森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

レガートの告白

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 エウロペの問いに、レガートは首を振って応える。

「…誰だ?
サランカか?
…そうか…あんたは知らないだろうな。
アルトバルデの宴には、出たことの無いあんたは。
聞いて驚け!
西のナルディア、第一王位継承者の、ロストナス公!
東のドナステラ、王弟シャネッサス!
そして、エルドシュヴァン草原大国の王族と親戚の、コステラフォール侯爵!
大臣も将軍もいる!!!
そうそうたる顔ぶれだ!
その各国の大物達が!
小国シュテフザイン森と花の王国の鎖に繋がれた美しき少年王子を犯す為、幾らでも払う!
一時の、お楽しみにな!」

レガートはエウロペに幾度もチラチラ視線を送るものの、エウロペと認識出来てない様子で、エウロペの姿すら。
見えてはいず、そこには居ない別の誰かを、見ているようだった。

相変わらず、レガートは得意げに喋り続ける。
「…だが、演出が必要だ。
愛らしく可憐…。
だからこそ、うんと辱める演出が!
エルデリオンが抱いてると聞いたから、もっとスレてると思ったが…。
尻の穴以外は、まるっきり初心うぶ
…だが、恥ずかしがって涙を滴らせる様は、うんと客達を喜ばせる…!!!
レジィリアンスがうんと…恥ずかしい思いをするような…そんな卑猥な演出を施してやれば…。
アルトバルデは私に、どれだけでも払う!!!」

尚もエウロペの、冷静な声が響く。
「そんなに、金が欲しいのか?」

レガートは、きっ!と声の主に振り向き睨む。
「欲しいかだと?!
王に、父が追放された後…!
母がどれだけ惨めな思いをしたか…!
これも全て、母名義の屋敷以外、全ての領地を召し上げられたせい…!」

それを聞いて、エルデリオンははっ!と顔を上げる。

レガートは憎しみの表情を見せ、叫ぶ。
「本当は、エルデリオンにしてやりたかった!
手枷足枷付けさせ、鎖で繋ぎ…。
少年の時、うんと辱め、犯してやりたかった!」

その後、呪うように低い声で言葉を吐き続ける。
「…レジィリアンスは身代わりだ。
エルデリオンに出来なかった分…レジィリアンスを代わりに、うんと辱めてやる…!
取り戻すがいいさ!
ラステルが居るからな…!
が、その頃には花嫁となるレジィリアンスは…他の男に散々犯され、辱められ…。
ふ…流石のエルデリオンの、愛も冷めるというもの…。
戦まで仕掛けて手に入れた、純潔の花は泥に塗れ、御意には添えない…!
いい気味だ…。
ふ…ふぁっはっはっはっはっ!!!
はーっはっはっはっ!!!」

石牢にレガートのしゃがれた笑い声が響き渡り、ラステルは心配になってエルデリオンの表情を覗う。
が、エルデリオンは顔を下げたまま、身を小刻みに震わせ続ける。

エウロペの冷静な声は、まだ続く。
「母に贅沢をさせる為?
大金が要るのか?」

レガートの笑い声は、ピタリ…!と止んだ。

今度は不気味な笑みを浮かべる。
「…レジィリアンスを性奴隷におとしめるのは、ほんの序の口…。
ラステルの情報網は広く、機動力は強い…。
ラステルの勢力を削ぐのに…有能な男達が要る。
大金払う価値のある、有能な男達だ…。
ラステルを崩せば、オーデ・フォール中央王国は落ちる!!!
その時こそ、我が父を流刑地より呼び戻し、私の操れる国王を据え、王と王妃の目前で!!!
エルデリオンを裸に剥いて、男達への褒美とし!!!
うんと辱め、犯し、慰みものにし…。
そして王と王妃の見てる前で、無残に殺してやる…!
王は…涙するか?
王妃は気が狂うだろうな………。
ふ…ふふ…ふははははははははは!!!」

甲高いしゃがれ声の、ひきつった笑い声が牢獄に響き渡り、第一連隊騎士達は陰鬱いんうつな気分で、ラステルを伺い見る。

エウロペだけが、挑むような目で笑うレガートを見た後。
ラステルに振り向く。

ラステルは気づくと
「聞き出してくれて、ありがとう」
と礼を言った。

が、エウロペは
「とっくに気づいてたからこそ、地下道の大方を、探らせていたんだろう?」
と言葉を返す。

ラステルは言い返されて、ぼやいた。
「…せっかく、珍しく私が礼を言ったのに…。
素直に受け取ってくれたって」

エウロペは呆れる。
「…じゃ、気づいてなかったと。
嘘を言う気か?」
ラステルは白状した。
「…気づいてたけど」

エウロペに頷かれ、ラステルはため息吐く。
けれど第一連隊騎士四人とロットバルトに、呆れたように見つめられ
「…どうかした?」
と尋ねた。

ロットバルトは、今だ狂気に満ちたぞっとするレガートの笑い声が、石牢に高らかに響く中。
二人のどこかお馬鹿な会話に、呆れていると言えず
「…いや、君らが豪胆だから」
と、誤魔化した。

エウロペが、ラステルに顎をしゃくって、エルデリオンを指し示す。
エルデリオンは項垂れるように顔を下げ、レガートの告白に気落ちしきってる様子だった。

ラステルは、ロットバルトに頷く。
ロットバルトは気づくと、横のエルデリオンに
「気が済んだでしょう?
キチガイの戯言ざれごとを、これ以上聞くのは、精神衛生上良くない」
そう言って、腕を掴み、軽く引く。

エルデリオンは動かなかった。
が、ロットバルトに顔を覗き込まれ、微かにこくん…と頷くと、ロットバルトに促されるまま行こうとし…けれどエウロペに、振り向いた。

「…レジィ殿を、大切に護り続けた貴方に…。
どう…詫びればいいのか…言葉もありません」

エウロペは口を開こうとし…。
けれど若いエルデリオンが、激しいショックを受けているのを見、口を閉じる。
そして、言った。

「…若い内は、過ちもおかす」

ぼそり…と告げるその言葉を聞き、ラステルは目を見開く。
まるでエルデリオンを励まし、労るようなエウロペの眼差し。

エルデリオンは項垂れたまま、掠れた小声で告げる。
「…私の場合、それで済まない…。
レジィリアンス殿が記憶を無くした中、私を拒絶するのも、無理ありません…」

エウロペはまだ未熟な、そして素直な若者の心の痛みを思いやるように、エルデリオンを見つめた。
が、エルデリオンは顔を下げて一礼し、ロットバルトに促されるまま、牢を出て行った。

「…一途な分だけ…純粋で繊細なようだから…心配だな?」

エウロペはエルデリオンの去って行く背を見送りながら、ラステルに告げる。
ラステルはエルデリオンを気遣うエウロペを見、ため息を吐いた。

「…それより、気を緩ませて私に隙を作り、レガートを殺そうとか。
たくらんでませんよね?」

エウロペもため息を吐いて、ラステルを見る。
「殺すんなら、君の居ない時忍び込む。
君は意外に反射神経が鋭いから、君がいたらどれだけ隙を作っても、殺せない。
背後に三人も居るし」
と、背中に張り付く三人のゴツイ騎士に振り向く。

見つめられた騎士らは、揃ってため息を吐いた。
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