を聞いていた。
髭の貫禄あるロットバルトは、黒に近い栗毛を肩に滑らせ、凄く不機嫌な表情で頷く。
背を向けたラステルの、肩までのくしゃっ!と乱れ、跳ねまくってる明るい栗毛は、説明する度、幾度も揺れる。

デルデロッテが口を出し、ロットバルトが制しているように見える。
とうとうデルデロッテは、腕を組んでため息を吐き出す。

ラステルはもうその時背を向け、階段を上がって行った。

やがて、エルデリオンが降りて来る。
階段横で立つロットバルトを見つけ
「この後の事で、話があるって?」
と輝くような男の色香と幸福感を漂わせ、快活に尋ねている。

後から降りて来たラステルが、階段途中でエウロペに顎をしゃくる。
エウロペは努めて冷静に、エルデリオンの横を通り過ぎると、階段を駆け上がった。
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